3-7 コールマインカナリィ
どうも、宇宙をまたにかけるヒーロー『マスクドDJ雷音』です。
前回、巨大ロボット兵器ダイライオンに乗り込んだ私の大活躍で、
この辺り一面の機獣だの機竜といった怖いロボットは全部やっつけたんで、
今はこうしてのんびり一休みしてるってわけ。
他の皆はと言うと、ツリアさんとチゼさんは、私が引っこ抜いた
機竜のコアをダイライオンに取り付け改造中。
もの凄いパワーを秘めたパーツみたいで、今度こそ自由自在に動かせるって
目を輝かせながら、その場で分解、組み立てを始めちゃった。
そんなの持って帰ってからでも良さそうなのに、でも抑えられない気持ちは
分からなくも無いよね。
持って帰るには大変な大きさだし、辺りには機獣はもう見当たらない、
それに何かあっても私や、銀河警察さん達がいれば何とかなるか。
私なんかよりも長い期間あの巨大ロボットに向き合ってきた二人には
あの操縦する感覚を是非体感してもらいたいしなぁ。
銀河警察の2人アルスさんと、イェルドさんはというと機竜の残骸を
何か色々と調査をしてるみたいで、一休み中なのは私だけなんだよね。
……等と言いながら、スマホに向かって動画を撮影していると
画面に映った私の背景の一角に気になる地形を見付けて振り返ってみた。
巨大メカ同士の戦闘の影響で、周辺の樹々がほぼ薙ぎ倒されていて
視界は開けているんだけど、その中にちょっと不自然に盛り上がった
小山か、小さな丘のような所があり、よく改めて自分の目で見ると
そこにはぽっかりと洞穴のような穴が開いている。
地下のホープ居住区に通じる入口のような、開閉機も無さそうだし
人為的にカモフラージュされている感じではない。
この星に天然自然の洞穴なんてあるのかな?
近づいて見ると、その穴は大型トラックでも悠々と通行できるくらい大きく
地面もなだらかで、しかも入口からその奥がよく見えないくらい深いみたい。
一体どれくらいの空間が広がっているんだろう?
何だか嫌な予感を感じながらもう、好奇心で奥の方へと進んで行っちゃった。
緩やかな下り坂を進み続けると、外の明りはいつの間にかかなり遠くなって
想像以上の内部の広さに、自分の中の嫌な予感が的中しちゃうんじゃないかと
マスクの中の頬を冷や汗が伝うのが分かる。
暗視に関してはマスクの性能と、私の超視力で問題は無いんだけど、
それによって嫌な風景がしっかりと見て取れてしまうんですよね。
地表ではあれだけ土に石ころ、樹々や草花なんかで擬態していた機械が
そのメタリックな表面を隠すことなく、床に壁に天井を構成している。
これはやっぱ、アレだよね。
地上を闊歩していた機獣達は、ここから出てきている?
奥には製造施設や修理施設なんかがあったりして、こうして侵入した私に
どこからか襲い掛かって来るとか?
一掃したと思ってた機獣がまだまだこの中にいるだとか?
いや、待てよ?
私の嫌な予感の通りとして、入口の大きさは大型機獣や、まして機竜が
出入りが出来る程ではなかったよね。
私の考え過ぎか、或いは大きな機獣や機竜には別の出入り口があるか……。
ごちゃごちゃと考えが回りだし、外のアルスさん達が気掛かりになって
進む足がかなり重くなったそのとき、思いもよらないものが
視界に飛び込んできて、思わず奥へ奥へと駆けだしてしまった。
バート!
この星にやって来たそもそもの理由、ずっと探していた清掃ロボット
あのバートがこの洞穴の奥に立っているじゃないか。
太古の超文明技術で作られたとはとても思えない無骨な箱型ボディ
貧相なローラーをコロにして移動するあの姿、間違いない!
やっと見付けたよ。
しかし、もうバートが手で触れそうな距離まで来てみると
その姿は、変わり果てたものになっている事に気付いて、はっと息を飲んだ。
ボディはその真ん中を、何か小さなものが貫いたような穴が開き、
熱によると思われる歪みと、衝撃による罅割れがほぼ全体に走っていて、
装甲が剥がれた所からは、小さな部品が散らばり落ちている。
機械にこれを言うのは変かもなんだけど、私の知るバートと違って
全く生気を感じないんですよ。
床から少し拾い上げてみると、壊れたパーツが中でコロコロ音を立てて
こみ上げてくる物凄い虚しさと悲しさが、握力を奪っていってしまうので、
震える手で、そっと床に置き直してしまいました。
バート……。
恐らく熱線銃みたいな物で撃ち貫かれたんだろうと思うんだけど、
だとしたら一体誰がこんな事を?
機獣は牙や爪等、その野獣の姿に備えられた武器で直接的な攻撃をしてくるし
大型の物や機竜だと、熱光線を発射はするが、こんな小さな相手を
こんな小さな一発の攻撃で仕留められるとは想像し難い……。
実際に戦ってみただけの感覚でしか無いけど、凄く違和感があるんだよね。
つまり、私がまだ知らない別の敵がいる?
そいつがバートの仇で、そいつはこの地下空間にいる可能性が高い?
ガシャッ
どうやら、感傷にも怒りにも浸る時間はくれないみたいだね。
今まで息を潜めていたであろう何者かが、奥の暗闇から物音を立てた。
睨むようにそちらを見ると、そこには人間のようなシルエット
しかし白味かかった金属色の表面に覆われた体の、異形の者が立っている。
ぱっと見で、そこに機獣や機竜との共通のものを感じました。
人間型のタイプもいるっていう事もいるっていう事なんだろうね。
さあ、こいつが何をしに出て来たかって事が重要です。
機獣のように襲い掛かって来るのか、こいつがバートの仇なのか
そもそもそれを確かめる事なんて可能なのかな?
今回はここで、ブレイク。




