第三十九歩 政治の仕事
そんなこんなでレンは仕事を、サーリアはどこかに行き、残った二人は全力で遊んび始めた。
しかし、1週間ほどでレンが仕事を終わらす。
「あれ? 政治っていくらでも仕事が生まれるものじゃないんですか?」
「そんなわけないだろ。1週間寝ずに仕事したら休憩の時間が取れるほどには少ないよ」
それを普通は終わらない仕事って言うものなのだがエースはそんなこと気にしない。
「アオイはこの一週間何してたんだ?」
「サリアとゲームしてましたね。あとは好きな物食べたり」
「ここに来る前と同じじゃね?」
「引きこもってる時とは違いますよ。何せ仲間がいますから」
「その仲間が人間じゃないんだよなぁ」
レンが周りを見渡してアオイのお友達を探す。
「探してるのは私かい?」
「分かってるならもっとわかりやすい所にいてくれないか?」
「なんで人間って平面に他者がいると思ってるのかな」
「基本的に平面にいるからだよ」
レンの捜し物は頭上に浮いていた。ただ、サリアのドレスが少しデザインが変わってる気がする。
「まぁ、ドレスのデザインなんてどうでもいいんだが、1週間もいたんだ。そろそろ帰してくれてもいいんじゃないか?」
「そうだね。1週間もあれば充分でしょう」
そうと決まったらさっさとやってしまおう。
なんの心構えもできてないレンの足元に魔法陣を作ってさっさと転移させる。
「この一週間である程度国内のごちゃごちゃを片付けられた。これから少しだけ面倒になるけどその間くらいは国も持ってくれると思うよ」
不穏なことを言う。
ただ、レンにとってはその企みさえも自分の一部として吸収してくれる。そんな感じがする。
「そして勇者召喚の時と同じ場所だな」
「広いから少しくらいの誤差があっても壁にめり込まないで済みますからね」
そういえばそんな心配もあるよな、と今更なことを考えるが部屋を出て直ぐに王城がドタバタしてるのを見つけてレンが駆け出す。
「どうした? 何かあったのか?」
「はっ、魔王様の政治で国は安定しているのですが、帝国から勇者を名乗る一団が王城まで来ており、その対処に困惑しているという状況です」
近くの騎士に聞いた感じではレンを殺しに来たヤツらを歓迎するかぶん殴るかで意見が割れているようだ。
「教練場に案内してやれ。騎士達は全員教練場の周りに配置、流れ弾を叩き落とせ。ライトに言えば上手く配置してくれるはずだ」
「はっ」
騎士に指示を出して自分を移動を開始する。
「戦う気ですか?」
「俺と戦いに来たんだったら望み通り戦ってやろう。もっとも、いつか来ると思ってたから準備は万端だけどな」
レンの言う準備万端とは戦闘の準備が出来ただけでなく、勝つ手順を揃えてあるということである。
「勇者の能力、わかってるんですか?」
「いいや、何も」
アオイが驚きつつもやっぱりという感情を抱く。
「さすがレンくんです」
「魔王様、この先に案内してあります」
教練場の前で騎士がレンに伝える。
「さて、魔王待ってる勇者のために行かないとな」
「頑張ってください。……待ってます」
声援を受けてレンが大きな扉を両手で押し開ける。
「ようやく来たか、糞魔王」
牙を剥き出しにし、獰猛に吠える大柄な男。他にも魔術師のような格好の女性や大きな盾を担いだ女性。
それらの最も前にたつのは聖剣イグドラシルを携え、黄金色の鎧に包んだ勇者だ。
「さて、あなたが魔王レンだね。私の名は」
「ああ、言わなくていい。殺す時か殺される時に聞く」
少し不満そうだが勇者が剣を構える。
「聖剣、か。魂を抉りとる魔剣が随分と神聖かされたもんだな」
「ゆくぞ、魔王」
勇者が突っ込んでくる。どうやら勇者が敵の攻撃を受け止め大柄な男が攻撃を、そして大きな盾に守られた魔術師が大規模魔法で殲滅する、というのが今までの作戦らしい。
しかし
「その程度じゃまだまだ」
レンが防御しながら、地面や円を描くような壁を傷つける度にトラップによって爆炎が吹き出し、勇者を襲う。
「くっ、」
「ほら、どんどん行くぞ」
勇者もただ受けるだけでなく左右に動きながら不規則に襲いかかるがどんな方向からでも爆炎は正確に勇者を狙ってくる。
「おい、魔王ならもっと正々堂々と正面から殴りかかって来やがれ!」
攻撃が全く当たらないことに腹を立てた男が叫ぶ。