第十五歩 魔王
エイプリルフールですね
というわけで後書きに色々書いておきました。
全部最後に「冗談だよ」って付けといてください。
アオイの元へと向かう途中で不思議なものを見つける。
それは1本の羽根ペンで誰にも触れられてないのに動き続けている。
「記録されているのは俺たちか?」
その羽根ペンが羊皮紙に書き込んでいるのはレンが今まで歩んできた人生だ。
そしてアオイが進む道でもある。
「ま、元々アオイが記憶してくれてるから必要ないんだけどな」
ひと通り眺めて満足したのか、「リーフィン」という名前が刻まれた羽根ペンの元を離れる。
レンが様々な発見をしている間、アオイはずっと本を読んでいたようで、本の山がアオイの隣にできていた。
「あ、レンくん、終わりましたか?」
「それよりその本の山は? いくら一目見ただけで十分でもそこまで読めねぇだろ」
「……えっと、あの、ですね」
イタズラが見つかった子供のように困った顔を浮かべ、口を開いたり閉じたりする。
そんなアオイにレンがしびれを切らして声をかける。
「はぁ、俺はアオイが何をしても怒らないから言ってみて」
と、テンプレな言葉を聞いてアオイが覚悟を決める。
「実は高いところの本を取ろうとする度に崩してしまって……」
「ああ、言ってくれたら良かったのに」
「話してる途中だったので声をかけづらくて」
と、縮こまっているアオイの姿を眺めていると先程のセリフに気になる点を見つける。
「取ろうとする度に?」
ボソリと口に出たその言葉を聞いてアオイがビクッと震える。
そしてそのままギギギギギと左に顔を向ける。つられてレンもそちらを向くと同じような山がいくつか出来ていた。
「ああ、なるほど」
「どうしますかね」
「とりあえずここの司書に見つかる前に」
『私がどうかしたのかしら』
見つかる前に片付けよう、と言う前にダンタリオンが現れる。
「来るの早いね、ダンタリオン」
『元々ここの主なのよ。神出鬼没なのはあたりまえかしら』
「え、この子ダンタリオンなんですか?」
アオイがその名前を聞いて少し驚く。
「ん? 何か覚えてるのか? 俺はあまり詳しくないんだが」
「確か様々な表情を持つ『男』だったと思うんですけど」
2人して少女の顔をじっくりと見るがどこからどう見ても少女は少女であり、イチモツが付いているようには見えない。
『そんなに凝視しなくても私は女性なのよ』
「文献無視して大丈夫なんですか?」
『無視するも何も、勝手にお前達が少ない私の情報から想像した偽物かしら。だいたい男性体だと忌々しいあの男とキャラが被るのかしら』
途中までは悪魔として良さげなことを言っていたのに最後の最後でとても現実的なことを言いやがった。
「あの男って?」
『ナイアルラトホテップとかいう名前の見た者を狂わせる異形の神の一柱なのよ』
「ああ、確かに少し能力が被ってますね」
クトゥルフにも悪魔学にも詳しくないレンは話に入れてないがとりあえずしょーもないことだということは分かる。
「んで、マナーを守らないお客様に文句を言いに来たと?」
『マナーを守らないのは本を椅子代わりにする神も変わらないかしら。今回はあることを教えに来てあげたのよ』
人間に知識を授ける悪魔は告げる。
『今日の夕飯はハンバーグなのよ』
「突然家庭的ですね」
「真剣に聞いた俺達が馬鹿みてぇじゃねぇか」
『冗談なのよ』
くすくすと笑いながら軽く言う。
『正式に魔王認定されたみたいなのよ』
「ああ、そうですか」「そう来たかぁ」
レンも、アオイも、全く驚かずにその情報を受け入れる。
『さっきのハンバーグの方が驚いたみたいなのよ』
「いや、ついさっき俺が魔王か勇者かどっちだ? っていう疑問にどちらなんて明確に決める必要は無いって結論出してただろ?」
「ここに魔王の日記がありましたけど勇者だと言われて転移したら魔王扱いされたって書かれてましたしね」
勇者から魔王に変わってもそんなに関係ないということをよく分かっているダンタリオンはその理由を聞いてちょっと残念に思う。
『それでも驚くと思って持ってきたのよ……』
「悪ぃな、期待裏切っちゃって」
「それで本当の晩ご飯はなんですか、ナイナ」
ダンタリオンの企画したドッキリ大作戦が不発に終わったあたりで戻ってきた信者に天使様からの質問。
「私の知らない料理が並べられてありました。カルーからスパイスを抜いたような料理でした」
そんな報告を受けても困るレン&アオイの2人は何とかして頭から料理の記憶を引っ張り出す。
人間は自分たちでルールを決め、そこからはみ出しているものに対して『狂ってる』という言葉を使う。
なら自然のルールからはみ出した君たち人間は自然の側からは『狂ってる』と思われているのかな?
明日からも毎日投稿が続きます。




