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2-5 デレッツド

 どうも、リスナーのみなさん、愛の戦士『マスクドDJ雷音』ですよ。

ついにやってきました、死神の星、惑星アモルフォ!

宇宙海賊の母艦アルゴーが囮となっている間に、女王の下に向かって

キャプテンワールドを救出しようと、着陸したジャングルの中を

シーム星人のカナロアさん、宇宙海賊メデアさんとで向かってるとこだ。


女王って言うからには、お城に住んでるって事なのかな?

先頭を進んでいるメデアさんの行く先には、背の高い建物が見える。

緑の大自然の中に、輝く金属的な人工物が聳え立っているんだ。

デカ過ぎてどれくらいの距離にあるのかが、よく分からない。

この樹や草だらけの中が、歩きにくいのを差し引いたとして、

幾ら歩いても歩いても、全然近付いてる気がしてこない。

見付からないようにコッソリ潜入っていうのは、ホント大変なのね。

しかし妙なのは、今いるジャングルがずーっと城まで続いている事。

広大なジャングルの真ん中にポーンと城が突き建って見えるわけ。


「あの城には城下町とか、そういうのは無いわけ?

地方の小国の王ってわけじゃないでしょ? この星の王様だってのに。

これはテラ人的な感覚だと、何か凄い違和感があるんだよね」

「死神の傍で暮らしたがる物好きは、いはしないさ。

いや、アモルフォ人は一部を除き、女王により絶滅させられている。

あの城には女王と数十人の従者、数百人の兵士が住まわされるだけだ」

「全滅って……そんな事して、王と召使だけでやってけるものなの?」

「この星には、工業施設も商業施設も必要無いからな、

女王が必要とするものは宇宙中から、かき集められてくるんだ」

「なるほど、星とか国とか、そんな括りで生きてるわけじゃない

全宇宙を恐怖で支配してる死神様なのねぇ~」


「シーム星でも古来より数多くの物がアモルフォに献上されています。

そうする事で我々は、この世界に存在する事を許されるのだと、

今まで疑問にも思わずにいたんだが、これは理不尽な話しですよね」

「お供え物感覚? いやもっと理不尽か、死神様なんだしねぇ」

「しかし、その搾取の度合が、それほどでも無いというのは意外だ。

全宇宙から1000人に満たない者を行かす程度の物を搔き集める、

その程度だったら、この伝統が見過ごされ、常態化出来るわけです」


リフラクターを使って透明人間になりながら、こうして普通に

後をついて行けたり、会話が出来るのが自分でも不思議なんだけど、

目っていうのは、何だかんだ慣れてくもんなんだ。

光学迷彩が起こす周囲の風景との微妙な歪みから、

そこに誰がいるか、だんだん分かって来るもんなんだよ。

でも、じっと止まられると、かなり分からなくなるんだけどね。


「って、何で急に止まるの」

「しーっ……そのまま動くな」


え、何かヤバイ状況ですか?

近くに何かいるとか? 透明になってても気を付けなきゃいけない

それって、もしかして……結構マズイ事態?

固唾を飲みながら辺りの気配を探ってみるんだけど、駄目だ。

そこら中に大きいもの小さいもの、生き物の気配だらけで、

全く意味を成さない。

死神の星ってイメージとは裏腹に、何て生命力に溢れてるんだ。


「姿を現せ、侵入者よ」


頭上からエコーがかった男の大きな声がしたかと思うと、

強風を巻き起こしながら、巨大な影が辺りを覆った。

驚いた生き物達が、蜘蛛の子散らすように飛び去っていく。

見上げるとイトマキエイみたいな、ひし形で灰色の全翼機?

コイツは、前に会った事もあるよ、アモルフォ軍の戦闘機だ。

どうしよう、どうしたら良いんだろ……メデアさんは

このまま姿を現さずに、やり過ごすつもりなのかな?

じっと動かず、姿を隠したままだ。


「……妙な反応があったと思ったが、マカイロでもいたか」


おや? 向こうはまだこちらを完全に見付けたわけじゃないのか。

てか、そういう声はスピーカーに乗せちゃ駄目だろ。

しかし、これなら何とかやり過ごす事が出来そ……


「まあ良い、念のため焼き払っておけ」


って、ちょっと待ってよ! え!? 焼き払うって何?

機体の前方に赤い発光体が発現して、ぐんぐん巨大化していく。

その光が現れるや、辺りの空気が一気に乾燥していくのが分かった。

あれよあれよと光の玉は大きくなって、こちらに飛んで来る!

ええぃままよ!!


「ソオラァァァ!!」


居ても立っても居られず、飛び出し光の玉を彼方へ蹴り飛ばした。

すると、すぐさま戦闘機の底が開き、中に人影が見えたと思ったら

そこから続々と兵士達が降下してきた。

2、4、6……全部で10人か、ふわりふわりと枯葉が舞うように

10人がバラバラに、妙な軌道を描きながら降りて来ると、

着地音も無く静かに私は取り囲まれてしまった。

全身を覆うメタリックグレーと淡い紫のツートンカラーの鎧から、

まるでロボットのような印象を受ける連中だ。

それぞれ手には1m程の銃剣と思わしき武器を携帯している。


そもそも、危なっかしい火の玉をぶっ放して来たのは向こうだし、

何も遠慮する事は無い、本来はコッソリ潜入なんかするよりも、

こういうのの方が、私には合ってるんですよ。

もうとっくに戦闘には突入してるんだ、ぼーっとしてる方が悪い!

一番近くにいた奴の懐に飛び込み、ボディブローを叩きこむ。

あ、勿論出来うる限りの手加減をしてるよ。


全員の銃口だか切っ先だかが、私の動きを追っかけてるんで、

すかさず腹に一撃入れた1人を担いで、向き直り盾にした。

しかし連中は、仲間の状態には構わずビーム砲を乱射してきやがった。

なるほど、こいつはよく出来た盾だ……いや鎧だ。

ビームの直撃を見事に跳ね返している。

尚も連射されるビームを、そいつの鎧を使ってやり過ごすうちに

ちょっと良い事思い付いちゃった。


「そりゃぁあああ!!」

「うあっ」


タイミングを計って担いでる兵士を、バットのようにスイングして

ビームを打ち返してやった。

勿論、連中の着ている鎧もビームを跳ね返すんで無傷なんだけど

跳弾からの跳弾からの跳弾が、良い目暗ましになったようだ。

その隙は逃さないよ! そのまま掴んでる兵隊を振り回し

1人、2人、3人、4人と殴り付けていく。

5人、6人、7人……


「ん?」


7人目のそいつは、違い降り下ろす兵士を紙一重で交わすと、

素早く、深く体制を下げた刹那、銃剣の刃を振り上げて来た!

こいつら、やはり仲間の身を何とも思っちゃいないのか

振り回してる兵士もろとも、私を斬り裂こうとしてくる。

気の毒な目に合ってもらった兵士を、残りの健在な他の兵に投げつけ、

私も、その太刀筋から体を逸らした。

背後では、奴の発した斬撃が木々を斬り裂く轟音が響いている。

おいおい、ビームより剣の方が恐ろしい武器なのかよ。


「あんたは他の奴とは随分違うようだが、部隊長か何か?

だったら鎧のカラーを変えるなり、角を付けるなりして……」

「はぁぁあああ!!」


おいおい、そりゃ面白くないだろうけど最後まで言わせてよっ

なんて思いは通じる筈無いよね、仕方ない。

降り下ろされる刃を指で摘み、フィンガースナップをするように

つねり折ってやった。


「ば、化け物かっ」

「残りはあんた1人だし、ご自慢の武器も悪いがその有様、

もう諦めて降参したらどうだ?」

「降参するのは、お前の方だ」

「まだそんな事をって、え?」


急に、妙な強がりを始めたなと思ったんだけど、そうじゃなかった。

辺りの風景が歪んだ事に気付いたときには、既に取り囲まれていた。

いつの間にか、リフラクターで姿を隠していた兵士達が、

ここに集結していたんだ。

ざっと見るに、10か20……いや40人はいるかもしれない。

勿論、ここで全員ぶっ飛ばしても良いんだけど……


「ライオン……」


カナロアさん、メデアさんも銃剣を突き付けられ捉えられている。

これは、やっばいなぁ~。

マスクの下の顔にタラリと汗が滴り落ちる。

尚続々と姿を現す兵士達、そして辺りを暗い影だらけにする

不気味な航空機の群が上空を覆いつくそうとしている。

あわわ……ちょっとブレイク。

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