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キ◯ガイな科学者は人造人間を作りだした

作者: チャンドラ

「フハハハハハ! やった! ついにやったぞ!」

 俺は一人研究室で狂ったように笑った。

 俺の名前は機智該(きちがい)。日本最高峰の大学院に通う今年で23歳にある。トレードマークは白い髪といつもきている白い白衣。ちなみに髪は自分で染め、白衣はアマゾンで注文した。

 俺は歴史に名を残すだろうものすごい研究を行った。自慢じゃないが俺は天才だ。今まで数々の学会発表もしてきたし、数々の発明品も生み出してきた。


「うっさいわねぇ。なんなの? 一体」

 眠そうな目をこすりながら、文句を言ってきたのは同じ研究室に所属している炉李紺ろりこん。まぁ、この研究室には俺と紺の二人しかいないのだが。

 身長は幼女かというくらいとても低い。髪こそ金髪だが、見た目も中学生と間違われてもおかしくないくらいである。

 しかし特筆すべきはそこではない。こいつの年齢である。現在、十六歳である。本来ならば高校生である。この俺が認めるほど聡明な頭脳の持ち主で飛び級してきたらしい。


「起きたのか。紺」

「あんたがうるさく騒ぐから目が覚めたんでしょうか」

「ふん......歴史が生まれ変わることをしてしまったのだから騒いでしまうのも無理はないというものだ」

 すると、不満そうな顔をしながら紺は俺に近づいてきた。すっぴんで髪はボサボサだが、普通にいい匂いがする。というかよく見るとこいつの服装、パジャマである。うさぎのパジャマ。

「あれがあんたの研究?」

 紺は巨大なカプセルの中の培養液に浸っている人間を指差した。その人間は一糸まとわぬ姿をしており、でるところはしっかり出て、しまるところはしっかりと引き締まっている。まさに美少女。いや......

「ああ。俺はついに開発したんだ。人造人間を!」

「ふーん......なかなかやるじゃない。一体、どうやって作ったの?」

「そうか、聞きたいか......」


 俺は研究を始めることになった事の顛末を紺に話し始めた。

 一ヶ月ほど前、俺はとある女性と飲みに言った。以前から、俺はその女性に恋心を抱いており、意を決し、飲みに誘うことに成功したのである。

 彼女の名前は高根華子たかねはなこ。石原さ◯みを彷彿とさせるような白い肌とふっくりとした唇が特徴のとても美しい女性だった。

 俺は少し高めのお店に彼女を連れて行った。特許やら研究でそれなりに金を持ってるから全然痛手ではなかった。

 飲み会の前に備えて数々の恋愛作法所を読んでおいた。

 そして、来る飲み会。

「該くん。こんな高そうな店、本当に大丈夫なの?」

「ああ、問題ない。俺、ここよく使うんだ」

 常に笑顔を絶やさずに話した。ここまでは順調だった。

「それじゃ飲み物頼もうかな。私、レモンサワーで」

「それじゃ、俺は生ビールにしようかな」

 店員に頼むとすぐにお酒が運ばれてきた。

 次は? もちろん乾杯だろう。本に書いてあった。できるだけ盛り上げるために笑いを取り入れるべきだと。

 俺はそれに従おうとした。

「それじゃ......乾杯する?」

 色気が感じられる艶っぽい表情で華子はそう訊いた。

「ああ、それじゃ......」

 よし、笑いを取るぞ!

「君の瞳におっぱい」


 そう言うと10秒ほど沈黙が続いた。華子はなんとも言えない表情になりそして、

「ふざけないで!」

 レモンサワーを顔にぶっかけられた。炭酸のしゅわしゅわが顔に感じられた。顔がベトベトするし、目に入って痛い。すっぱいレモンの匂いが瞬く間に広がった。

「該くんがこんな下品な人だなんて思わなかった! 私、帰る!」

 華子はバッグを取ると、あっという間に店から出て行った。他のお客さんの視線が俺たちに集まった。あまりに突然の出来事に俺はなにもできず、こう呟いた。

「オーマイガイ......」

 俺の失恋話を聞き終えると紺は呆れたような顔をした。

「いや、それどう考えてもアンタが悪いよね?」

「はぁ? どこがだよ! 俺はあくまで笑いを取ろうとだな」

 すると、紺は俺の話を遮った。

「はいはい。それで、さっきのがどうあんたの研究と繋がっていくの?」

「実はな、華子が帰った後に長い髪の毛が店の床に落ちてたんだ。それを持って帰ってな......」

「は?」

 突然、紺の目が大きくなった。

「髪の毛に含まれている遺伝子情報を使って、華子そっくりの人間を作れないか研究したんだ」

 すると、紺はこう言った。

「きも」

「きもいとはなんだ! 失恋のパワーを使ってこんな偉大な研究を行ったんだぞ!」

「しかし、振られた人そっくりの人間を作るってのはねぇ......」

 俺は目を閉じ、紺に力説を始めた。

「人間誰しも好きな人と結ばれたい。そういう欲望があるだろう。完全にじゃないが、俺の研究はその欲望を充すことができるのさ。これぞまさに恋愛の歴史を変える大発明」

 自信満々にそう言うと、紺はこんな質問を投げかけた。

「でもさ、必ず人造人間が自分を好きになるとは限らなくない?」

「普通の人間ならな。遺伝子情報を操作することで刷り込みが行われるようにした。通常の刷り込みは最初に見たものを親と認識するのに対して俺のは最初に見たものを恋人と認識することができるんだ。すごいだろ?」

「そ、そうなの......」

 なぜか紺は不機嫌そうな顔になった。

「ああ。早速、人造人間を動かしてやるか! 他の俺好みの人の髪も採集してハーレムを形成してやるぞー! いやー楽しみになってキタァ! リアルなろう系主人公になれるんだなぁ」

「さすが、きちがい......」

 それはどっちの意味だ? そう聞きたかったが上機嫌なのでほっとく事にした。

「まった。ちょっと人造人間を動かす前にちょっとこれ食べてみて」

 なにやら紺は白衣のポケットからキャンディを取り出した。渦巻き型だがなぜか色が黒い。

「これは?」

「イケメンキャンディよ。食べるとイケメンになれるの」

「まじか! 食べる!」

 パクッと口に入れるととても味は苦かった。そしてあっという間にお腹が痛くなった。

「なんだこれ! ちょっとトイレに言ってくる!」

「あれれ〜 おかしいな。失敗しちゃったな」


 俺はトイレに走りながら思った。あいつ、騙しやがったな。

 二十分後、俺はトイレから戻ってきた。ちなみに顔は全く変わってなかった。

「あら、おかえりなさい」

「お前なぁ......まぁ、今はそれどころじゃない。早速、スイッチオン!」

 俺はボタンを押し、人造人間を起動させた。カプセルの蓋が空き、培養液がドバーと床に垂れた。後で掃除しないとなぁ。

 高根華子そっくりの人造人間はゆっくりと目を開けた。全裸でとてもそそられる。

「俺は機智該。君の恋人だ」

「......」

 人造人間は言葉を発しなかった。俺は彼女に体に触れようとした。すると、

「近づくな」

 思いっきり平手でビンタをされた。思いっきり後ろに吹っ飛んだ。

「イタァー! お、お前! 一体全体何をするんだ!」

 すると、無表情のまま人造人間はこう言った。

「お前を敵と認識。早速、削除する」

「なん......だと......」

 失敗したのか? この俺が遺伝子情報の操作を。完璧だと思ったのに。

「ごめーん。該。さっきちょっと私もちょっと試しに遺伝子情報操作してみたらこうなったみたいね」

 なんだと? トイレに行っている間に勝手に人造人間を弄りやがったのか......このガキィ!

「お前は私の敵。速攻デリートする」

 走って人造人間が俺に迫ってきた。おお! 全裸の美人が俺に近づいてきた。 いや、それよりも、殺られる!

 俺は研究室から飛び出し、逃げた。

「紺ー! 後で覚えてるよ!」

「待て! このキチガイ男がぁ!」

 全裸の人造人間が血相を変えて追いかけてきた。

 そんなわけで俺は一日中、人造人間と鬼ごっこする羽目になるのだった。



 

 





 

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