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第三十歩 いじめ

 想像以上の女たらしなライトにアオイが敵意を見せ始める。


「もういいです。私はダンタリオンを応援するので」


 とだけ言ってさっさと歩いていってしまう。

 不思議なことに、何が起こったか気づけてないライトだけが取り残される。


「ということがあったんですよ。酷いと思いませんか!」

「うん、確かにライトの交友関係の広さと女性率の高さには物申したいところもあるけど」


 ちょっと前に横に広がると言われたばかりなのにフレード王国の城の王室で料理室からかっさらってきた食料を詰め込みまくる聖女様。


「食いすぎじゃねぇか?」

「天使の力を行使するのって体力使うんですよ。だいたい私を怒らせて体力を使わせたのはライトなのでライトが太るはずです」


 全く科学的じゃない不思議理論を展開しながらさらに食べる。


「よし、分かった、食べるのはいいとしよう。でも、でもな?」


 既に目を閉じて諦めの姿勢に入っているフレード王国の王様を見ながら。


「せめて王室で食うのはやめようぜ、ここって儀式とか話し合いとかに使う場所でさ、やけ食いの場所じゃないんだよ」

「そんなこと言ったってレンくんも魔王なんですから二人が許してくれたら私は食べられるんですよ」

「許してないんだよ」


 ぷー、と膨れながら、食べ物を口に詰め込みながら? 食べるのをストップする。


「そう言えば何を話す予定だったんですか?」

「周辺国家とのいざこざがあるんだよ」

「ああ、そういえばレンくんは魔王でしたね」


 さっきも言っていたことを再確認してアオイが姿勢を正す。


「はい、準備出来ました」

「食べ始めなかったら最初から出来てた気もするけどな」


 記録係が用意出来たのを確認してレンが話を始める。

 そして何やら難しそうな話をしている間アオイは何をしているかと言うと


「うだー、うだうだー」


 よく分からない声を上げながらソファーでだらけている。

 アオイは速記以上の速度で記録ができるので便利ではあるのだが、アオイのわからない話をされるとただただ暇なのである。

 例えるならば全く興味のない講義を聞いているようなものだろうか。頑張って話を聞こうにも


「このヘブリー平原を開拓して、畑を増やすために近隣の街から冒険者を募ってだな」

「ふむ、しかしヘブリー平原はフェンリルの森から溢れてくる魔獣の通り道。それらを討伐するためのスペースであるからそこを潰してしまっては討伐が出来なくなるのではないかね?」

「そのための防衛設備の強化が必要だな。ライトにもっと頑張って騎士を増やしてもらわないと」

「いくら騎士を育てる環境が出来ていても騎士になりたいと思う人間がこないと意味は無いぞ?」

「冒険者が魔獣を倒せるくらいにまでライトに技術を教えさせて、魔獣を倒す事に賞金が出るようにすれば」

「その賞金を出すには国庫が貧弱すぎるんじゃよ」


 そんなことを終始話されては、聞く気もなくなるものである。

 もっと楽しげな話をしてくれたらいいのに二人の顔を見るとどうも全然楽しそうではないのである。

 なのでご飯を食べるのを再開する。


「いくら食べてもお腹が膨れないんですからどれだけ胃袋が大きいのですかね」


 実際は胃袋が大きいのではなく、国中からの祈りに加護を返しているのにエネルギーを使っているだけで、胃袋の大きさは多分常人の3倍くらいだろう。

 そしてそんな、アオイによると詰まらない話は数時間ほどで終わり、ようやくアオイも解放される。


「すごく疲れました」

「まぁ、あれも仕事だからな。仕方ないんだよ」

「フレード王国側の速記もいることですし、私に自由行動をくれてもいいんですよ?」


 命令のような懇願のような提案のような言い回しでアオイが聞く。


「とは言ってもなぁ。速記よりもアオイの方が録画レベルで正確だな」

「録音できる魔道具もありましたよね。あれ使えばいいんじゃないですか?」


 アオイの言っているものは青色の石のようなもので、音を記録しておけるものだ。


「そんな事言ってさ。アオイだって分かってるだろ? 重要なことだけを思い出したり出来るのはアオイだけなんだよ。それにあの石は効果だしね」


 記録の青色の石は巻き戻しは早送りなんかの機能は付いておらず、5時間の記録から探すのなら5時間全部見るしか方法はない不便なものだった。

 元々音楽を記録して売り出すように開発されたもので、巻き戻しの機能など開発されなかったし、音楽を刻み込んで売るものなので、自分で記録が可能なものはどうしても値段が高くなってしまうのである。


「まぁ、美味しいものが食べれるのでいいですが」

「ほんと、引きこもり時代もそうだけど天使になってからさらに食べるようになったよね」

「美味しいものはいくらでも入るんですよね」

「はは、ブラックホールみたい」


 そんなことを話しながらダンタリオンの待機している部屋へと向かう。


『なんであの二人はあそこまで仲がいいのかしら』

「ああ、まぁ付き合いが短かったら仲がいいように見えるかもな」


 ダンタリオンの待機室に来る前に弁当をもらいに行くことにしたレン&アオイを見てダンタリオンが不思議に思う。


『仲が良くないのならなんなのかしら』

「仲が悪いわけじゃねぇさ。ただアオイの方に問題があってな。あいついじめられてたことがあったんだよ」

『あれがいじめられてたなんて信じられないかしら』


 楽しそうに食べ物を頬張り、楽しそうに雑談して、幸せそうに寝る少女がいじめにあっていたなんて想像もできない。


「小学四年生だったかな? その頃からテストは満点で些細なことも思い出せたんだ。でも授業中にも、休み時間中にも、頭がいいようには見えず、勉強も全然してねぇ。そんな同級生を小学生はどのように扱ったと思う?」

『天才として尊敬するか、ズルしていると考えていじめが始まるのよ』

「そう同級生の女子達はズルしてると思い込んだんだ」


 クラスのグループから弾き出され、嫌な奴、という認識がクラスの中に広がったら、いじめが始まる。



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