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3-5 インモータルズ

 どうも、話すのも好きだけど、興味深い話しを聞くのはもっと大好き、

ワクワク探検家『マスクドDJ雷音』です。

ツリアさんのしてくれた話しは、とても興味深いものだった。

以前聞いたバートの話しとも同じ話し、全く違った運命を辿っていた話し、

そして今この星でこうしている話し、どれも私には衝撃的な内容だった。


 遥か昔、宇宙の何処かにツリアさん達の先祖が住んでいた星、カイがあった。

彼らは優れた知能を持ち、文明は大いに栄えたが、その繁栄は数千年で

危機に陥っていまい、一部のカイ星人達は宇宙の何処かに新天地を求めて

旅立ったのだ~って所はバートからも聞いてたよね。


 そこから何年も何年もの宇宙の旅を続け、何代も世代が移り変わった後、

とうとうこの星、ベールル……いや彼らが呼ぶにはネクストに辿り着いたんだ。

ざっくりと大気の成分や諸々を調べたところ、彼らも生きていける事が分かり、

ここを新天地とするぞとテラフォーミングっていう更なる環境の調整や、

もっと詳しい星の調査をさせる為に大量のロボット達を放ったそうだ。

それを見送り、人々は宛のない無い旅の終わりを大いに祝ったらしいよ。


 幾つかの建物が出来、それが広がり街となり、次第に人々は移民船から

ネクストに移り住み、この星での未来に夢を馳せていたそんなある日、

突然ロボット達が人間達に牙を剥いたって言うんだ。

原因は全く不明、人工人格を持つロボットの全てが人間の敵となり

殺戮の限りを尽くすようになったらしい。

人間達も勿論抵抗し、ロボット達と人間達とで激しい戦争状態になったそうだ。

最初のうち、敵は建築用ロボットや、惑星探査ロボットだったものが、

ロボットは独自でより戦闘的な形状へと改修進化を続け、後に機獣と呼ばれる

人間を殺すことに完全特化した姿になり、遂に人間達は地上を追われる事に……

人間達は乗って来た移民船ホープに逃げ込み、どうやったんだか地中に逃れ

今こうして地下に街を築いてひっそりと暮らしているっていうわけなんだ。


 何度も機獣に対抗しうる兵器を開発しては地上を取り戻そうと

激しい戦争が繰り広げられたんだけど、ロボット達はあの機竜と呼ばれる

ドラゴン型の巨大な奴を作り上げあげ、あれには全く歯が立たないらしい。

そもそも膨大な時間宇宙を旅するのに計算されて出来ている移民船なもんで

取りあえず超長期間人々が住まう事は出来ているみたいだ。

そこには人口統制プログラムや、多くの不自由もあるらしいけどね。

ときに必要な物をチゼさんがやってたように、こっそり機獣の目を盗んで

地上に上がって取って来るなんてこともしてるそうだ。


「バートの話しが、こんな風に全く別の場所で繋がるなんてねぇ」

「そして両方共が不幸や苦難に苛まれている……」


 長い話しを聞き終わって、何だかぼ~っとした頭でアルスさんと2人

地下駐車場でフォートワーカーを見上げてそんな話しをしてた。

ツリアさん達は、え~っと……何かをしに更に地下のフロアに行っていて、

イェルドさんは、街の様子を見に外へ出て行っちゃってる。


「まぁ、中には上手いこと新天地に行った連中だっていたんじゃない?」

「銀河パトロールなんて言っても、知らない事ばかりだ」

「困ってる人は見付けられたんだから、良しとしとこうじゃないの」

「バートは、何処へ行ってしまったのだろうな」

「そう言えば、キャプテンワールドにバート諸共転送されたっきりだったけど

そこから、ずいぶんと仲良くなったもんだね」


!!


 だんだんと雑談に移行していっちゃってる時、僅かに建物が震えたと同時に

地下から何だか分からない轟音が響いてきた。

アルスさんと顔を見合わせ、同時に地下へ通じる階段を駆け下りていくと

何とビックリ、すぐ下に地下2階があるんじゃなくて、その階段はずっと

何十メートルも続いていた……いや、その階段のすぐ横に、巨大な人型の

ロボットが立っていたんだ。


 黒い分厚い金属板を全身鎧を着るように纏った、フォートワーカーとは

全く別物、男の子のロマンが形を成したかのような雄姿を体現している!

この星はロボット好きにはたまらない夢の世界では決してないと言い切ったけど

あれは撤回だよ、これを見る為ならロボット好きなら命を掛けられるね。


「くそぅ!ダメだ!」


ツリアさんの怒鳴り声が、私の興奮をやや落ち着かせてくれた。

それでもその巨大ロボに目を奪われながら、トコトコと階段を降り続け、

ロボットの胸辺りに向かって伸びるキャットウォークを渡った所にいる

暗い表情をしたツリアさんの所まで辿り着いた。


「これは一体……」

「フォートウォーリア。全長60mと大型機獣をも越える巨体、

装甲素材はホープの外装と同じアブダイトでどんな攻撃も寄せ付けない、

あの機竜すら倒せるかもしれねぇ俺達の希望……と言いたい所だが……

全くダメだ、今は動きゃしない、ただのガラクタだよコイツは」

「アブダイトの装甲って!?」

「そうだ、だがそれが重すぎてな……大型機獣のコアを補助動力にしても

一歩たりとも動かせやしない!」


「んんんん~ぐっ……動けぇっ!!」

「チゼやめとけっ、今回も失敗だ」

「くそっ! 今度こそはと思ったのになぁ~」


ロボットの胸部分の装甲版は開かれていて、その奥にはチゼさんが

手足や、背中、体のあちこちを機械に固定されてもがいているのが見える。


「ご覧のザマさ、どういう訳かコイツの操縦は搭乗者の体の動きを

トレースするなんて無茶な仕組みになっていやがる。

トルクアクチュエーターを仕込んでも、補助する動力を組み込んでも

全く動かねえ……機竜と戦うなんざ夢のまた夢さ」


ふてくされながら解説してくれるツリアさんに、アルスさんが訪ねた。


「コイツが動いたとして、それでどうやって戦うつもりだ?

勿論アブダイトの硬さは我々も知っているが、それでも……」

「アイツを使うのさ」


 パチンとツリアさんが何かを操作してすぐ、地下の照明が全て明りを灯し

フォートウォーリアの足元に横たわる、巨大な塊が姿を見せた。

60mと言うフォートウォーリアの全長を越える、物凄い長さの剣だ。

いや、高い所から見下ろす事で剣の形をしているように見えるだけで

これが剣だと言うのは早計かもしれない、あまりにも大きすぎる。

大きく、分厚く、そして大雑把すぎ……あいや何でも無い、

とにかく凄い物が現れた。


「機竜の外皮も、ロボット共が作り上げた超硬度を誇る金属だが、

アブダイトで出来たこの巨大剣を喰らえば一溜まりもあるまいよ」


 私とアルスさんの良いリアクションに気を良くしたのかやや誇らしげに、

でも今は動かせないという現実からやや悲し気にツリアさんは教えてくれる。

しかし、何てロマン溢れる話しなんだって思うよね。

巨大ロボットが超巨大な剣を携えて、ドラゴンと戦うだなんてね。


「しかし、このようなものをどうやって作ったのだ?」

「分からん! あるときホープの内部を補修していたときの事だ。

ずっと誰も立ち入った形跡の無い、開かずのフロアの奥深くで偶然見付けてな、

その中に2つ共置いてあったのさ。

ご先祖様が何のつもりで、どうやってこんなものを作ったかなんて、

ワシが聞きたいくらいだぜ」

「太古のカイ星人はアブダイトを加工する超技術を持っていたそうだからな。

このような物も作れたという事なのだろうか……」


 アルスさんとツリアさんが話している中、降りて来たチゼさんを見て

居ても立っても居られない私は、さっきまでチゼさんが入っていたメカの中で

手足を穴に突っ込んでみた。


「おい、あんた一体何をしようってんだ?」

「コイツは操縦者の動きをこれでトレースして動くんでしょ?」

「そ、そうだが」

「問題は機体が重すぎて動かせないという事なんでしょ?」

「おう、そうだ」

「じゃあ、その重量を物ともしない操縦者だった場合は?」

「そりゃ、理屈じゃそうだろうがっ……なんだと!?」


 とても不思議な感覚だ、まるで自分の手足を動かすかのように、巨大ロボが

自由自在に動いてくれる、いや自分が60mの巨人になったような感じだ。

巨大なロボットの操縦者になるなんて、いい大人になってもずっとずっと

夢に見ていた事だったからね。

興奮と感動で心も頭の中もいっぱいいっぱい、高鳴る心臓で全身が弾みそうだ。

目の前のモニターには、このフォートウォーリアの目が捉えている映像が

映し出され、足元を見るとあの巨大な剣がギリギリ手に取れそうな大きさで

そこに横たわっているように見えるんだよ。

ぐっと足を踏ん張って、自分よりも大きなその剣の柄を両手で握り、

ゆっくりと持ち上げてみた。

ぶんっと振り上げたい所だけど、この建物が真っ二つになっちゃうからね

そこは流石に衝動を抑え込んだよ。


「う、動かしやがった!」


キャットウォークの上で涙をうっすらため込んだ瞳で私を、いやこのロボを見る

ツリアさんの顔がモニターに映っている。

その映像がやや歪むのは、私のマスクの下の目も感動で潤んでいるからかな?

ちょっと涙を拭くから、一旦ブレイクね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「これ絶対雷音さん動かすわ…」って思ったらその通りになってくれたので、ふふってなりましたw [一言] 世の男子の夢を背負って、フォートウォーリアを動かす雷音さんの喜びようが手に取るように分…
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