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第十歩 守り人

「どうでした?」

「城のようなものを見つけた。多分あれだろう」

「じゃあ移動するか」

「はーい」


 馬車を近くにとめ、草で隠してから森を進む。


「帰りに見つけられますかね」

「アオイが覚えているだろ? それに隠しておかないと盗られそうだし」

「いくら私が覚えていても元の場所に帰って来れるか分かりませんよ」

「その時はその時だよ」


 木の根っこやら落ち葉やらで進みにくい道を強引に進む。

 ただし索敵は絶対に忘れたりしない。

 その結果として敵に気づかれる前に気づくことが出来た。

 ただ、その敵は木々の中ではなく、目的地である城の前に立っていて、集団の真ん中に立つ男以外、老若男女問わず首輪のようなものを嵌めていた。


「どう考えても城の守り人だよな」

「一人を除いて首輪を嵌めてますけど奴隷ですかね」

「いや、おそらく使役系だろうな。あの首輪を付けられたら従うしかなくなるんだろう」


 目や、細かい動作で正気ではないことを理解してレンが答える。


「ならやっぱり術者っぽいあれを倒したら終わりですね」


 ナイナは2人の会話には割り込まず、自分の主であるアオイの意志を待つ。


「レンくんのテレポートで暗殺出来ないんですか?」

「これ見た目以上に使いづらくてさ。狙ったところに動くのって難しいんだよね。それに前にいる奴らで見えにくいし」

「私の弓で吹き飛ばそうにも周りの人にも当たりそうなんですよね」


 2人して頭をフルに回転させるが、答えは出ない。


「仕方ない、突っ込む。ナイナ、アオイの守りは頼んだぞ」


 静かにナイナが頷き、肯定を示す。


「────」


 レンが赤い刀を抜きながら男へと向かう。

 周りにいる邪魔者を無視して突っ切ろうとするが


「勇者か、思っていたより早かったな」


 男が腕を振った途端、周りの人、いや、既に意志を持たない人形が動き出し、レンの動きを止めようと動く。

 その人形の動きはとても洗練されており、生前は名を上げた戦士であることが分かる。

 そんな力量の相手に実技が得意という訳では無いレンが多対1で戦えるわけがない。


「だから戦うのではなく、減らす」


 腕輪をはめた手で戦士達の体に触れ、見ることが出来る最も遠い空の彼方へと転移させる。

 敵も警戒して腕の動きに注意するが、手で触れられたら即死という状態で勝てるはずがない。

 全ての戦士が飛ばされ、盾がいなくなる。


「普通の勇者ならこんなに効率よくはいけないだろうが、今回は相性が悪かったな。人形使い」


 安全な位置から見ているだけだった男に刀を向ける。


「貴様らは勘違いをしている」


 そして初めて術者が口を開く。


「この俺から彼らを取り除けば勝てると思い込んでいる」

「実際にそうだろう? 人形の性能に頼っているだけの奴が実践で役に立つはずがない。命令するだけの上は現場では役に立たないものだ」


 それは軍では当たり前のこと。


「そこが間違いだ。人形使いと貴様らは呼ぶが、その人形使いの人形が残っているのに勝った気でいる」

「まだ隠しているのか?」


 何度やっても無駄だとでも言いたげなレンが男を注意してみる。

 しかしもう操れそうな物は見つからない。

 しかしそれらとは別に男の腕に異物を見つける。


「隠してなんかいないさ。ここにあるだろ?」


 そうして男は自分を指し示す。

 その手首に付けてあるのは


「彼らと同じ首輪? いや腕輪か」

「同じものだよ」

「お前は本体じゃないってことか?」

「いいや、これは本体だ。遠いところから見ているなんてことは無い」


 指揮をするものが前線に立つ理由が分からないレンに語りかける。


「人形使いが人形の能力に頼っているなんてことはない。生前の力に頼る死体使いや恐怖で支配する奴隷使いとも違う。人形使いは人形の手も足も全てを自分の思うがままに動かして戦う」


 それはまるで人形が動いているのではなく


「人形の数が減ればそれだけほかの人形に指を使える」


 人形の行動全てを自分が動かしているとでも言うかのように


「人形を完全に手動で動かしているってことか?」

「ああ、その通りだ」


 男が簡単に言いのけるその技術は全く簡単ではない。

 それはいくつものアクションゲームを同時にプレイすることよりも難しい。



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