プロローグ
「今週も1時間のお付き合い有難う御座いました~! じゃあ、また会おうぜ」
いつもの言葉で、マイクのフェーダーを下ろし、BGMのフェーダーを上げる。
モニターのタイムが22時59分を表示し、生放送は今夜も無事終了だ。
ガラスの向こうの商店街を行く、お勤め帰りの皆さんが手を振り、
こちらもサテライトスタジオの中から、手を振り返し会釈で応える。
黒いトレンチコートに、ライオン顔の黒いマスク、
ローカルヒーロー『マスクドDJ雷音』としての公開放送も
今じゃすっかり水曜夜のランドマークとして認知されて、
商店街を行く皆さんに受け入れられているようで、嬉しい限りだ。
番組に送られてきたメッセージを再び読み返し、後片付けを済ませ、
提出書類を事務所のボックスに投函し、今夜もスタジオを後にした。
晩秋の夜風が、テンション冷めきらない体に心地良い。
そろそろトレンチコートを着るのが苦にならない季節が来たんだなぁと
少し嬉しく思いながらの帰り道……
商店街のアーケードを抜けた所で、とんでもない物を見たんだ。
眩しい光を放つ巨大な物体が、すぐ頭上までの高さに降りて来るんだよ。