にヤ顔
見返すと変なところ多数。よくあると思います。それなりに改稿していきます。
あのあと満足するまでいちゃいちゃした。とは言っても手を繋いでキスをしたくらいだ。それぞれねだったのは彼女のほうからだったのが意外だった。
どうも色々吹っ切れた結果、スキンシップを遠慮するのはやめたらしい。俺としても嬉しい限りだ。
まずは生活基盤を整えなければならない。確固たる意思でコアに触れる。そして「創造」を選択し、コーヒー牛乳を二つ創造する。一つをメルディへ。目がしいたけになっている。
ここへ来てからメルディの表情が色々見られるな。今までゲーム内では笑顔だけ、OAISの時は殆ど真顔でたまに呆れた目と冷たい目といった全3種だった。メルディ笑顔コレクションはシークレットの方が多いらしい。
二人とも腰に手を当ててぐいっとビンを傾ける。至福の一時。メルディも満足そうだ。
俺も彼女もだぶっとした寝巻きに着替えている。それにしても野暮ったい服すら似合うとは。被っているタオルから覗く、湿った髪も艶かしい。
…そうじゃない。今は生活基盤だ。だがお風呂に必要なものをだけを作るはずが、欲しいものがぽんぽん作れるからつい色々作ってしまった。
お風呂にお湯やら備品やらで1159。これに先ほどのコーヒー牛乳が15*2。お風呂の加工に10。残り魔素1。家計の火炎車が大炎上のち爆散して周囲に延焼する勢いだ。夫の無駄遣いにキレる妻の気持ちが良く分かる。
夫婦円満の秘訣は置いておき、作製物と消費魔素の関係から素材の種類が少ないものほど単価が安く、多いと割り高になるとわかった。
それから、加工食品も再現して創れる。きっかけは色々作っているときにビールが飲みたいと思った時のこと。
メニューに「創造(!)」と、(!)マークが現れた。他の項目を開いているにも関わらずリストに追加されたのだ。この時になってやっと「色々イメージ→全てリストに追加→選択してまとめて作製」ができることに気付いた。
それまで「一つ一つイメージ→リストに追加→作製」とちまちまやっていた。思わず肩を落としたが、メルディに撫でて貰ったのですぐに浮上できた。
ビールの分類も創造だった。生成ではなく創造なのは、原料の大部分が生命だからだろうか。ぱっと見、創造の魔素消費率が高めなのは共通と。
ただし、今はこれらより切実な問題点がある。
「超お腹空いた…」
色々磨り減ったこととリヴァースしてしまったことが相乗効果を生んだ。おにぎり消費1説をうち立てて桃源郷を目指す。
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おにぎり(味付け無し)/10
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掘っ立ての仮設小屋に縋るだけ無駄だという教訓を得た。どうせすぐ倒れる。素直に翌日を待つが吉、ここへ来てからかなり時間は経ったはず。人間素直が一番とはよく言ったものだ。
とメルディに伝え、まったりとした時間を壁に寄りかかって過ごす。ビールを飲もうとしたら空きっ腹には良くないと止められた。飲みたかったから素直になっただけなのに、納得がいかない。
仕方が無いのでビールは諦めて夕飯談義を開催する。メルディは初めての食事ということで、出会って以来最高に真剣な表情だった。
「ご飯何にしようか。道具が無いから完成品を作ることになるけど」
「そうですね…。私はお肉が食べて見たいです。ハンバーグを所望します」
「いいね! となるとスープも欲しいな。卵スープでどうかな」
「食べたことが無いのでわかりませんよ。良く行くお店であなたが注文していたのは見ていましたが」
「よし決定。ハンバーグとライスとスープセットだ! 寝る前に食べるものじゃない気がするけど」
「三大欲求には抗えないのです」
「無駄な抵抗をしないとも言う。あ、オニオンソースもつけよう」
「私にもつけてくださいね」
「違う味にして食べさせ合いっこというのもございますが?」
「…いえ、同じ味でも食べさせ合いはできます」
「気付いてしまわれたか」
そうこう半ばふざけ始めた時。ふいにフォン、と小さな音がした。二人でコアに向かう。
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ダンジョン:無名
残存魔素 1221
メニュー
→ 生成
創造
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よしよし、ちゃんと入っている。まるで親からの仕送りを確認する気分だ。
――そうか。両親より先に死んでしまったのか、俺は。OAISを買った時の借金は返しきったが、親孝行と言えることは一度だけグアム旅行を贈ったくらいしかしていない。
このコアの力を使えば、いつか両親の元へ行けるだろうか。親不孝な俺を、謝らせて貰えるのだろうか。俺は――
「さっきから固まっていますが、どうしましたか?」
「いや、なんでもないよ、メルディ」
「そうですか」
「ああ。さて、ご飯だけど…」
「そういえば、あなた」
「ん?」
「あなたは、私と結婚してくれるのですよね?」
「もちろん。…しまった。ごめん、ちゃんと言っていなかったね」
「いえ、そうではないのです。そうでもありますが、その前にすることがありました」
「結婚の前にすること? 婚姻届とか」
「どこに出すんですか。ちなみに指輪でもありませんよ」
「頑張って立派な指輪を作るよ」
「期待しています。日常的に付けられるものにしてくださいね。…ではなく。挨拶です」
「挨拶?」
「はい。まだご両親にきちんと挨拶をしていませんから。事後承諾になってしまいますが、そこは納得していただきましょう」
「――――」
「いっそのことでき婚にして孫の顔見せまで兼ねてしまいましょうか。説明と説得はお願いしますね?」
「…メルディ」
「はい」
「任せろ」
「はい」
まだまだ、メルディには敵わないな。
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木のテーブルと椅子を作り、ハンバーグセットを食す。いつも行く飲食店と変わらない味だった。俺の記憶から再現されているのだろうか。
思い返せばコーヒー牛乳も馴染みのある味に感じる。食べさせっこしたものは一口目は味がなく、二口目から徐々に絶品グルメ料理へと変貌していった。
さてまだ魔素には余裕がある。床で寝るのはつらいし、ベッドを作ろうということになった。俺はコアを操作していく。
木も生命のはずだが、ベッドは生成の項目にあった。創造との区切りが分かりにくい。テーブルと椅子の時に気付かなかったのは、甘い雰囲気とハンバーグのことで頭がいっぱいだったからだ。
思考が散漫するのは悪い癖だ。今はとにかくベッドを用意しよう。リストに追加され、サイズ選択に移る。
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シングル/300
ダブル/400
ツイン/500
クイーン/500
キング/550
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ツインがシングル二個置いただけなのに大特価だ。クイーンやキングサイズには憧れもロマンもあるけれど、今回はコスパのツインが最適だろう。
同衾は悶えて眠れない自信がある。何故ならば俺は童貞だから。妄想力だけは高パラメータな職だ。初夜やらなんやらが頭を埋め尽くしてしまうに違いない。
確かに互いの気持ちを確認しあったが、まだ性急すぎるように思う。今回はとりあえずツインベッドを…
選択しようとした時、右隣から割り込んできた柔らかいものに操作を奪われた。突然のことに驚き反応できずにいると、カーソルはキングサイズへと自動的に合わさり、サンプルが表示される。
背もたれや縁などが魔法のように加工されて、余り主張しないが豪奢な装飾になっていく過程を呆然と見守る。
天蓋の支柱が伸び、薄い布がたおやかに流れ落ちるベッドが完成し――コアルームの南東の角、風呂場へ続く扉を挟んだ奥にどんと現れた。
コアの強奪劇は約10秒。口を空けたまま一瞬の流れの元凶に視線を下ろすと。
彼女は顔を真っ赤に火照らせながら、にやけたしたり顔で俺を見ていた。
……なんだか像たちに見られているようで落ち着かなかったので普通に寝ました。自室を作ろうと固く誓う。
書くにつれてジャンルが合っているのが不安になってきました。あらすじなども見直す予定です。