表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/65

第三十七歩 アリス

「いや、情報を吐かせようとしたら突然あの子の記憶が消えてな。帝国のことをすっかり忘れてるんだ」

「それは確かなんですか」

「いろんな方法で試したけど脳にスタンガンを突っ込んだように綺麗に消えてる。心配ない」

「それでこの国の騎士だと教えこんだわけですか」

「ライトがな」


 一通り聞き終わったようだが、邪魔するのは嫌だからもっと聞きたいけどやめておこう、みたいな表情を見て苦笑する。


「はい、あの子のプロフィール」

「ありがとうございます」


 レンから貰った一枚の紙には、持っているスキル、身体能力、サイズ、年齢、名前、それら全てが書かれていた。

 と言っても過去に関わることは書かれていない。


「名前はレンくんがつけたんですか?」

「いや、それだけは最初に教えてくれたから書いといた」


 ほんと騎士とか神政主義の奴らって名乗りたがるよな。

 と、不思議そうに言うが彼らにとって名前は誇るべきものであり、管理を楽にするためと考える共産主義や、金になるものとして考える資本主義とは、違うだけである。


「アリス・クインですか」

「帝国の姫様を守る一族らしいな」


 年齢とスリーサイズを見てアオイが優越感に浸る。


「この年齢で絶壁ですか。私の勝ちですね」


 1万歳を超えていて、少ししか膨らんでいないアオイと、25歳で全く膨らんでいないアリスと、どちらが優秀かなんて誤差過ぎて決められないが、本人が喜んでいるなら勝っているのだろう。


「しかし帝国の姫様がいるなら話は楽なんだよな」

「後、この辺でレンくんに従っていないのはグガン帝国だけですからね」

「東の獣王国も南の法国も、どちらも従った。獣人は本能的に逆らわない方がいい相手と思ってくれたみたい。法国はよくわからん」


 メナール法国はサリアやサーリアの女神姉妹を信仰しているようで、彼らに敵対するから私達も敵対する、ではなく、彼らと同じ神話の住人だから同じだけの敬意を払おうということらしい。


「主神に会うための格付け、でしたか」

「今の俺じゃ神話内でのランクが低すぎて会えないんだよな」

「だからこの世界を統一するって頭おかしいですよ」

「前近代の世界で俺の権力が絶大なんだ。ドイツより上手く立ち回ったら数年くらいは維持出来る」


 そして資本主義のエースにはそのための知識も会話術も持っていた。


「やっぱり帝国の姫様を探すんですか?」

「いや、それよりも先に消しゴムを用意しないといけないんだよね」

「消しゴムですか?」


 全く関係の無い話を出してくるレン。


「消しゴムって言っても間違えた文字を消す白いものじゃねぇ。誰かを殺したり、どこかを襲ったりしした時に揉み消すための準備のことだよ」

「今やってるのはその準備だったんですね」

「来てることは分かってるからな」


 たとえ大企業であっても事件を揉み消したりするのは簡単ではない。しかし消しゴムの用意が出来てからならすごく簡単になる。

 やってしまっても直ぐに消せるからだ。


「というわけでそのための言い訳作りで忙しいんだよ」

「ま、それだけじゃねぇみたいだしな」

「他にもいっぱいあるからなぁ」


 たくさんの書類に目を通し、振り分けていきながら器用に話している。

 置いてある書類はそれぞれジャンルがばらばらで、統一性がない。


「ま、でもちょうど良かった」

「何がですか?」

「アオイ達が来てくれてだよ」


 書類に一区切りをつけてレンが書類の下から一枚の布を取り出す。


「サリアに呼ばれてるんだよ。1度来てくれないかって」

「そう言えば鬼神の方にはあったことがないんですよね」

「そういや初めてだったな」


 魔法陣が書かれた布を広げて3人で上に乗る。

 アオイの手で魔力が注がれ、布がはためく。

 1度大きな風が吹き、次の瞬間、レンたちの姿は執務室から消えた。




「ようこそ、神々の世界へ。歓迎するよ」

「あ、これがサリアで、俺達と敵対してることになってる女神だよ」

「本当に角が生えてますね」

「もしや、あそこの茶色いのは焼肉か? まさかあそこまで露骨に置かれてて食べられねぇなんてことはねぇよな」


 1軒のログハウスの前に転移したレンたちはそれぞれ勝手に喋り出す。


「青い空と広大な大地。ここには全てのものが揃っていてその全てを使うことが出来る。君たちが、天国って呼ぶのもよく分かるよ」

「しかし、剣持ってる方の女神がいないな」

「サーリアさんでしたっけ。素振りでもしてるんじゃないですか?」

「おいおい、何だこのタレは。こんなに不味かったらせっかくのいい肉を台無しにしちまうじゃねぇか」


 同じ場所でここのことを話してるはずなのに話が全く噛み合わない。

 バベルの塔の崩壊はボク達の予想以上に意思疎通をこんなにしたみたいだ。


「あそこの遠くの方に見えるのが主神の座ってる椅子だね」

「しかしサーリアがいてくれないとライトの件が聞けないんだよな」

「ライトなんてほっといてもいいんじゃないですか?」

「お? なんだまだ火がついてねぇのか。仕方ねぇな。この辺にライター置いてねぇか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ