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第一幕:ハジメの部屋

 ハジメのアパートの一室。奥の部屋からハジメが出てきてレイジに問いかける。

「レイジ、何か良い案件あった?」


 レイジの座っている机の上の空間に、コンピュータの画面が投影されている。

「うーむ……何がなんだか分からん!」

レイジはイライラした声で答えた。


「まずだな、操作方法が分からん! なんなんだこれは!」

そういいながら、レイジは投影画面の目の前で両手を閉じたり開いたりしている。


「何やってんの……。コンピュータの操作もまともに出来ないなんて、あなたおじいちゃん?」

ハジメは両手を体の前で広げ、呆れてたということを体で表現する。


「……どうせおじいちゃんだもん。戸籍上七十歳超えてるもん」

レイジはいじけて縮こまる。


 ハジメはそんな様子の彼をみて少し助け舟を出す。

「コンコン、この前時代の人間を助けてあげて」

ハジメがそういうとレイジが見ている画面の横に、可愛らしくデフォルメされたキツネの3Dキャラクターが表示された。


「何かお困りですか?」

コンコンと呼ばれたキャラクターがレイジに向かって話しかけた。


「なぁ……」

「前に教えたでしょ。PAパーソナルアシスタントのコンコンよ」

レイジが質問を言い終わるのを待たずに、ハジメが答えた。


「いや……。気になってたのはコンコンって名前なんだが」

「コンピュータだから、コンコン」

「なんで狐?」

「コンコンだから狐。文句ある?」

「ないよ。……ほんと、独特なネーミングセンス……」

レイジは最後の言葉をハジメに聞かれないように小さく呟いた。


「コンコン、こいつでもできそうな簡単な案件をピックアップして表示して」

「かしこまりました」

コンコンがぴょんっと飛び上がって投影されている画面に鼻をつっこんだ。キツネが地面の中の餌を探すときのような動作だ。


「合理性が重要とか言いながら、どうでも良い所に凝ってるのが、この時代の変なところだよな……」

「キャラクターが可愛らしければ、待ち時間もイライラしない。どうみても合理的でしょ」

「……まぁ、そうかもな……」

レイジは生返事をしながら、検索結果が表示されるのを待った。


 数秒で検索結果が表示される。二件の案件の概要が、それぞれのカード型ウィンドウに表示されていた。


「ええと……行方不明者捜索、SRゲーム内の不正行為調査? なぁ、このSRゲームってなんだ?」


 ハジメはまたレイジの質問攻めが始まったかと思い少しうんざりした顔をして答える。

「SRってのはセカンドリアリティの略」

「はぁ……、でそのセカンドリアリティって何だよ?」

「まぁ簡単に言うと、コンピュータネットワーク上の世界」


 ハジメの回答に、レイジは少し考え込んでからぽんっと机を叩いて言う。

「……仮想現実ってことか」

「あぁ、確かに昔はそんなふうに言ってたらしいって話は聞いたことがある」


 ハジメは、いつの間にか手にしたコーヒーカップを片手に続ける。

「でも、今はそういう言い方はしない。仮想現実ってなんだか失礼な言い方に聞こえる。ネットワーク上に存在する二番目の現実。だからセカンドリアリティ」


「……なんだか考え方も変わったんだなぁ」

ずいぶんと時代が変化したことを感じて、レイジは少し昔を懐かしむ様子をみせた。


「まぁ、この案件はあなたには絶対に無理。……だから、こっちの行方不明者捜索ね」

「……これじゃ俺の拳法の腕前を活かせる気がしないんだが……」

「気持ちは分からないでもないけど、あなたはまだこの世界に慣れてない。まずは簡単な案件をこなしながら土地勘、いえ世界勘をつけてもらわないと」


「……分かったよ」

レイジは少しうなだれなら、そう返事をした。

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