第十六歩 騎士殺し
そんな報告を受けても困るレン&アオイの2人は何とかして頭から料理の記憶を引っ張り出す。
「カルーは米やナンを使わないカレースープのようなものでしたよね」
「それからスパイスを抜いたってことは」
2人の頭の中でカレーからスパイスが抜かれ、醤油や砂糖が入れられる。
「「ああ、肉じゃがか」」
と、2人合わせて答えを出す。
そんな2人を見てダンタリオンが自慢げな顔をする。
『ふふん、私の特別な手料理なのよ。ゆっくりと味わうのかしら』
と言われて2人が顔を見合わせる。
「(なんか随分と優しくないか? もしかして俺に惚れた?)」
「(惚れたはないでしょう。寂しかったのでは?)」
ごにょごにょと話し合い、レンが手を挙げてダンタリオンに発言する。
「審議の結果、ダンタリオンは寂しがり屋の女の子。ということになりました。あってる?」
真剣な顔で答えを待つ。ダンタリオンは1回レンの睨んでから少し困ったような顔になってうつむき、
『半世紀ぶりの客人だったのよ。少しくらいうれしくなるのも、し、仕方ないことかしら』
と、デレた。そんな少女を微笑ましく思いながらダンタリオンを連れて食堂に向かう。
そして異世界にいる時間が短すぎて懐かしく思えない和食をいただく。
ぺちゃくちゃと話しながら食べてるとダンタリオンが突然立ち上がる。
『新しい客人が来たみたいなのよ』
「行くのか?」
『すぐ戻ってくるのよ』
真剣な顔でレンが来る。
「口元にご飯粒つけながらいくのか?」
『う、うるさいのよ』
ごしごしと口元をこすってから部屋を出る。
「誰が来たんでしょうね」
「さあな。ただ普通のやつはこんなところに来ないだろうからちょっと危険かもな」
『代々受け継がれている魔王城に何の用なのかしら。騎士共』
魔王城にも扉がある神々の書庫、この世の全ての知識が詰まっているその書架の守り手であり司書であるダンタリオンは、昔の仲間に代わり、守り人の役目を果たす。
『魔王に縁の無い者の立ち入りは許可してないのかしら』
少女の姿をした者相手に警戒心を剥き出しにしながら軍と呼べるほどの数の騎士達は鎧を鳴らす。
「私は我らがフレード王国の騎士であり、勇者。幼子を傷つけることはしたくない」
とても小さな望みに希望をかける。
「そこから退いてはくれないか?」
1つ息をついてからダンタリオンは告げる。
『私は神々の書庫の番人なのよ。退く理由がないかしら』
「それは、」
心底悔しそうに、勇者は剣を握る。
「それは、残念だ」
残念とは言いつつもしっかりと剣を握り、少女の姿の悪魔に向ける。
「我ら騎士、愛する隣人を守るために命をかける。謝罪はしない」
しっかりと少女の目を見すえ、ダンタリオンと同じくらい幼い勇者は宣言する。
「恨んでくれて構わない。殺して進む」
『謝罪はこちらも言わないから必要ないかしら』
黒き騎士を出し、ダンタリオンは語る。
『もちろん恨みもしないのよ。むしろ恨むのはお前達のほうかしら』
人差し指を指揮棒のように、楽しそうに振りながら笑う。
その指揮につられたように騎士の中から数人がダンタリオンを守るように黒き騎士の隣に並ぶ。
「な、なぜ魔王の側に付くんだ」
『別に魔王の仲間になったわけではないかしら」
鼻歌でも歌いそうなくらい上機嫌なダンタリオンが説明を続ける。
『あなたが言っていた通り、彼らは愛する隣人を守ろうとしているだけかしら』
ただ、とダンタリオンが補足する。
『彼らにとっての隣人、友達や恋人や家族が私というだけなのかしら』
「な、」
『もっと正確に言うのなら、私がそう認識するようにしただけかしら』
人の心を弄ぶ悪魔は笑いながらそう言った。
「どうして、どうしてそんなことができるの?」
えっと、昨日毎日投稿が続くと書きましたが「冗談」です。
今日から魔王勇者の無双の旅と同じように
日、火、木
の週三投稿となります。
おそらくまだまだ続きが書けると思うので1年は持ちたいです。(圧倒的な願望)
ブクマ、評価よろしくお願いします。




