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2-11 バスト ア ムーブ

「んんっ! ん~~……んん!! ん!! ん!! ん~っ!!」


 人の努力する姿、頑張る姿を笑う奴ってのは、ろくなもんじゃない。

きっとそいつは、本気で頑張る辛さからずっと逃げ続けてる、弱虫なんだ。

でも、コレはそうアレとかじゃなくて……その、何だろ、普通に可愛い。

どうも、リスナーの皆さん『マスクドDJ雷音』です。

宇宙の死神、惑星アモルフォの女王アルノルディをウッカリ怒らせちゃって

例の恐怖の能力で正に命を奪われそうって所なんだろうけど……


「ん!! ……ええいっ、どこれはういう事だ!!」

「いや知らないよ、今日は調子が悪いとかじゃない?」

「ありえん、そのような事……ありえん!」

「もう、こっちも興が冷めちゃったし、今日はもう帰るから、また今度に……」

「どういう事だ、どんな秘密が……ライオンお前は何者なのだ!」

「ん~~強いて言うなら、私は無敵のスーパーヒーローだ」

「スーパー……ヒーロー……?」

「そう、あと別にこれは秘密じゃないから」

「……馬鹿にしおって……皆の者っ、何を惚けておる!」


女王の合図に、今まで呆気にとられていた兵士達が我に返り、

あくせくと構えを取ると、一斉に揃いの銃剣を構え光線をぶっ放してきた。

参ったな、橋の幅いっぱいに打ち出されたビームの束が来る!っと思った

その瞬間、辺りに光が走り、兵達から放たれた光の弾丸が消えてしまった。

ヘルメット越しでも兵士達の狼狽えた感情が、ありありと伝わって来る。

カナロアさんの、あのチートアイテムが出たんだ。


振り向くと、やはりカナロアさんが例のボールのような物を取り出している。

シーム星人の扱う超技術の機器って、メカメカしくなさ過ぎなんだよね。

兵士達の使う銃剣から放たれる熱化したイオンを、大気中の何とかって成分で

中和させるエリアを発生させて、どうーたらこーたらって聞いたな。

うん、ぜんぜん理解出来てないから、光線銃を無効化出来る物って事で

この場は納得しといてよ、宇宙の超文明はスゲーって事でね。


「ライオンに構うな、あのシーム星人を捉えよ!」


今度は一斉にカナロアさんに向かって走り出してきた。

いやはや、やっぱりまた出ましたね、人質策はこいつらの常套手段だよ。

お約束展開とは言え、見す見すそれをされると大変マズイ。だからこうだ!!

ここに来てまた、彼らと殴り合いをするなんて面倒は、いい加減御免だからね。

私は地面を、つまりこの大きな橋を殴り付けた。


突き刺さった拳からは、あっと言う間に橋全体に大きな亀裂が走る。

橋という構造物はだいたいにして、一点の綻びから大崩壊を起こすもの、

崩れだした大橋は、まるでヘビがのたうつように全体を揺らしはじめた。

揺れる足場にバランスを崩した兵士達は、オロオロと足を止めるしかない。

いや、それどころじゃない、早くこの橋から逃げないと谷底に真っ逆さまだ。

勿論それは、同じく橋の上にいる私達だって一緒だけどね。


「おいライオン! お前何をしている!」

「あんたの団の隊長さんがさ、何度も言うんだよね~」

「は? メデアが?」

「私みたいな辺境の田舎星の野蛮人ごときが、あいつらを出し抜こうだなんて

思い上がりも良いもんだ! ってさ、どう思うよ?」

「何の話だ?」

「そろそろ、良いんじゃないですかぁ~!!」

「おい! 聞いているのかライオン!」


焦るキャプテンを尻目に、私はある強い確信を持って辺りに呼び掛けてみた。

一か八かの賭け……いや、そんな望み薄な話しじゃない筈だ、きっと大丈夫!

すると谷の底から強い風が吹き上がると、上空の風景がグニャリと歪んだ。

ご存じ、リフラクターがオフになるときの現象で、そこに現れたのは

可愛らしいペンギンのような流線形のイカした黒い宇宙船ジェームズだ。

ジェームズはこちらにゆっくりと近づいて来ると、くるりと反転して

お尻側を向けると、底部のドアが開きタラップが下がって来た。


「これは……」

「あんまり言って来るんで、フリなのかなと思ってね。もっとやれっていう」

「さっきから一体何の話をしているんだ?」

「まぁ良いや、コイツでこっちの話しは常にメデアさんに行ってたのさ」


ポケットから取り出して見せたのは、あのとき手渡された盗聴器だ。

渡されるときにもキツく言われたよね、思いあがってんじゃないぞ!ってね。

やっぱこれはフリでしょ、フリ。

ややドヤ顔で、盗聴器を見せてるんだけど、キャプテンは呆然としている。

そんな事をしている間にも橋はグラグラと揺れ、崩れ落ちそうだよ。

するとジェームズの中からメデアさんが顔を覗かせ、叫んだ。


「早く! 乗って!」

「そうだ、さっさと乗り込もう、掴まれば全員あの世行きだぞ!」


まごまごしてたら橋が壊れちゃうか、奴らが来ちゃうかもしれない。

カナロアさんはビョーンと腕を伸ばし、キャプテンは華麗に飛び上がり

タラップに登り着くと、船内へとそのまま駆け上がっていく。

空いたスペースに飛び移ろうと、揺れる地面をぐっと蹴ろうとしたとき……

嫌な予感がスッと背筋から首筋を駆け抜けた。


「許さぬ」


冷たい怒りの籠った女王の声が、微かに耳に触れたかと思った瞬間、

私の立っている橋が、あっと言う間に砂ほどの小さな粒になると、

谷に吹く強風に散らされ、完全に消滅してしまった。

これはヤバイ! 女王が例の能力で橋を殺したんだ。

あらゆるものを殺し壊す能力、どうやら調子が悪いわけではないみたい。

殺された橋の上に居た私は、当然踏ん張る地面も無く落っこちるわけだ。

砂嵐に煽られバランスを崩したジェームズとは、どんどん遠く離れていく。

メデアさんはコクピットに戻ったろうし、二人は無事船内に駆け込んだし

たぶん、そのまま飛び立って行けるでしょう。

ここに留まれば、続けてジェームズも殺されかねないもんね。

やはり健在だった女王の能力は、やはりどうしようもなくヤバイやつだ。


「構わず行って! 私なら大丈夫だ!」


落下しつつ、盗聴器に向かって叫んでいたら、視界の端に私と同じように

落下してゆく女王の姿が見える……って、そんな捨て身の行動だったの!?

空気を孕むコートを窄め、空気抵抗の少ない真っ直ぐ真っ逆さまに転身すると

速度を上げて、そのまま急降下していく事にした。

谷底があまりよく見えない中でこんな事するのは、超怖いんだけどね。

やっぱり結構深い谷だ、でもその谷底は有難い事に平らで充分な広さがある。

姿勢を反転させ、着地の衝撃を踏ん張り殺すと、辺りに爆音が鳴り響いた。

そのまま急いで地を蹴り、女王の元へとブッ飛び走る。


 キラキラとした美女が、空から降って来るっていうアレな場面なのに、

超怖い人だと知ってると、男子の夢のシチュエーションって感じは全然しない。

でも、とりあえず今はその後の事は考えないでおこう。

次々起こる仰天展開への耐性は、もう宇宙を生き抜くのに必須能力だよね。

オーライオーライと、外野フライを追いかけるように落下点で手を広げた。

勿論、そんな声は出していないよ。


「下がれ」


女王の声がしたと同時に、無防備だった私は爆風に襲われ吹き飛ばされた。

ったく何だよ、助けてやろうっていうのに……いや、その必要は無かったのか?

女王は何故かゆっくりと、実に安全に静かに地面に降り立った。

一体どういう仕組みになってるんだろう。

でもキャプテンを追いかけず、私と一緒に落っこちて来たって事は、

空を自由に飛んだり出来るってわけではないんだろうね。

それとも、怒りで私の事ゼッタイコロスマンになってるとか?


なんて事を考えてたら、足元にジュっと熱戦が突き刺さった。

それを切っ掛けに次々と熱光線の雨が私目掛けて降り注いでくる。

見上げると数人の兵士達が降下しながら、私にビーム銃を乱射してやがる。

そう言えばこいつら、飛行機からもヒラヒラ飛び降りたりしてたっけね。

今はカナロアさんのアイテムが無いから、奴らってばビーム撃ち放題だよ。


でも、このまま蜂の巣になってやるわけにもいかないからね。

奴らがあっと驚く速度で飛び上がると、尚も撃ち放たれるビームを掻い潜り

真下の1人にドロップキック……というか踏みつける!

踏んでは次の奴に飛び移り、更に次にと1人2人3人、4人5人6人、

7人……あ~惜しいな、もう1人いたら1UPしたのに。

いや、あれって9回だっけ? まぁどうでも良いか。


踏みつけられ気を失った兵士達と、再び谷底に着地。

皆バタバタと地面に倒れていくけど、彼らは凄い鎧を着てるし無事でしょう。

私のキックで受けたダメージ以外では怪我一つしてないし。

寧ろ大丈夫じゃないのは私の方だよね、そっと女王へ向き直ると

それはもう、益々のお冠状態ですよ。当たり前か。

絶世の美女がプンプン怒って睨んでるって状況で、

背筋が凍るような思いをするなんてね、やっぱ死神なんだわこの人。

緊張感が肩を強張らせる、戦うか? どうするか? う~む……

脳をフル回転させて思考する、ここでの最適解は何だ?

怒る死神は、そんなものは待っててくれはしないよね。


 装飾品の宝石が魔法的な光を放ち、衝撃波が私に向かって飛んでくる。

しかし、ちゃんと備えれば、私にはそこまで大した攻撃ではない、

左ストレートパンチを放つと、辺りに強風を放って破壊の波は相殺された。

風に煽られた女王の髪の乱れが、この宇宙の絶対的存在からの綻びにも見える。


「お前は……お前は一体何者だ!」

「私は、あんたの同類だよ」


女王の質問に、私はそう答えたわけなんだけど

ちょっと、この説明は尺取ると思うんで次回にしよう、一旦ブレイクだ。

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