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スウェーデンという経験  作者: 泰平
4/10

短編連載(4)

泰平タイヘイと申します。

投稿1弾は、大学生時代の留学経験を基に書いたフィクションです。


4話目は、スウェーデンの冬と雨について...



僕自身は書きながら深刻になりなりすぎる気がございますが、読者さんには、サーと読み流していただいて、面白いと言っていただける方がいれば当分連載を続けたいと思います。

 スウェーデンに来る留学生の大半は、 留学生部 “Exchange Studies Department” に所属し、留学生用の授業、スウェーデン語や国際関係論などを受けることになっている。

 私は一般の授業ではなく、留学生用の授業のみを受けていたから、大学へ行っても、スウェーデン人の学生と授業で出会うことはほとんどなかった。

 だから、同じ寮に住む留学生はそのままクラスメイトという場合がほとんどだった。そのせいもあって、クラスメイトでもある留学生同士は自然と仲良くなっていく。

 はじめに言ったように、私は特にメキシコから来た学生と気が合い、授業も一緒だったので、毎週様々な予定を一緒に立てた。

 お互いの国の料理を作りあい、政治や文化について話し合った。

 スウェーデンを批判しあうこともあった。


"How shy Swedish!" 「なんて内向的なんだ」って。


 国の名前、有名な観光名所を知っているだけの国は多くあるが、実際にその国から来た学生と話しをすると全く自分の想像と違うことばかりだった。観光名所の裏話は面白かった。(チュニジアでサハラの遺跡に立ち小便をして、射殺されたイギリス人がいるとか...)


 皆言いたい放題だったのが特によかった。日本のオーサカというところは危険なんだ、とか。


 留学生活が始まって1か月経ち、北欧の生活にもかなり慣れてくるころ、憂鬱な時期が始まる。時刻が一時間ずれ、夏時間が終わった日から、何となく寒気がするようになった。

 私は同じ場所にいるのに、時間が1時間ズレる(!?)なんて今まで経験したことがなかったから、軽いパニックに襲われた。

 日照時間が日に日に短くなり、曇りがちになり、雨が増え、4時を過ぎると完全に日が沈む日が多くなった。


 到着したころの夏の陽気が一転、街の空気が突然、ひんやりと変わった。何も気温の話をしているだけじゃない。街の様子も変わったんだ。

 スウェーデンが「冬時間」に入ったころ、スウェーデン語の授業が夕方だったこともあり、私はわざわざ朝早く起きなくて良くなった。午後の2時、3時までごろごろベットの上で暇をつぶし、天気のいい日も午前中は寮の部屋の中にこもっていた。


 10月も半ばを過ぎると、日が出でいる間に活動できる時間が極端に短くなり、目を覚ますと夕暮れ「もう暗いな」と思うことが多くなった。


 北ヨーロッパの長く暗い冬は、身体にも精神にもじわじわと影響を及ぼしてくる。

 特に年中天候に大きな変化なく、温かい国からきたメキシコなどのラテンアメリカ人の留学生にとってスウェーデンの冬は非常に酷なものだったようだ。初めは「雪に初めて触った」とはしゃいでいた彼らも、日に日に以前の活力を失っていった。


 スウェーデン人は夜が長くなると香り付きのキャンドルを買って部屋の中に置きまくる。後は、リラックス効果のある、ありとあらゆる小物を部屋に配置する。IKEAのリラクゼーション品目の多さを見れば、どれだけ「リラクゼーション」効果がスウェーデンにおいて求めているか、一目瞭然だろう。

 私自身、日の落ちている時間が長くなると、スーパーなどに行ってキャンドルを買い、部屋をできる限り明るく保つようにしていた。

 スウェーデン人を初めとする北欧に昔から住む人たちは冬の時期になると、鬱などの精神の病にかかりやすくなることをよく心得ており、その対処法をよく知っているようだ。


 あるスウェーデン人学生はキャンドルの火のリラックス効果や、ストレスケアの方法なについて3時間は話せると言っていたが、きっとあれは本当の話だったんだろう。


 実際に、冬の時期にスウェーデン人の家族を訪ねたことがあったが(それも授業の一環だった)、彼らは部屋の中をできるだけ明るく温かい雰囲気で保つように心がけていた。その家族の家は、敷地内に入った瞬間から、かすかにラベンダーの香りがしていた。


 街では8月が終わるとすぐ雨が降り始め、9月の初めの1週間ほどは細かい雨が降り続く。

 雨と晴れは、感覚的には 8:2 くらいの比になる。驚くべきことだが、9月から翌年の4, 5月まで、寮の前の道路の同じくぼみに、ずっと水たまりがあるんだ。


 同じ形を保って、汚れ具合もずっと同じだった気がする。

 何気なく周りを見渡すとスウェーデンの雨の多さを物語る様々な印に気が付く。


 私にとって、秋から冬にかけてつらいのは日照時間が短くなることだけではなかった。

 この雨の割合の高さ気持ちを重くさせた。


 折り畳み傘を日本から持ってたが、これはほとんど使い物にならなかった。雨の日に風が吹くと、折り畳み傘なんてひとたまりもない。なにより、雨が細かいので、帽子やフードのほうが効率よく浸水を防げた。


 ただ、ヨーロッパで経験する雨は、日本の雨に比べるとずいぶん優しくジェントルに思えた。

 雨のが1~2か月ほとんど途切れなく降るのに、住む人を見ると、傘を持ち歩く習慣はあまりないようだった。


“It’s dangerous and not so useful to carry.” 「傘は危ないし、持ち歩くほど便利とは言えないね。」と一人のスウェーデン人は言った。


 傘一本とってみても、日本とスウェーデンでは認識が全く異なることがわかる。

連載にしましたが、毎日2千字くらい書いて投稿していきます。

全体で、約2万字ほどの一片の短編小説にする予定です。


泰平

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