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第二十六歩 神殺し

「まあ、もう十分楽しんだだろ。神話の世界に帰りな、神様」


 赤い刀を引き抜き、サリアの胸に突き立てる。

 するとサリアの体がガラスのように砕け散り、消えていく。

 そのあとには何も残らず、硝煙の匂いだけが漂っている。


「殺したんですか?」


 刀で刺したところを見ていたアオイが近づいてくる。


「いや。どうせ黄泉の国にピクニック気分で行けるだろうし死ぬのも関係ないだろうな」

「さすがは神様って感じですね」


 そんな話をしている間、ダンタリオンとライトは離れたにいた。


『エースだとかヒーローだとかのあだ名は何なのかしら』

「ただの二つ名だよ。ビタミン豊富とかのキャッチフレーズみてぇなもんだ。俺たちの中である程度特徴を持った奴らにつけられるんだよ」


 とても興味深そうにライトの周りをぐるぐる回る。


『ならヒーローって呼ばれるライトは何を救ったのかしら』

「別に何も救ってねぇよ。ただ、兵士が死ぬのが仕方がないっていう世界で全員で生き残るっていう思想を掲げてたらそんなあだ名がついただけなんだよ」


 今度はレンの方を見ながら回る。

 ガキって回るの好きだよね。


『エースは』

「レンは、兵器、戦略、学力、ほとんどのテストで満点取ってんだよ。まあ実技や身体能力のテストでは俺やゴリラマンがずっと一番取ってるから仕方ねぇんだがな」

「なーにはなしてるんですか?」


 アオイとレンが先ほどの戦場から帰ってくる。

 帰ってくる間にダンタリオンがくるくる回ってるのが見えたのかアオイだけが早歩きで帰ってた。


「ダンタリオンが二つ名について聞いてきたから話してたんだよ」

「ああ、二つ名って言えばお前、ボムフィリアと知り合ってなかったか?」


 不穏な言葉を聞いてダンタリオンが不安そうにライトを見る。


「そんな心配しなくても大丈夫だよ。普通の可愛い女の子だったぜ」

『爆弾を愛するって怖くないのかしら』

「普通の女の子だって。まあちょっと爆発が好きで、爆薬をいつでも作ることができて、爆発ですべてを解決できると思ってるだけぜ」

『それを人は怖いというのよ』


 ダンタリオンがライトを頭のおかしい子だと認識してこの話が終わる。


「それでこれからどうするんだ?」

「王都に正面から突っ込む。王さん相手に降伏勧告をたたきつけてやろうぜ」


 それから王都に突っ込んでいって王さんの目の前でこの紙が目に入らぬかー、と八時四十五分くらいの偉いおじいちゃんのような顔で、たたきつけた。

 その内容としてはフレード王国が魔王の属国となるというものである。

 すでに対魔王用の城塞都市が破られ、勇者も殺された王国には抵抗できる戦力がなく、これを受けるしか選択肢がなかった。


「でも政治にはあまり口出しはせず平民の生活は変わらないみたいですね」

「王様が死んだって自分たちの生活が変わらなければそんなに関心がわかないんだよ。実際今の町がどんな反応か。なんの反応もない」

「まあ、今晩のおかずを何にしようか決めるのが大変な主婦たちには城塞都市が落とされようが国のトップが変わろうが気にしてる余裕なんてねぇんだろうな」


 国民が政治のことにあまり興味を持たないというのはどこの国でも共通のようだ。

 雀の涙のような関心こそが戦争なんてものに向かって迷走する国を止められない原因なのだが、戦争をやっているのは連たちの祖国も同じなので何も言えない。


『それで政治にかかわらないのはなぜなのかしら』

「あの王様やってるおっさん、あれはあれで神話の住民だと思うんだよな」

「ちょっと筋肉とか威圧感とか普通の人間とは違いますからね」

「ほんとにあれよりうまく政治ができるとは思えないんだよな」


 レンでもビビるくらいの風格を見せてくれた老兵に敬意を表した、ということにして魔王城に戻る。


「はあ、楽しく景色を見ながら帰ろうと思ってたのによぉ。なんでテレポートなんて風情のねぇ方法でかえるのかねぇ」

『こんな土埃の舞う場所に長くいたくないのよ』

「どうせ魔法で汚れを弾き飛ばしてる、っとかやってんじゃねぇの?」


 するとダンタリオンが腰に手を当てて胸を張り、エッヘンとでも言いたげな顔で


『魔法で汚れどころか臭いすらも弾いてるのよ。エッヘンなのかしら」


 実際に言った。

 そんなダンタリオンとバカ一人を遠目に眺めながら修学旅行気分のバカ魔王とバカ天使は部屋の割り振りを考える。


「さて部屋の大きさは六部屋一緒。そのうち二つは食堂に近くてそのうち二つは書庫に近い。残りの二つはその間だな。


 まあ廊下を挟んで三つずつあり、それの割り振りをするというものだ。

 特に中学最後の大イベントたる修学旅行の行き先を戦場にしてしまったライトは景色どうのこうのを頭から消去して会話に参加してくる。


「ほかにもたくさん部屋があるけど使えねぇのか?」

「俺らが城塞都市でいろいろ楽しんでた間にアオイの信者、ナイナが掃除しといてくれたんだけど時間が足りなくて六部屋が限界だったんだよ」

『とりあえずさっさと決めて部屋を自分色に染め上げるのよ』

「待てよ。旅行と違って長い日数をここで過ごすんだからしっかり決めないと後で後悔するぞ。大きさは同じって言っても部屋の形や扉とかの位置も違うんだからな」


 とか話しているが、レンが違和感に気づく。


「なあ、なんでダンタリオンが参加しているんだ? もともとここに住んでるんだから私室くらい持ってるだろ?」

『私の私室はあの書庫かしら。掃除してくれたんなら普通の私室も欲しいのよ』

「なんか図々しいな」

『もともと前の魔王の持ち物なのよ! それを勝手に使ってるだけかしら』

「よく勇者や国に追われてる状態で作れたな。俺みたいにどっちの能力も与えられてるわけじゃないのに」

「魔王軍の皆さんに手伝ってもらったんですかね」


 今更ながら、完全に職人の手によって作られたとしか思えない城の出来に芸術を前にしたかのような感想を抱きながらつぶやく。

 確かに、勇者に追われている状況で、少し上に飛んだだけのレンにさえ見つかるほどの城の建築方法は謎ばかりだ。

 おそらく大勢で頑張って作ったのだろう。


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