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1-1 ミス ア シング

 どうもリスナーの皆、奈良県が誇るスーパーヒーロー『マスクドDJ雷音』だ。

今私は、皆さんが住む街からずーっとずーっと遠い……

えっと、どれくらい遠いんだろ?

まぁ~めちゃくちゃ遠くだ、何せ見渡す限り闇の世界、

その中を進む、よく分からない妙な物の中にいる。

つまり、謎の乗り物に乗せられ宇宙空間を移動中なわけだ。


「何か言ったか? ライオン」

「いや、別に」


 今話しかけてきた美女?は遥か地球から遠く離れたシーム星の人で、

名前はカナロアさん。

肌が真っ赤でタコみたいに手足が伸び縮みする以外は、我々地球人と同じ

……だと思う。

家畜の血を抜いたり解剖したり、脳に発信機を埋め込もうともしてこないし、

信頼しても良いんじゃないかなって今の所は思ってる。


と言うのも、彼? いや彼女か? の故郷シーム星が、

今とんでもないピンチに陥っているって言うんだ。

何でもシーム星に、遥か彼方から巨大な彗星が飛んで来ていて、

そいつが激突したら、星が壊滅的被害を受けそうだって事で、

この私に助けを求めて来たってわけ。


 シーム星人っていうのは種としての知能が高く、こんな宇宙船を作れるほど

文明が進んでる反面、自分達の限界を超える事に対して、

立ち向かう心を無くしていってしまったらしいんだ。

なのでほぼ全てのシーム星人は、一旦星の外に逃げ出して彗星の激突をやり過ごし

再びその星を復興させていこうって考えらしいんだけど……。

中には変わり者と言うか例外っていうのはいて、あのカナロアさんだけは

彗星の激突を食い止めようと動き出したんだ。


 カナロアさんによると、想定被害はあくまでも憶測によって出されたもの。

そして、環境適応能力に優れたシーム星人以外の生物達の多くは、

彗星激突をやり過ごしたとしても、その後の環境には適応出来ずに

絶滅してしまう可能性が高いと言うんだ。


 カナロアさんの計画はとってもシンプル、宇宙船でその彗星に着陸し

彗星を破壊するという、地球人の私達にとっては何度も映画で見たアレなわけ。

でも何でそれを私が?って疑問はあるよねぇ。

地球の、日本の、奈良県っていう広い宇宙から見たら本当に小さな小さな

地域のヒーローがこんな遥か遠くの大事件に駆り出されてるのか?

それは私も大きな疑問だった。


それに関しては、彼らの技術の粋を尽くした物凄い検索ツールで、

この計画の協力者に最も適した人物を検索したところ、

私がヒットしたかららしいんだ。


意味分かんない? うん、私も。

まぁ、助けを求められればヒーローとして無下には出来ないよねぇ。

それが今、私が宇宙船に乗って宇宙を飛んでいる理由なわけ。

意味分かんないって思うんだろうけど、私が受けた説明ももうこれで全部なので

これ以上は説明のしようが無いっていうわけ。


 脳内で流れるエアロスミスに、学生時代万年英語赤点のナンチャッテ鼻歌を重ね

見た事も無い奇妙奇天烈なデザインの船内を見回していると……。


「ライオン、お待たせしました、彗星の動きを捉えた、そろそろ到着しますぞ」


え? カナロアさんの言葉が変だって?

でもこれは紛れもなく、私の耳に聞こえてきている言葉なんだ。

実はシーム星人とコミュニケーションを取る為に、

私のマスクに彼らが開発した翻訳機が取り付けられているんだけど、

まだまだお互いの言葉を自然言語で翻訳するには情報が不足していて

どうも上手く翻訳出来ていないみたいなんだ。


 そんな事は置いといて、船内中央のモニターらしきものに、

件の彗星が映し出されたんだけど、デカイ! 兎に角デカイ!

こういう滅茶苦茶大きなものって、動いている感じがしないって感覚無い?

これが今も物凄いスピードで移動中で、そのうちどこかの惑星に激突し、

大災害をもたらすだなんて何だか信じられない。


いや、それよりも何よりも気になっちゃうのはこの……何だそのぉ……


「これって、本当に彗星なの?」


そう聞きたくなっちゃうのは、この映し出された彗星とやらの形が、

綺麗な四角錐なの。

言うなれば宇宙に浮かぶ、超巨大ピラミッドって感じ?


「おかしいとは思っていたんだ、正体不明の彗星の接近が

直前になるまで分からないなど本来ありえない事だ。

未発展なテラ人のライオンには分からないだろうが

我が星では、銀河中の惑星、彗星、隕石、全ての軌道を把握している」


私馬鹿にされた?あ、テラ人っていうのは彼らの言葉でいう地球人って事ね。


「見ての通り、あれは恐らく人工物だ」


ですよね~だって全部の面が真っ平なんだもの、

あんなの自然に出来るとは思えない。

きっとどっかの誰かが……って、え? 作られた物?


「ちょっと待って、あんなの誰が作ったの?」

「分からない、しかしあれが人工物であれ何であれ

我が星に向かっているのは確かなのだ。

何者が何の為に、こんなものを作ったのか、

何故我が星に向かって飛んでいるのか、

そしてあそこに着陸して無事で済むかどうかも分からない、

ですが頼むぞライオン」


マジかぁ……。


 カナロアさんの宇宙船は、彗星もとい巨大ピラミッドに着陸すると、

私達二人を降ろし、いよいよ作戦開始と相成った。

ところで、リスナーの中で彗星を破壊した経験あるって人いる? 小惑星は?

隕石は? ディザスターSFの主人公的な経験、ありませんか?

ありませんよね。

私も勿論無いよ、さてどうやったもんなのかねぇ~

そもそもコレ彗星ではないわけだし。


 あ~そうそう、ライオニウム合金で出来たマスクと、

ライオニックファイバーで出来た私の服が、呼吸や有害な宇宙線等

諸々の宇宙での問題をクリアしてくれているので、

私が普通に宇宙空間で活動しちゃってる事に関しては、心配いらないんだよ。


 しかしこの……何だ? 彗星ではなかったコレ?

実際に降り立ってみると何とも不気味だ。

そもそも何で出来てるんだ? 金属のようであり、陶器のようであり

地球人の私なんかの想像を絶する文明や技術を持った何処かの誰かが作ったもの

としか言いようが無いんだけどさ~と、まじまじ観察をしていると……

驚いたね~私達と同じように、ここを歩き回ってる人がいるんだよ。


 全身をメタリックなプロテクターで包み、頭があって手足は2本づつ、

地球人と殆ど変わらない体格だ。

半透明の顔のシールドの向こう側に見えるのは、

こちらを見詰めるキリっとした目、手には拳銃らしいものを持っていて、

私の眉間にガッチリ照準が合っている。


「何者だ!お前達は!」


そして何か、ご機嫌が悪そうなんだ……。

ヤバそうな雰囲気だけど、ここでちょっとブレイク。

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