3-6 斗え!號装巨刃ダイライオン!
『斗え!號装巨刃ダイライオン!』
うた:マスクドディージェーらいおん
ズガンガガン バンバン ダダンダダン ラララ~ララ~ラ~ 斬ザ斬斬斬斬
輝く刃が天を衝く 無敵の巨人だダイライオン
太古の意思が蘇る みんなの未来を守る為
響く!轟く!その雄たけびが 一閃!必殺!ダイライオン!
キミの 笑顔と 夢乗せて 絶対!負けない!ダイライオン!
ズガンガガン バンバン ダダンダダン ラララ~ララ~ラ~ 斬ザ斬斬斬斬
テーマ曲にシンクロするようにして、地響きを上げながら駆け抜ける
60mの黒い巨人ダイライオンは、自身の全長をも超える巨大剣を振るい
行く手を遮る巨大な機獣達を次々と両断し、蹴散らし
その瓦礫の山を次々と築きあげてゆくのだった……って事で
どうも、スーパーロボット號装巨刃ダイライオンのパイロット件
スーパーヒーロー『マスクドDJ雷音』です。
いやぁ、最高の気分だね!まるで自分の手足のように巨大ロボットを操り
未知の惑星の大地を駆け抜ける。
襲い来る敵メカをバッタバッタとなぎ倒していく。
恐らく、日本中の小さなお友達から大きなお友達が羨ましくて羨ましくて
仕方がない事を私はやっているんじゃないのかな?
「ライオン君、何だねその歌は」
「ライオン!浸っていないで真面目に操縦して下さい!」
「てめぇ!勝手な名前つけてんじゃねえ、そいつはフォートウォーリアだ」
ね、連れの皆さんからも大絶賛なわけよ。
「親方!そんな事言ってる場合じゃないよ!どんどん機獣が出てくるよ!」
巨大なロボが目立つからか、私が調子に乗って熱唱したからか
ダイライオンや、4人を乗せたフォートワーカーを目掛けて、四方八方から
機獣の集団が小型のものも大型のものもゾロゾロと向かって来ます。
だがしかし、これは狙い通りなですよ。
今回は、これまでのように機獣からコソコソ隠れて地上を調査しているのでも
目的の為に戦闘は最小限に抑えての活動というのでもないんです。
こいつらがいつまでもこのまま地上を闊歩している状態では、
誰一人地下から新天地へ上がって来る事は出来ません。
この巨大ロボットを使って、ここら一帯に配備されている機獣を
徹底的に壊しまくるっていうのが、目的なんですからね。
普段は押しころしている私の破壊衝動を解き放ち
巨大な剣をブンブンと振り回すと、面白いように機獣達は
鉄クズへとその姿を変えていく。
おっと、調子に乗っていると少しダイライオンを先行させ過ぎちゃったかな
アルスさん達の乗ったフォートワーカーに機獣が集まりつつある。
「とう!」
地面を蹴り60mの巨体を大空へ飛び上がらせると、フォートウォーカーを
大きく跨ぐように着地すると、枠に構えた大剣を横一線に降り抜く。
ダイライオンの性能も、それに対する機獣達の戦力差も充分分かりました。
ここらで一気に決めさせて頂きましょう……しかし不思議なものです
咄嗟にこういうときって必殺技名をシャウトしてるんだよね。
「一振当千!雷刃魔破剣!」
なかなか良い技名じゃない?
振り抜いた剣をその重量に乗った勢いにまかせ、ぐるりと弧を描くと
ダイライオンを中心に巻き起こった巨大な斬撃が、みるみるその径を広げ
視界に入る全ての大小様々な機獣を悉く粉砕してゆくっていう、
サイコーに気持ち良い光景を見せてくれた。
手足がダイライオンに固定されてなかったら、絶対動画に撮ってたのにな。
「ライオン君……」
「あいつ、やりやがった……」
呆然としていることが音声通信だけでも分かる感想が聞こえてきますね。
先程まで地鳴りと、金属の犇めきと、爆音に包まれていた世界が
すっかり静かな荒地になっちゃいました。
この星全ての機獣を破壊したわけじゃないだろうけど、ここら一帯の機体は
ほぼほぼ片付いたんじゃないかな。
「流石ですライオン!でも遊び過ぎですよ!」
「お前ら……一体何者なんだよ、あの機獣共をこうもアッサリと」
「いやぁ~彼が、ライオン君が異常なんですよ」
フォートワーカーから送られてくる、そんな安堵の会話音声を遮るように
チゼさんの鬼気迫る声が割り込んで来た。
「待って、安心するのは早いよ! レーダーに反応、この大きさはっ……」
ダイライオンのモニターにも、すぐにその警告が表示されます。
外観を映し出すその画面の端々に開くウインドゥに、巨大な何かの接近と
そのベクトルを報せているであろう表示がズラズラと並びだし
通信の向こう側のツリアさんの顔付きが強張るのを容易に想像させました。
「来やがったか……機竜」
辺りを闇で包む程の大きな影、吹き荒れる暴風は、先ほどからモニターや
スピーカーで繰り返される、あらゆる警戒シグナルよりも圧倒的な危機感を
発しているように感じましたね。
60mあるダイライオンと一体となっていても感じる圧倒的なサイズ差
まるで、こっちが柴犬、あちらはアフリカゾウという所かな。
だがこちらはそのサイズを挽回する、素材の強さ、パワーの強さがある!
無慈悲な機械のモンスターに、よ~いドン!は要らない。
咄嗟に、地面を蹴り機竜の顔をかすめるように上空へと舞い昇ります。
「皆さんは早く、安全な場所へ隠れて!」
前回、こいつからフォートワーカーに乗って逃げおおせた記憶から
恐らくこの機竜の目では、あのサイズのものはしっかり追えないと見ました。
そして案の定、頬をかすめるように飛び上がる私をギョロリと視界に捉え
上昇していく私に、長い首を翻し、まんまと顔をこちらへ向けてくた。
狙いう通りに、私のみに注目している感じですね。
このまま下降しながら、必殺の一振りを喰らわせてやろうとしたんだけど
機竜の口がガバっと開くと、その喉の奥がギラギラ輝いてるのが見えた。
「ヤバイか?」
その輝きは一瞬で私の視界を包み込んだ、機竜があの口から高熱の炎か何かを
吐き出した事は咄嗟に理解出来た。
その炎の中で私は、実に冷静にクールに事態の整理が出来ていた。
何せ、ダイライオンはその炎の熱をほんの少しも私に伝える事無く
全くの無傷でいるんですからね。
「流石はダイライオンだ、何ともないぜ」
ならば!と、重力に引かれ落下していくダイライオンの姿勢を制御し
剣を構え、機竜の動きに意識を集中した。
すると初撃が効かなかった事はお構いなしに、機竜は次々と大きく開けた口を
そのままに巨大な火球を連続で吐き飛ばして来た。
「ふんっ!」
ダイライオン目掛けて飛んでくる火球が一直線に並んだタイミングで
剣を振り抜き、その炎切断、爆裂飛散させてみた。
いや~なかなかキマってたんじゃない? 格好良い感じになったんじゃない?
やっぱ凄いね、このアブダイト製の巨大剣。
このまま一刀両断にさせてもらうぞと、再び剣を振り被り……と言うか
全長を遥かに超える巨大剣を空中で操るのは、なかなかに大変って事で
ダイライオンの姿勢を剣を中心にクルリと整えると、
いよいよ眼前にまで迫った機竜に一太刀、真向に斬り付けた。
「何!?」
咄嗟に機竜が体を庇ったのか、私のハンティングゲームやり過ぎのクセか
剣は機竜の尻尾の真ん中に、その刃を喰い込ませています。
宇宙最硬、破壊不能の鉱物アブダイトの刃が受け止められてるんだけど。
硬さと重さと大きさに物を言わせてここまでやってきたけど、
ここまで大きな相手だと、それだけでは破壊出来ないって事か。
確かに、切れ味なんて度外視されてそうな設計思想っぽいもんなぁ~。
「うおおおっと、うああああ」
勿論この程度の手傷じゃコイツらは行動を止めない。
尻尾に食い込んだ剣と私を振り払おうと、大きく強力に尾を振り放ち、
ダイライオンを払い飛ばした。
「どうしたライオン君!攻撃が効いていないのか!」
吹き飛ばされる機内にイェルドさん達の声が届いた。
「ちょっとミスりました。でも大丈夫ですよ!次は充分な体制で攻撃します」
そう答えると見事に着地するや否や、再び機竜に向かって飛び掛かります。
吐き出される火球が何発も命中するも一切意に介さず、ただ一直線に
機竜めがけて突き進んで行きます。
こいつら機獣、機竜は行動不能なレベルまでの徹底的な破壊をしない限り
止る事無く攻撃を継続してくるわけですからね、半端な攻撃では
埒が明かないんですよ。
「とりゃあああ」
今度は胴体に袈裟斬りを叩きこんだ……んだけど、やっぱり剣が
その胴体を切断する事は無く、刃を深くめり込ませた所で止まってしまう。
慌てて食い込んだ剣を、機竜の胴体に踏ん張るようにして引っ張り
周囲をえぐりながら解放すると、すぐさま地上へと降下して距離を取りました。
「ダメだライオン君!その剣では奴を破壊出来ない!
これは想定外だ、ここは一旦撤退するしかない」
「てめえはよくやってくれた!フォートウォリアはそこに乗り捨てて
構わねえから、急いで帰って来い!」
声からしてどうやら、向こうでは結構な絶望感に包まれているって所ですかね。
でもその絶望から希望を、逆転劇を見せつけてこそのヒーローでしょう。
「大丈夫!まだこちらには切り札があります」
そう答えてダイライオンを上空から襲い来る機竜に真っ直ぐ向かい立たせます。
大きく胸を張り、必殺の切り札を繰り出す構えを取った所で、叫ぶ
「必殺!ライオンミサイル!」
「み、みさいるぅ!? フォートウォーリアに内蔵兵器なんて、そんなもの
何1つ積んじゃないないぞ」
呆気に取られているツリアさんの声を聞き流し、操縦機系の穴から
手足を引き抜くと、胸の搭乗ハッチをオープンし、外へと駆けだします。
そのままハッチの一部を蹴り、こちら向かって来る機竜目掛けてジャンプ!
からの~キック!! 機竜のどてっ腹に最高のタイミングで脚を突き刺すと
機竜の外装を貫いた私は、そのまま内部を破壊しながら突き進んで行きます。
そして狙い通り、胴体中心の最深に見覚えのある丸いパーツを発見!
それを抱き掲げるようにして引っ張りながら、周辺の配線器類を引きちぎると、
入って来たときの穴から外へと飛び出してやりました。
コアを失った機竜は目に光を失い、まるで糸の切れた操り人形のように、
それまでの絶対的な威圧感は何処へやら、巨大な金属の塊となって
地面に雪崩落ちると、辺りに轟音と爆風と膨大な砂煙を巻き起こしました。
その息苦しい砂の嵐を、左手で仰いで掻き消すと、そこに表れる
機竜のコアを右手に掲げて、1人立っている勝者である私……格好良くない?
え?そんななら最初から巨大ロボいらなかったんじゃないかって?
いやロボはロマンでしょう!
そんなわけで、ここらで一旦ブレイクしましょ。




