表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平民の黒魔術師  作者: Rin
第一章 修行
2/25

旅立ち

二話目です。

 僕は、この家を発つまで魔術教本を片手に家族との時間を精一杯過ごした。


 二週間後


「行っちゃうんだね……お兄ちゃん」

「ああ、でも絶対に強くなって戻ってくる。約束だ」

「「「いってらっしゃい」」」

「行ってきます」

 

家族と短い言葉を交わす。

 短いながらも、今の僕には何よりも重い言葉だ。

 行ってきます、という言葉には、ただいま、がセットになっていると僕は思う。

 つまり、そういうことなのだ。


 こうして僕は王都行きの荷車に乗り、十二年と数か月過ごした家を旅立った。

 荷車に乗ってしばらくすると、暇を持て余して荷車の主と雑談をした。


「あの、王都まではあとどれくらいですか」

「三日くらいですよ。王都には何をしに行くんですか」

「リネッタの召集令状が来ましてね。受験ですよ」

「学校ですか。それは大変ですね」

「ええ、まあ。ところで、悪夢の黒魔術師って知りませんか。弟子になりたいんですよ」


 荷車の主は、さも常識のように話してくれた。


「もちろん知ってます。というか有名です」

「どこにいるか分かりますか」

「王都の中で一番ぼろい家に住んでいます。場所は、西区です。何ならそこで降ろしましょうか」

「ありがとうございます。……うわ!なんですか、あれ」


 暗くて良く見えなかったが、毛が生えていて四足歩行、大きさは人間程だった。


「魔物ですよ」


 僕は、人生で初めて魔物を見たのだった。

 その後、荷車の中では本当にすることがなくなり、父に貰った魔術教本を読んでいた。

 そして三日後、王都に到着した。


「ここが王都か。凄く……広いな」


 そんな言葉が思わず口をついて出た。

 僕は衛兵に学校の召集令状を提示し、町に出た。

 僕は、腹が減っていたので適当な露店でリンゴを買い、店のおやじにに悪夢の黒魔術師について話を聞いた。


「この西区にある中で一場ぼろい家って、どこにありますか」

「兄ちゃん、そんなところに何の用だよ」

「そこに住んでる悪夢の黒魔術師の弟子になろうと思ってるんです」

「なんだ、リネッタの受験生なのか」

「どうして分かったんですか」

「普通の魔法学校なら、ただ勉強すればいいだけだ。実戦じゃないからな。でもリネッタだけは実戦形式の試験だからな。魔術ないしは魔法が使えなければ話にならない」

「なるほど。そうだったんですか」

「ここをまっすぐ行くと異質な建物があるから、そこだ」

「ここをまっすぐですね。分かりました。ありがとうございます」


 僕は、リンゴを齧りながら言われたとおりの道を進んだ。

 おっと、ここのようだな。

 僕が見たのは、周辺の豪華な建物から逸脱した、見るからに崩れそうな木でできた小屋だった。

 確かに、ぼろいな。

 何があったんだ……。

 意を決して扉をノックすると勝手に開いた。

 凄い、こんなの見たことない。

ノックするだけで開いてしまうほどちゃちな扉なんて初めてだ。


「すいません、悪夢の黒魔術師さんがいると聞いたのですが」

「誰だ。というかその名前で呼ぶな。あんまり好きじゃないんだ」


 薄暗い部屋の奥から聞こえてきたのは、少し低めの女性の声だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ