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2-9 アイ ウォント キャンディ

 どうもリスナーの皆さん、「マスクドDJ雷音」だ。

遥々やって来た惑星アモルフォで、やっとやっと見付けましたよ、

囚われのお姫様じゃなくて、宇宙海賊キャプテンワールド。

え? 騙されたのに救出は続行するのかって?

だって私はここを出てかなきゃいけないんだし、ついでに来る?

って聞いたら来るって言うんだから、連れてって良いでしょ。

裏切られたにも関わらず、見事キャプテンを連れ帰ったらさ

流石の宇宙海賊共だって心入れ替えるんじゃないの。

さてさて、恐ろしい力を持った死神アルノルディの目を盗んで、

この星からまんまと逃げ出す大作戦だ。

アルノルディの姿に化けたカナロアさんに付いて行き、

先ずは出口を目指す、とても単純な手なんだけどね。

恐らくこれで、いくらでもその場凌ぎが出来るんじゃないの?

だって、どんな気まぐれも許さなきゃいけないわけなんでしょ。


「女王、一体どちらへ?」

「女王、何かご用命で?」


来る来る、これで何人目だ? この城の中での一番重要な事は、

今女王が何をしているか、そのとき自分は何をするかだからね。

しかし意外なのは、女王と顔を合わすのを避けようとか、

出くわした事を不運に感じている様子が、ほぼ無いんだよね。

思ってた程の恐怖で縛られた集団ってわけでも無いかもしれない。

脱走の邪魔になるようなら、カナロアさんが掌をかざして見せて

脅せば良いやって思ってたもんだから、案外拍子抜けよ。

「所用です、気にせず職務に戻れ」これだけで事は済んじゃうの。


 それと、鎧兜に全身を包んでた時は分からなかったんだけど、

ここにいる連中は全員男、そして超が付く程のイケメン揃い。

綺麗な顔立ちのアイドル系モデル系から、渋いイケオジ系等々

よくもまぁ、ここまで揃えて来たもんだって感じ。

その全員が、甲斐甲斐しく身の回りの世話をし、大いに称え

そして女王にまるで恋をしている、そんな感じの空間なんだ。


いや、女王はお綺麗だけどさ、怖く無ぇのかな?

気分でその命を奪っちゃうのよ? 用済みとなるとすぐに……

私なら、気が休まらなくてハゲちゃうよ。

あ、因みに私のルックスもこの集団に混ざる事に合格

って事で良いのかな? まだマスクの下の素顔は見せてないけど。


 女王がこの城の中を行くのに、突入した時みたいに

テクテク駆けたり、ゴムパッチンでスっ飛ぶ必要は無いよ、

動く廊下やエレベーターが、楽々私達を運んでくれる。

一見古い西洋建築のように見える様々な構成物は、

どれもこれも超高度な科学技術が詰まっているんだろねぇ。


十分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかないってのは

よく言ったもんだよ。

これらが何で動いてるのか、周りの奴に聞いてみたんだけど、

エーテルだよって言って、それ以上の説明が無いわけ。

エーテルって何って聞いても、エーテルはエーテルだと……

もうね、下等な地球人的には全部魔法で動いてるって事で良いかな。

宇宙人や原始人に、電気って何だって根掘り葉掘り聞かれて、

ちゃんと説明するのは、私だって自信無いもんね。


「お待ち下さい」


いよいよ外へといった所で、門の手前の男に呼び止められた。

門番担当の人なのかな? 内側にいるって事は違うかな?

キリっとした鋭い目付きが何とも目に付くイケメンさんだ。

焦らない焦らない、女王の威光の前には彼だって……


「ワールド殿、ライオン殿、お戻り下さい」

「え? いや私は女王に着いて……」

「戯れはこれまでです、カナロア殿も擬態を辞められよ」

「な、何言ってんの、女王本人だよ、どこからどう見てもね、

そんな事言ってると命が危ないよ、早く謝った方が……」

「私にはシーム星人の擬態は通じませんぞ!」


「参ったなあ、ホアリ星人がいらっしゃるとは……仕方ねぇ

これは諦めよう、彼に我々の擬態は通用致しません」

「へ?」


ふにゃふにゃっと女王の擬態を解いてしまうカナロアさん。

ホアリ星人ってのが一体何なのか知らないけど、

口でどうにか誤魔化せるっていうようなレベルじゃなく

シーム星人の擬態を見抜いちゃうわけなのかね。

それか、シーム星人特有の諦めの早さなのかな?

いやでも、ここまで来てそんなアッサリと諦められても

困っちゃうんだけどな。


「賢明な判断です、さあお戻り下さい、この事は……」

「ここまで来て戻るわけないだろっ、そこを退くんだ!」

「ライオン殿!」

「あんた達に手荒な真似はしたくないが、邪魔をするんなら

容赦はしないぞ! またぶん殴られたいか!」


こうなったら、私が死神になるしかない。

脅してでも脱出するっていうのは、当初の予定通りですよ。

この門番をぶっ倒し、門をぶち破ってでも地球に帰るからね。

しかし、この男の目には一切の迷いが無い。

手にした小型端末らしい物をちょちょっと操作すると

城の中を警報器かな? けたたましい音が響いたかと思ったら

ゾロゾロとイケメン兵士達が集まって来た。

この画を切り抜いたら、乙女ゲーのキービジュアルになりそう。


「あなた方を行かせれば、どのみち命はありません!

我らは女王の為ならば決死の覚悟で臨むのみです!」

「ったく、面倒な展開だ……何人集まろうと同じ事だが……

よ~し上等だ、ヘルメットを被る時間はくれてやる。

私にも弾みでって事はあるからな、あまり手加減は期待するなよ!」


「ま、待てライオンっ」

「何?」

「待て、待つんだ」

「この期に及んで……あんたも宇宙一の海賊なんだろっ」


キャラに似合わない静かな制止をしてくるキャプテンの方を向くと、

どうした事か、明らかに顔色が悪い。

そして、そのキャプテンの肩越しに、その後方を見た私も

マスクの下の顔から血の気が引いていくのを感じた。


「このような所で、何を騒いでおるのか」


あ、女王アルノルディ……。

確かに最上階からここまで、スイスイ来れるんだった。

キャプテンはすぐさま床に片膝を着き頭を下げる。

私は呆然と立ち尽くしてしまった。


「何を騒いでおるのか?」


ちょ……ちょっとブレイク。

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