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1-4 サイレント ランニング

 はいどうもリスナーの皆さん、奈良県ってどこにあるか知ってる?

そこのヒーロー『マスクドDJ雷音』です。

麗しき?宇宙人カナロアさんの住むシーム星に謎の巨大物体が高速接近中!

衝突を防ぐ為に協力を求められた私と、巨大物体の調査にやって来た

銀河パトロール隊のアルスさんを合わせた3人は、

巨大物体の壁面に発見した扉から巨大物体の内部へ入っていくと、

そこのあったのは……街だった。


(………………?)


 意外過ぎる風景に、馬鹿丸出しでポケ~っと辺りを見回してしまう。

外壁からの距離から考えて広さは8~8.5km四方……

東京ドーム1500個分くらいの広さ?

白い大きな建造物が幾つも立ち並び、それらを区切るように引かれた道路には

所々文字のようなものや、その道路を区切るラインが描かれている。

街の中央には太く高い塔? 柱? が建っていて、天井まで続いている。

建物に窓は見当たらないが、入口らしき扉が付いているように見える。


「おいライオン! 警戒を怠るな、何が起こるか分からないんだぞ!」


アルスさんの言葉にハッとして、マスクの下のアホ面を直し、

見たことの無い物へのドキドキワクワクを抑え警戒姿勢を取った。

何かいる? という嫌な予感は、この風景によって

更に確実なものへとなっていく……

当然アルスさんは、ずっと銃をホルスターに納めていない、

顔にチカチカ光が反射しているが、あれはアイグラス型の情報端末だろうか?


 カナロアさんは目を閉じ、ただ耳をすましている。

一見原始的にも見える行為だけど、この人って身一つで何かを操作する事無く

宇宙船を動かしたり数々の離れ業を見せることから、私には想像もつかないような

高度な情報処理をしているのかもしれない。


(………………)


私はと言うと、ただ神経を研ぎ澄まし辺りの気配を探っていて身動きが取れない。


「不自然です、静かすぎるのではないのか?」


カナロアさんの言う通り、街にしては静か過ぎるんだ。


「確かに、我々を警戒して息を潜めているのだろうか?」


いやいや、そんなレベルじゃないだろ、全く何一つ音がしてないんだ、

住民全員が息を潜めてるって? そこまで私達が警戒されているとしたら、

逆にそれに対応する動きがあったって良い筈じゃない。


「これじゃ、まるでゴーストタウンだな」

「バカバカしい、死者が生き返り街を築くなど、

非科学的な下等種族は黙っていてくれないか」


そういう意味じゃねえよ! いい加減怒るぞ。

いや待てよ……これ翻訳機が完璧じゃないせいなのか?

とすると、アルスさんも常にイライラツンツンしてるんじゃなくて、

実は丁寧に話しているのに、翻訳機を通すとあんな感じになって……

って、そんなわけないか、事ある毎に超銃向けてくるしな。


「ここでじっとしていても仕方ないです、時間も無いのだ辺りを見て回ろう」

「うむ、そうだな!」

(………………)


カナロアさんとのやりとりには、心なしかアルスさんは上機嫌な気がする。

便利な能力だなって思うけど、どんなに文化文明が進化しても、

ルックスという判断基準は、絶対的なんだなって打ちのめされちゃうよね。


 その後も、街を探索して回るものの、何者かが現れる事は無かった。

道はあるがそこを通る者はいないし、建物の中にも入ってみたが誰もいない。

住居だったり、商業施設だったり、工業施設だったり色々あるのかな?

想像は出来ても、それぞれが何なのかは一切分からない。


(………………)


 例えば目の前に四角い箱のようなものがあるんだけど、

日本人的感覚からすると、このレイアウトで置かれているなら

昔懐かしブラウン管テレビを真っ先に思い浮かべるけどぉ~、

これはタンスかもしれないし、椅子かもしれないし、トイレかもしれないし

ただ部屋に、こういう箱を置いておくと落ち着くとかいう理由で

置いてあるだけかもしれない。

調べ続ければ、いつかその謎が解けるのかもしれないけど、

ここはあと数時間で破壊されるわけで、ただただその時間まで、

何だろな? と首をかしげているしか出来ないんだな。


「やはり誰もいない、完全な無人なのか?」

「そうであると有り難いです、トラブル無く破壊出来るのだからな」

(………………)


どうやら、彼らの分析結果でもこの街は人っ子一人いないってのが濃厚のようだ。

でも私にはさっきからずっと、この街に入ってからず~~っと

奇妙な感覚があるんですよ。

リスナーの皆もそういう感じしない? 何かいつもと違うって言うか……

視線って言うのかな? 何かに見られてるような? だとしたら誰に?

ここは無人だっていうのに? ……あ。


「ちょっと良いか、そのままそーっとカナロアさんの後ろを見てみて」

「ん?どうした?」

「何かあります?」


カナロアさんの後方少し先に目をやると、何やら道の真ん中に置いてあるんだ。

4つのボールの上に箱が積んであるような、

この街で見た、何か分からない物の中でも、特に珍しくも無いものなんだけど、

あれが何だか少し、他とは雰囲気が違って見えるんだ。

そもそも、ついさっきまであんな物は置いてなかった気がする。


「あれがどうかしましたのか?」

「この街はあんなものだらけだろ?」

「いや、その……何か……」

(………………)

「ん?」

(………………!!)


私達が視線を向けていたそれは、突然走り出したんだ、

私達の注目に気付いて逃げ出すかのように。

さっきから感じてた、視線のようなものはアイツからだ、

ここに来てからずっと、アイツに監視されていたに違いない。


(………………!!………………!!)


地面に着いてるボールが回転し、キャスター椅子を滑らせるように、

でもレースカーのように凄い速度で道路を進み、角を曲がり、

あっと言う間に、視界から消えてしまったんだ。


 動いた事に驚きつつも、私達はすぐさまアイツを追いかけ走り出した。

あれが何なのか、すんごく気になるけど、ここでちょっとブレイクだ。

破壊リミットまであと3時間あるな。

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