段階
「師匠!! 師匠ぉぉぉお!!」
「どうした!? 何事だ!?」
「できたんだ!! できたんだ師匠!!」
「な、何がだ?」
「ランタン、点いたんだ!!」
「なんだ、驚かせるな」
僕はランタンを取り出し、師匠にこう言った。
「まあ見ててくださいよ」
「お、おう」
ランタンに精一杯の魔力を込める。
全力だ。
「うおぉぉぉおお……はっ!!!」
「何だ、その掛け声は……」
次の瞬間、ランタンから黒煙が噴き出し、ぱすんと音を立てて壊れてしまった。
「あ、あれ……おかしいな……さっきは成功したのに……成功したのにッッ!!」
「おい、落ち着け。分かったから落ち着け。成功だ」
「ほ、本当か!?!?」
「ああ。壊れてしまったのは、魔力を込めすぎたせいだろう。器が耐え切れなくなったんだ」
「そうか、成功か」
良かった。
成功だ。成功したんだ。
僕が喜びをかみしめていると、悪魔のような言葉が聞こえてきた。
「それはともかく、報酬と受領書を渡せ」
そう、僕は依頼を受けていない。
したがって、報酬も受領書も持っていない。
考えろ……最善の選択を。
考え抜いた末に決めた……だんまり。
「……」
「ん? どうした、早くしろ」
凄まじい。師匠の威圧。
僕は、ギルドでのことを話した。
魔術師の少女に出会ったこと。
魔力の流し方を教わったこと。
その全てをありのままに師匠に話した。
「なんだ、だからそんな習得が早かったんだな」
「怒らないのか?」
「ん?何をだ」
「じゃあさっそく魔術を教えてくれ」
「その前に腹筋、腕立て各100回な」
「何だとぉぉぉお」
「当然だ。依頼を受けなかった分だけ体が鈍るからな」
「分かった」
まあ、当然と言えば当然だよな。
でも、魔力を流せるようになった対価が筋トレだ。
そう考えれば安いものだ。
僕は腹筋と腕立てを言われた通り100回こなし、師匠に再度言った。
「筋トレ終わったぞ。魔術を教えてくれ」
「うむ、良かろう」
そう言って師匠が取り出したのは……ランタンだった。
師匠が言うには、魔力の調節をしてみろというものだった。
これはすぐにできるようになった。
「師匠、次は無いのか?」
「分かった。今持ってくるから待ってろ」
そう言って師匠はどこかへ行ってしまった。
しばらくして師匠が戻って来ると、師匠は柄だけの剣を僕に渡して来た。
「魔力だけで刃を作ってみろ」
「ちょっと一回やってみてくれ」
「嫌だ」
「く……分かった」
こんなのどうしろというんだ。
適当に魔力を込めてみる。
しかし、何も起こらない。
また課せられた無理難題。
しかし必ず答えがあるはずだ。
そう思いながら試行錯誤するも、いつの間にか寝落ちしてしまった。