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1-5 スペース ウルフ ディティ

「ライオン! そっちはどうだ?」

「いや、こっちには来てない!」


 あ、どうもどうもリスナーの皆さん、

地球から遥か遠くのシーム星に謎の巨大物体が接近中で

激突による大災害を食い止める為に、何故か協力を求められた私

『マスクドDJ雷音』は、シーム星人のカナロアさんと、

たまたま居合わせた、銀河パトロール隊員のアルスさんと

謎の巨大物体の内部に潜入したんだけど……そこにあったは、

静かな誰もいない街だった。

と思ったら、私達を監視する何者かを発見して、現在そいつの捜索中って、あ!


「アルスさん、後ろ!!」

(………………!)


 あいつだあいつ、コロコロ転がる4つのボールが足になってて

スイスイこの街を走り回って、逃げ隠れしている憎たらしい箱野郎ですよ。


「もう逃がすものか!」


振り向き様に、躊躇無く銃の引き金を引くアルスさん、

こいつマジかよって思ったんだけど、銃口から連射された光線は

箱野郎を貫くことは無く、弧を描くように地面に直撃した。

熱された地面から炎が上がり、逃げ道を塞がれた箱野郎は

急ブレーキをかけたかと思ったら予備動作も無く、真上に飛び上がった。


見上げる私とアルスさんの視界を横切る赤い筋が箱野郎に絡みついたと思ったら、

そのまま地面に引っ張り下ろした。

驚いたな、カナロアさん……手がそんなに長く伸びるのね。

どうやら箱野郎の方も観念したのか、捕まるとそれ以上の抵抗は見せなかった。


「さて、捕まえたは良いものの、コイツをどうしたものか」

「動きから見て意思のようなものを持っていると思われますが、何でしょう?」

(ブブブ……シーシー……デデビーブッブブ)


ボディのあちこちが赤や青でチカチカと点灯し何やら妙な音が出ている。


「これがコイツの声で、音でコミュニケーションを取っているのなら

私のマスクに付けてくれた、翻訳機で話せないかな?」

「これが言語だとしても、全く未知のもの、ライオンの話す日本語より

学習に時間がかかるが……そうですね、取りあえずやってみよう。

断片的にでも、こちらの意思を伝える事は出来るかもしれません」


私がカナロアさん達と、ぎこちないながら話しが出来ているのは、

シーム星のスーパー科学が作り出した、宇宙対応の翻訳機のお陰なんだけど、

この謎の巨大物体に関する事には、勝手が色々違うらしい。


(ビッビッ……ピー……ブブブブ……)


うん……取り付けたんだけど、やっぱ言ってることは何も分からないね。


「おい! そいつまだ何かしているぞ!」


突然アルスさんが大きな声を出した。

もういちいち説明いらないかもしれないけど、勿論銃は抜いている。


「辺りに生態スキャンへのノイズが発生している、こいつジャミングを?」

「彼が? だが何かが発せられているようには見えません」

(テテテビービービー……ガガッ)

「いや、この場合は発生源が問題ではなくてさぁ」

「獣頭の言う通りだぜ、マヌケな銀河パトロール隊員さんよ!!」


えっ誰? 今失礼な事を言ったのは? ひっどいガラガラ声だったけど。


「気付くのが遅かったな、お前らには大人しくしていてもらおうか!」


再びガラガラ声が聞こえるや、背景がフンニャっと歪んで見えた途端、

誰もいなかった場所に何人ものゴツイ体格の奴らが私達を取り囲むように現れた。

光学迷彩っていうやつ? 宇宙にはそんなものも普通に存在しちゃうの?


ところで、私のことを獣頭なんて呼ぶ失礼な連中は、

どいつもこいつも端正なイケメン揃い、左からゴリラ、カマキリ、カバ、サイ、

ゴリラ、トカゲ、ゴリラ、ゴリラ、衣笠、ゴリラ……

この動物園はゴリラが充実してるね。


それぞれが、大きな何かを身に付けてたり、持ってたりするけど、

音楽隊じゃなさそうだ、きっと物騒なもので武装した集団だなこりゃ。


「……ブラザーフッド」

「そう呼んで良いのは俺達だけだ、お前らは違う!お前らは宇宙海賊と呼べ」


ガラガラ声のボスゴリラがドヤ顔で言っていると、

ヤツの腕に巻かれた腕時計のような機械が光りだした。


「はいキャプテン、銀河パトロール隊員1人に、シーム星人1人、

詳細不明の獣頭が1人、あとシティーの清掃ロボットが1台、包囲しました」


このゴリラはボスじゃなかったのか、キャプテンは別の場所にいるんだな。

こいつらを束ねる奴って、どんや奴なんだろう。

あと箱野郎は清掃ロボだったんだね、この街のルンバってとこか?


「拘束しただと? 笑わせるなよ」

「大人しくしてろ銀河パトロール隊、それがお前らの身の為だぜ」

「お前達こそ、ずっとカモフラージュして隠れてた方が身の為だったのになっ!」


のになっ!と同時にアルスさんの光線銃が唸りをあげ、

あっと言う間に、宇宙海賊共を次から次へと撃ち抜いたんだ。

アルスさんが撃ったのは、さっきの炎を上げた、熱のビームじゃなく、

宇宙海賊は痺れて、手に持っていた武器を落とし崩れ落ちるように倒れていく。

あの銃は色んな種類のビームが発射出来るらしい。


って、私の後ろにいる奴がまだじゃないか……と思ったけど、

周りの仲間がバタバタやられた事に、一瞬呆気に取られちゃった

お間抜けカバさんだ、その隙を突いて奴が持っている銃を蹴り上げ

そこをアルスさんの光線銃がバキューン! ビリビリ~で一丁上がり。


「流石は銀河パトロー……」

「カナロア、ライオン、走るぞ! 来た道を通って外へ出る!」


そう言い放つと、そのまま走り出すアルスさんとカナロアさん。

え? 何? 走るの? 二人を追って、私も一瞬遅れて走り出した。


「ま……待ちやがれっ……」


痺れて動けなくなった宇宙海賊達を置き去りにしちゃうのは、気の毒なんだけど

今は兎に角アルスさん達の後を追って、来た道を引き返した。

包囲してすぐ、アルスさんの銃を奪うか、捨てさせるかしなかったのが

ゴリラ動物園にとって最大の失敗だったね。


 ここまで、あちこち警戒しつつ慎重に調べながら進んでいたんで、

入って来た扉までは、そんなに離れていない。

ほら、もう扉が見えてきた。あそこを出て階段を駆け上がれば外に……あれ?

扉の前に誰かいる。

その誰かを見付けアルスさんの足がピタっと止まった。


「お前は……」


肩に羽織った赤黒いジャケットを揺らし、腰に差した銃をギラリと光らせ

ゆっくりとこちらへ歩いてくる只ならぬ雰囲気を発している男に、

どうやらアルスさんは、見覚えがあるようだ。


「キャプテン……ワールド」


こいつが宇宙海賊のキャプテン!? と、取り合えずちょっとブレイク。

爆破のタイムリミットまで、あと~2時間と3、40分くらいかな?

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