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第二幕:廃れた街

 廃れた街中をレイジとハジメが歩いている。周りに人影はなく、建物は全てシャッターを閉めている。営業しているような店も全くない。全てがグレーに包まれているような場所だ。ところどころ瓦礫が落ちており、壁には卑猥な落書きが書かれている。静かな場所だが穏やかな雰囲気ではない。


「行方不明の子供のIDが最後に監視ネットワークに捉えられたのがこの付近。といっても、そのあたりは監視カメラも少ないから歩いて捜索しなければいけない範囲は結構広い」

ハジメは網膜投射型の腕輪型デバイスで地図を見ながら話した。


 レイジは、そんなハジメの様子を横目に見ながら歩みを進める。

「特区外ってのはどこもこんな感じなのか?」


「そうね……。場所によっては特区外、つまり旧ヤマテ線の外でも、多少の人が住んでいる地域もある。特区の方がはるかに便利だけど、物好きもいるってこと。まぁ合理的な考え方が出来ない、旧世代の人たちね」

ハジメも歩きながらレイジに答えた。


「相変わらずバッサリと言うな」

「事実しか言ってない」

「そうかい……」

レイジはそれ以上の会話を諦めて、捜索に集中するように周りを見渡した。


 狭い道に雑居ビルがいくつも左右に立ち並んでいる。どのビルも今は春だがビルの間を肌寒い風が吹き抜けている。


「うーむ。とりあえずこっち言ってみるか?」

レイジが裏路地の方へ入り込もうとしている。


「ちょっと、勝手に動かないで」

ハジメはレイジの肩を掴んで止めた。


「あんまりうかつに動かない方が良い。こういうところは治安も良くない」

「まぁそれは分かるんだけど、手がかりが少なすぎてどっちにいけばいいのやら」

レイジは肩をすくめる。


「ちょっと待って」

ハジメは左手の黒い腕輪型デバイスに軽く手をかざした。

「私の目はこのデバイスと神経接続できる。目からの映像を解析させて、最近人が歩いた可能性の高い場所を探る」

「はぁ……凄いな……」


 ハジメの目の中に解析結果が表示され、道ごとに確率が表示されている。

「こっちが一番可能性が高いみたい」

そういうと足を進めて左に曲がった。


「……」

レイジは振り返って少し後ろを気にするそぶりを見せた。


「早く!」

「分かったよ。相変わらずせっかちな奴だな」

ハジメに急かされてレイジは歩き出した。


 そのまま二人が進むと、ビルが二つ並び立っている行き止まりがあった。

「このどっちかだと思う。確率は五分五分ね」

「……こっちだな」

レイジは右側の高いビルを指差した。


「なんでそう思うの?」

「なんとなく」

「単なるカン? ひどく非合理的。やっぱり旧時代の人間ね」

「いや! ちょっと待て。聞いてくれ」


 レイジは少し考えて、自分の考えを言語化する。

「この行方不明の男の子、監視システムに残ってた記録では一人で行動してたんだろ? こんなところまで一人で来るなんて、家出みたいなもんだと思うんだよな」

「家ではなくて学校の寮からいなくなったんだけどね。まぁ私もその可能性は高いとは思う」

「だとすると、こっちじゃないかと」

「いや、全然論理が繋がってない!」


 ハジメの突っ込みに対してレイジが説明を続ける。

「う〜ん。家出をした男の子だったら、高いビルの方を選びそうだろ。ほら、家出してちょっとでも前の居場所から離れた所に行きたいと思ってるし、男の子は高い所に行きたがるもんだ」

「百歩譲って前半の理屈は理解できても、後半はわけ分からない。だいたい、男だ女だって考え方は前時代的……」

「あー分かった分かった。とにかく、こっちから先に行ってみようぜ」


 レイジが進もうとするが、ハジメはついていかない。

「それなら、二手に分かれましょう」

「……分かった。ちょっと心配だけど……」

「あなたに心配されるいわれはない」

「……まぁ、それもそうか。君は強いもんな」

「とりあえず、これを渡しとく」

と、ハジメはスーツのポケットから片耳用のヘッドセットを取り出してレイジに手渡した。


「じゃあ行こう」

二人はそれぞれの目的にビルの中に入っていった。

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