依頼
五話目です
僕は、手伝いをする畑の地図を見ながら歩いていく。
だんだんと建物が少なくなっていき、草や木などの緑が目立つようになってきた。
やがて、規則的に生えた木々が見え始め、奥にぽつんと一軒の家があるのが確認できた。
地図と照らし合わせて確認する。
ここで合っているようだな。
駆け足で家の方に行くと、一人の男が木に生っている青く丸い果実を収穫していた。
長袖長ズボンの作業着を着ていてとても暑そうだ。
「初めまして!ギルドの依頼を受けたものです。ソーマ=レイズロッドと言います」
「おう、俺はグラン。早速だが手伝ってもらうぞ。人手が足りないんでな」
グランは作業の仕方を懇切丁寧に教えてくれて、初心者の僕でもなんとか作業ができそうに思えてきた。
明るく、話しやすい人柄だった。午前中で帰ってしまうことも快く受け入れてくれた。
「じゃあ、そういうことで頼むわ。何かあったら言ってくれ」
「はい!」
よし、目標は200個だ。果実を傷つけないように頑張るぞ!
しかし、これがなかなかに難しく、傷がついてしまうものがどうしても出てきてしまった。
く……まずい。これで4個目だ。
怒られても仕方ないか。
「……198、199……200!よし、おわったぁーー!!」
「やっと終わったか、お疲れさん」
「いえ、傷がついてしまったのがたくさんありますし……」
「いや、そういうのはジャムとかに加工すれば問題ないよ」
「ありがとうございます」
「そうだ、ちょうど昼だし飯を食べていかないか」
「いいんですか!?」
「おう、いいよ」
「ありがとうございます」
僕は家の中に案内され、家事をしていたグランの奥さんと娘さんに挨拶をした。
「初めまして。ソーマと言います」
「初めまして。グランの妻のエリカです」
「初めまして。娘のアリスです」
エリカさんはブロンドヘアで、如何にも家事ができそうな雰囲気を醸し出している。
アリスは、グランと同じ赤髪だが、顔立ちは奥さんと似てかなり整っている。まだ幼く、7、8歳くらいだろうか。
グランは僕のことを説明した。
「この人は、ギルドの依頼を受けてくれた人だ。昼食をふるまいたいんだが、いいかな?」
「もちろんいいですよ。さあ、ソーマさんといったかしら、そこに座って待っていて頂戴ね」
「はい」
しばらくしてアリスが僕に声をかけた。
「なんでソーマはギルド会員になったの?」
「うーむ、そうだなぁ。鍛えるためかな?」
「どうして?」
「ん?」
「どうして鍛えるの?」
「そりゃあ、強くなるためだよ」
「なんで?」
め、面倒くさい。そういえばなんで鍛えるんだ?魔術を教わってればいいはずなのに……まあ、細かいことはいいか。
「僕もよくわからないや」
「そう……」
その後、食事を頂いて、報酬のほかに傷ついた果実までもらった。
感謝してもしきれない。
「本当に、ありがとうございました!」
そんな言葉が自然と口をついて出た。