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3-3 バイオロジカル リアクション

 ロボットは好き? ビルのように巨大なロボットや、強い戦闘ロボット、

ギゴガゴぎこちないマヌケな動きなんかしないよ、しなやかにスムーズに、

生き物の動きをそのまんま再現出来ちゃうくらいの凄いやつ。

大好きだったら、このベールルードN3αXXに来る事はオススメしないね。

そんな大好きなロボット達がひっきりなしに命を狙って来るんだもの、

知り合いの捜索でもなきゃ、私だってすぐにでも帰りたいところだよ。

ロボット大好きで、無敵のスーパーヒーローな私『マスクドDJ雷音』でも

そう思っちゃうんだから、これは絶対だよ。

機械だらけロボットだらけの星の中から、ロボット探し……

そんな不毛とも言える作業の最中、また新しいロボットが現れたんだけど

これは、中に何か生き物がいるって言うんだけど、どういう事なんだろ?


「生命体反応?」

「そうだライオン君、慎重に! コイツはよく調査しなければ」

「慎重にったって……ど、どうすれば」


 もうずっと遭遇するや襲い掛かって来るロボットを見慣れてるもんで、

慎重な調査なんて考えはすっかり抜けちゃってたんだけど、このロボットは

私が目の前に現れても襲い掛かって来ないし、じっとこちらを見ている感じだ。

何となくだけど動きもモッサリした感じがする。

こっちも殴りかかろうとした構えのまま、じっと動きを観察してるんだけど

調査ってのは、お二人の超文明ハイテク機器がやってくれてるんだと思って

お任せしてて良いんですよね?

それにしても、このロボットは動かない、一体どうしたんだろう。


「待って、攻撃しないで! こいつは機獣じゃないんだ!」


突然ロボットから声が聞こえた、私の翻訳機でも翻訳出来る言語のようだ。

機獣じゃないってのはどういう事だ? さっきまでの襲ってきてたロボットとは

違うっていう事なんだろうか。


 声に戸惑っていると、平べったい四角いボディの上部の装甲がバタンと開き、

中から1人の子供が飛び出し……いや、子供なのいか? 小柄な子供サイズの

奴が飛び出して来た。

ロボットとは思えない肌、白い布状の服を着ている、何より表情にしっかり

感情がこもっていて、この人は確かにロボットではないと思うんだよね。

私達3人に敵意が無いことを必死で示すように両手を上げ、こちらの顔を

怯えた表情で見ているのが、だんだんいたたまれなくなってくる。

ちょっと気になってチラっと横を見てみたら、案の定原因はアルスさんだ、

愛銃をガッチリ向けてるのよ。

銃を下ろせ下ろせとジェスチャーで知らせようとしていると……


「キミは、一体何者なんだ? ここで一体何をしている?」


マスターイェルドが誰より早くその疑問を口にした。

こういう所も出来る人なのかね、言いながらアルスさんの銃を手で下ろさせ、

話す相手にいらない緊張感を与えないようにしている。

銃を突きつけ情報を聞き出すのが銀河パトロールの流儀じゃなくて良かった。

彼の方もたどたどしく話し始めた。


「お、オレは、この星に住んでいるチゼ。この乗り物はフォートワーカー

こいつで、あんた達が倒した大型機獣のコアを回収に来ただけなんだ」

「なるほど、チゼ君、私の部下が怖がらせてしまって申し訳ない」

「い、いやぁ大丈夫だよ」


全然大丈夫じゃないだろ。


「この星にはキミ以外にもまだ大勢の人間や生き物はいるのかい?」

「ああ勿論だよ。皆さんが来るのをずっと待ってたんだ!」


ずっと待ってたというのは、どういう事だ? ここに来たのはバートを探してで

私も、アルスさんも、イェルドさんも、ここに知り合いなんていないよね。

それに、この作り物しか無いと思ってた星に、もっと生き物がいるだって?

人を見れば襲い掛かって来る、ロボットだらけのこんな危険な場所に?

私だから軽くあしらってるけど、彼らの言う機獣は相当な戦闘力だが

この彼や、乗ってるフォートワーカーで、それに対抗出来るようには

ちょっと見えないんだけどね。


 なんてことを思っていたとき、突然辺りに暴風が吹き荒れた。

大型機獣達の部品が巻き上がる程の強風を、ぐっと踏ん張って堪える私達を

影が覆い尽くし、まるで夜の闇に包まれたように真っ暗になった。

空を覆い陽の光を遮っているそれを見上げて仰天! 巨大な鳥……いやドラゴン

大きな大きな翼を翻す、さっきの怪獣の数倍デカイ奴が飛んでるんだよ。


「まずい機竜が来やがった! 皆さんとりあえず乗って下さい」


チゼさんはフォートワーカーに飛び込むと、手招きして私達にも乗り込むように

言っている……けど私に任せてくれれば、あいつだって見事に倒してみせるよ。

ぐっと膝を屈伸して、飛び立とうとしたんだけど、イェルドさんが止めるんだ。


「ライオン君! ここは引こう! あいつの事はチゼ君から、この星の情報を

聞き出してからでも遅くは無い。何も知らずにこれ以上あの機獣達に関わるのは

待った方が良いと思うんだ、まるでキリが無いよ」

「そ、そうですね、分かりました」


確かにどうだ、よく分からないのにこれ以上ぶっ壊し続けるのも疲れるだけだ、

ここは一旦逃げてチゼさんから、この星の事を色々聞いた方が良さそうだ。


 振り上げた拳をそっと納めて、フォートワーカーに乗り込んでみると

中は、チゼさんが座る操縦席の他後ろに2つづつシートが3列並んだ

ワンボックスカーくらいの空間だった。

私達はささっとそのシートに着くと、それを確認してチゼさんは

フォートワーカーを歩かせた。


 4本の脚がパワフルに瓦礫の山を降り、森を走り抜ける。

意外なまでのスピードに驚くと同時に、あのドラゴン、機竜って言ってたね

チゼさんにとってのあいつのヤバさが伝わって来るよ。

あと、すんごい揺れる……気をつけないと、喋ったら舌を噛むぞこれ。

そんな事は皆分かってるようで、この状況で起こる色んな疑問は一旦飲み込んで

ぐっと黙って、この乗り物が行き着く先を見守っている。

この乗り物窓が無いもんだから、操縦席でチゼさんが見てるモニター類にしか

外の情報が出ないから、ただただ皆でそれを凝視している感じ。

エレベーターの階層の表示をじーっと皆見ちゃうあの感じに近いかもね

なんて言ってると、モニターに端に謎の文字が表示されて


「チゼ無事だったか、今すぐ開ける!」


何処からかの通信で、誰かの声が機内に流れた。

それに気を取られる間も無く前方の地面がむくりと隆起したかと思うと

シャッターが開くようにして大きな穴が現れ、フォートワーカーはそのまま

真っ直ぐその穴の中へと突っ込んでいく。


 内部は外と打って変わって、のっぺりした平らな金属板を貼り合わせたような

人工的な巨大通路が続いていて、大きなフォートワーカーも悠々と走れる。

4本の脚をせわしなくガチャガチャと動かして歩行していた外と違い、

ここでは脚の先に付いているらしい車輪でスムーズに走行し始めた。

まるで自動車のような安定した挙動と、減速して安全運転に切り替わった所で

同じ事を感じていたアルスさんが私に話しかけてきた。


「ライオン、この雰囲気あのときと同じだと思いませんか?」

「ああ、凄く似てる……気がする」


何の雰囲気に似ているか、それをわざわざ話す必要は無かったね。

この通路を抜けて目に飛び込んで来た風景は、どーんと広く明るい空間に

白い四角い建物が立ち並び、それを区切るように敷かれた道路、

あの時と大きく違うのは、そこを行き交う人々が大勢いる事だ。

これは、もうそのものと言ってもおかしくないくらい、ホープにそっくりだ。

バートが乗っていた、カイ星から新たな星を目指して宇宙を旅する移民船、

その内部に作られていたシティーと呼ばれる居住空間に瓜二つなんだよ。

建物の特徴が似ているのは勿論、ずっと遠くに見える巨大なタワーまで

あの時に見たものと同じ……でも、何で?


 何でこの星の地下に、ホープのシティと同じ街が広がっているんだ?

この星にバートがやって来た事と、きっと何か繋がりがあるんだろうね。

私とアルスさん、あと勿論イェルドさんも、この街の風景に息を飲んでいた。

そんな私達を乗せ、フォートワーカーは1つの建物の中へと入って行った。

今回は、ここで一旦ブレイク。

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