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1-8 ノー エスケープ

「いっててて……」


 うぅ……いきなり殴り付けてくるんだもんなぁ……おっと失礼!

やあ、リスナーの皆さん、いやいや心配はご無用

どんなピンチも物ともしない無敵のスーパーヒーロー『マスクドDJ雷音』だ。

地球から遠く離れた所にあるシーム星に、

遥か太古の巨大移民船ホープが墜落の危機!!

最長幅10数kmの巨大宇宙船が墜落したらシーム星の環境はひとたまりもない。

それを止める為にやって来た、私とシーム星人のカナロアさんは

調査にやって来ていた銀河パトロール隊員のアルスさんと一緒に、

ホープの内部までやって来たところで、宇宙海賊の一団と鉢合わせ、

ドタバタがあって3人はバラバラになっちゃったんだけど、

墜落のその時は刻々と迫ってる、私はホープを10億年も掃除してたロボット、

バートの案内で宇宙海賊達が待ち受ける移民船ホープの

コントロールルームへと向かったんだ。



「ぅおーいってぇぇ!」


 タワーの最上階に到着した私を、開口一番殴りつけてきたゴリラ君だけど

どうやら雷音マスクの角にぶつけちゃったみたいで、

手をパンパンに張らしている。


「悪い悪い、よく冷やして暫くすれば、腫れは引くと思うから」

「ふざけてんじゃねえぞテメェ」

「何を騒いでいる! お、お前はっ?」


もう一発殴られそうになった所を、奥から来た別のゴリラ君が助けてくれた。

いや、もしかしら、全然助かってはいないのかもしれない。

厄介な宇宙海賊が1人増えたとも言えるか。

すると無線機かな? 例の腕に巻いている機械がチカチカ点滅したんだ。


「はい、銀河パトロールの仲間の1人です……はい……はい、了解です」


通話相手の声は聞こえないけど、改まり様からキャプテンワールドからかな?

了解したって、何に了解したんだろう。

こいつら、人殺しはしないのかもしれないけど、

丸腰で無抵抗の相手を殴ることは、してくるんだよなぁ、

元を辿れば先に手を出したのは、こっち側なんで責められないけどさ。


「付いて来い、だが怪しい真似をしたら叩きのめして放り出すぞ」

「有難う、肝に銘じるよ」


 2つ3つフロアを抜けると、何やらごちゃごちゃとした機械だらけの部屋の中に

アルスさんと、キャプテンワールドの姿が見えた、ここがブリッジだろうね。

のっぺりした箱の山みたいな物は、元からここにあったカイ星の物で、

それにコードで接続されている基盤や回路剥き出しの機械は、

彼らが他所から持ち込んだ物だな。

それを7人の海賊達が、難しい顔をしながらガチャガチャ操作している。


「キャプテン、連れて来ました」

「ご苦労だったロディ」


ワールドとアルスさんが、こちらに気付いた。

ところであのゴリラ君はロディって名前だったのか。今度からはそう呼ぼう

でももう他のと区別がつかなくなっちゃった……おい、そんな場合じゃない。


「折角アルスが苦労して逃がしてくれたというのに、戻って来たのか」

「何をしに来た、馬鹿者!」


馬鹿者とはお言葉だねぇ、何をしにって何となくは分かってるくせにさ。

でも、来てくれて有難う~なんて言葉が飛び出すなんて、

これっぽっちも思ってないけどさ。


「そう責めるなアルス、彼はお前を助けに来たつもりでいるのかもしれないんだ」

「いや、アルスさんだけじゃない、この中にいる者全員をだ。

ここはあと数時間でシーム星に墜落する。

こんな奥で何をやってるか知らないけど、さっさと逃げないと」

「フッ……コイツがシーム星に墜落するのを見付け、知らせたのは俺達だ」


え?……そうなの?


「2週間前だ、妙な軌道で進む彗星を俺達のレーダーが捉えた。

計算の結果それがシーム星とぶつかると分かり、すぐにその情報を流した。

これが彗星ではなく全てが死に絶えた移民船だと判明したのは昨日の事だ」

「それでお前達は、これをコントロールしようとでも?」

「そうだ、俺達の知らせにシーム星の議会は、リスクを知りつつ星の外へ逃げ、

墜落をやり過ごす事に決定し、銀河パトロール隊は、シーム星の決定を尊重、

また自然現象、災害には関与しないとした……俺はそれが気に入らなかった。

シーム星はこの広い宇宙の中でも、二つと無い程の美しい星だ。

どんな危険を冒してでも、守る価値がある」


アルスさんの表情が曇ったのが分かった、普段の跳っ返りな目でじゃない。


「そこに住まう者達が足掻く事もせず、宇宙に住まう人々の平和と安全を守る等と

普段は御大層な事を言いながら、失われる多くの命を見過ごすなんてのはな……」

「全ての命が救えるものか、大量絶滅はいつ何処ででも起こりうる自然淘汰だ

それに干渉する事は、次代の命、その星が歩む歴史を踏み躙る事になる」

「フッ、そのもっともらしい理屈も、銀河パトロールは会議で決定するのかい?

煮しめた最大公約数の正義の元に生きる……俺には理解出来ん生き方だ」


 ギリギリした険悪な空気を崩すように、

コロコロリと間抜けな音をたて、バートが前に進んで口を挟んだ。


(キミがこの件に関して、色々気に入らないって事は充分分かった、

我らの不始末に対し、あれこれ手を尽くしてくれている事にも感謝する。

しかし、こいつをコントロールする事などもう出来ない、諦めるんだ)

「清掃ロボットが喋っただと?」

(どの程度調べが進んでるのか知らんが、ここにあるのは10億年も前の物だ。

中枢部はとっくの昔に朽ちている、そこに並んだ機材で何とか出来たとしても

推進装置だって動く事は無いだろう、この船はかつての惰性で進んでいるだけだ)


そうだよなぁ、スマホでも4年も使い込めば色々使い勝手に問題が出てくる、

数十年放置されたスクラップ同然の車だって走りだしたら奇跡に近い、

10億年も昔の船を操縦しようってのは、そりゃ無理中の無理な話しだよ。


「ほらほら、この宇宙船の生き字引が無理だって言ってるんだ、

墜落までの時間はもう少ない、あと1時間そこそこで爆破しないと

シーム星に被害が及ぶんだ、さっさと撤収してくれ」

「爆破だと? ……フ、フフッ」

「何が可笑しい?」

「ハッハッハッハッハ」


何? 私何か変な事を言った? 面白い事言った?

どういう事か分からないけど、ちょっとここでブレイク。

もう爆破まで残り1時間くらいしか無いんだけど?

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