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第二十歩 サリア

「とりあえずひっくり返してみたらどうですか?」


 アオイが提案し、ライトがポーチをひっくり返してみる。

 ダンタリオンはそんな3人の様子を眺めているだけで全く関わってこないがその口元に笑顔が浮かんでいることから楽しんでいることがわかる。


「それで。アオイの言う通りひっくり返してみたけど、物理法則ってなんだっけ」

『それが神話の世界というものなのよ。というよりこの程度なら魔法でどうにでもなる技術かしら』


 手のひらサイズのポーチから山のような銃器が出てきて驚く。


「すげぇ。明らかに口より大きい銃がはいってくぞ」

「さすがは女神さまって感じか」


 感心する男どもに対してアオイは銃の山ではなくライトが倒れていた場所を調べている。


「もしかしてここって女神さまの空間とつながってるんですか?」


 そういうことに唯一詳しそうなダンタリオンに聞く。


『さあ、つながっているともいえるしつながっていないともいえるのよ』


 なんか久しぶりにはっきりしない言葉を使うが用はどっちか教えないということである。


「レン君。ここから女神さまに会えるかもしれないんですけどどうしますか?」

「うーん、あの空間に行ったことがあるのは俺だけだからなあ」

『通ってすぐに命を落とすなんてことにならないことにならないことだけは保証するのよ』


 と、ダンタリオンの後押しを得て、レンが行くことになった。


「それじゃ、行ってきます」

「きちんと文句言ってきてくださいね」


 アオイが両手をグーにして言うのを見て苦笑が漏れる。


「ああ、きちんとクレームを叩きつけてくるよ」


 レンがダンタリオンの開けた扉を潜り抜ける。


「そして一歩目でこれか」


 たった一歩進んだだけなのに自分が入り口がないすべての家具お黒で統一した部屋に着いたことに不満が生まれる。


「もう少し道を歩む楽しさにも気づいたほうがいいと思うけどな」

「残念だけど私たちは結果を重視するからね。その助言は無駄になると思うよ」


 そうやって話しかけてきたのは額から角を生やした黒いドレスの女だ。随分と親しげに警戒というものを全く見せずに話しかけてくる。それが自分の自信からのものか、警戒をうまく隠しているのかわからない。

 ただレンは最大限の警戒を隠しながら答える。


「それであの扉の先がここにつながっていたのか、ここに呼ばれたのか、どっちなんだ、鬼神?」


 そんな疑問の答えは女性の笑みだった。


「記憶を消したって言うのに、前回とは状況が違うのに、私の印象は変わらないんだね」


 やっぱりこの角のインパクトが大きいのかなぁ、と自分の立派な角をなでる。

 その言葉の中に聞き逃せない言葉を見つける。


「記憶を消したってどういうことだ?」


 完全に自分の世界に入っていて、やっぱりリボンでもつけて可愛くしてみようかなあ、なんてつぶやいている鬼神を現実に呼び出す。


「ああ。忘れてたよ、今戻すからね」


 そういって鬼神がレンの額を指で小突くと今まで全く、気にも留めていなかった記憶が呼び覚まされる。

 頭痛のようなものを伴うのか頭を押さえながら呻く。


「こ……れは……な、んだ?」

「ああ、体に負担がかかるからできるだけ短い時間にしたんだけど少しは反動が来るみたいなんだね」


 頭にフラッシュバックのように流れ込んでくる記憶を整理できたのかレンが調子を整えてから会話を開始する。


「あ、ああ、よし。それだ改めて聞くけど何者なのか教えてくれるか、レディ?」

「ずっと見てるうちに随分と気障になったね。まあ、いいよ」


 ちょっとセリフがおかしかったが今回は教えてくれるみたいだ。

 名前を名乗るために背筋を正し、手に魔法の剣を作り出し、誇りをもって告げる。


「私の名前はサリア、鬼神サリアだよ。吸血鬼や鬼人族が崇める人間にとっては害となる魔神だよ」


 レンの目をしっかりと見つめながら続ける。


「そして剣神サーリアを姉に持つ。姉様とは異世界に行く前に会ってるはずだよ。だって私が魔王担当で、姉様は勇者担当だからね」


 姉妹で魔王と勇者を役割分担して用意して争わせる。もしその目的が信仰心を集めるためだなんて『神政主義』が考えそうものなら随分と悪質なマッチポンプだ。

 まあ、女神サーリアの方は人間を守るためで、妹のサリアが悪神ロキのような立ち位置という線もなくはないが、レンに魔王と勇者の役がダブルブッキングしていて、尚且つサーリアから何の連絡もなしに魔王認定された時点で。女神サーリアがいいやつ説はやっぱりないのである。


「そうなると気になるのは目的だけど」


 神話の世界の住人は人間が悩むところを見るのが好きなのだろうか。笑顔でレンの話を聞いている。


「信仰心を集めるだけって理由でもなさそうだな」

「そうだね信仰心なんてものに興味はないかな」


 サリアがどこからか一冊の本を取りだす。


「私たち神が望んでいるのは新しい神話だよ。今までのように神様が無双するような神話はもう時代遅れなんだよ」


 サリアが取り出した本を開くとそこにいくつもの生物の一生が映像として現れる。


「とはいっても神様と同じだけの英雄的行動をした存在なんてほとんどいない。でも勝手に彼らの生きてきた時間を書き換えるのはフィクションになってしまうからできない。じゃあどうすればいいと思う?」



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