8話 ストーカー 2
「………」
今の私は顔が死んでいることだろう。
あんなことがあれば………
写真と手紙は鞄の中だ。家に帰って捨てるつもり。
「はぁ……」
一人で校門を通る。
「お疲れ様」
「え?」
突然声をかけられた。
「優雅君……」
そこには、帰ったはずの優雅君がいた。
彼の顔を見ると、自然と笑顔になれる。
「帰ったんじゃなかったの?」
「優理を待っていた」
嬉しい。委員会がそんなに長くなかったとはいえ、待っててくれたんだ。
「ありがとう。帰ろっか」
「ああ」
彼にこの事を相談していいのかな。誰がしているかも分からないこのストーカーのことを。
二人並んで歩いていると、突然優雅君が止まる。
「優理」
「何?」
隣を見ると、真剣な顔をした彼がいる。
「何かあったのか?」
ドクン。私の心臓が跳ねた。
「どうしてそう思ったの?」
微笑んで聞く。
「いつものお前らしくないからだ」
ああ、本当に優雅君は私をよく見てるんだなって思う。
「まだ付き合って2週間ちょいなのに、私のこと全てを見られてるみたい」
「そんなことはないよ。ただ、何か悩んでいるのなら俺に相談してほしい。力になれるかは別として、俺はお前のことが好きだから、好きな子が困ってるなら助けたい。」
「優雅君………」
もう、そんなこと言われたら………
「実はね。テストが終わってから……ストーカーされてるの」
「ストーカーか。誰にされているか分からないよな?」
「うん。それでね、さっき靴箱にこれが………」
そう言い私は写真と手紙を見せる。
「なるほど。こいつはお前のことをよく監視してるらしいな。しかも住所まで知ってるのか」
俺の見ている写真には、優理の家の近くの風景が写されている。
ということは、こいつは優理の家の近くまでわざわざ来ているのだ。
「朝視線を感じるの。見られているような……」
「なるほど……もしかして今の会話も聞かれてる?」
「それはないと思う。もう帰ったんじゃないかな」
「俺みたいに待っている可能性は?」
「どうだろう……」
俺は小声で言う。
「俺が言いたいのは、もしストーカーが同じクラスなら、優理が委員長ってのを知ってるはずだから、俺のように待ってる可能性が高いってことだ」
「違うクラスでも待ってる可能性は?」
「あるかもしれないが、ほとんど無いと思う。おそらく自分より早く帰ったと思うだろうな」
「じゃあ、今も私たちのこと……見てる?」
「同じクラスなら、可能性はある。とにかく今はキョロキョロせずまっすぐ帰ってくれ。スマホを電話状態にして、スピーカーオンにしてポケットに入れてくれ」
「分かった」
俺と別れた後、もしかしたらストーカーが現れる可能性があるからな。
優理は俺の言った通りにスマホで電話をかけた。
俺は電話にでて、ポケットに入れた。
「じゃあ、また明日ね」
「ああ。じゃあな」
いつもの別れ道で、俺たちは別れる。
さあ、来るかな?
「………」
優雅君の作戦は私も分かった。
彼、学力は真ん中だけど知性は高いな。
とっさに思いついたし。
とにかくまっすぐ帰ろう
「何も聞こえないな」
俺は優理と別れた後、スマホを耳に近づけたまま帰っている。
「桐生優雅」
「っ!?」
突然名前を呼ばれ、驚いた。
振り返るとそこには、俺と同じ制服を着て、帽子とマスクを付けている男がいた。
なるほど、俺狙いか。
「お前誰?」
とりあえず聞いてみる。
「聞かれて答えると思うか?」
「いや、思わない」
流石に答えないよな。顔面完全に誰か分からないようにしてるしさ。
「それで、俺に何の用?」
「お前を殺す。僕の嫁を誑かしやがって!」
誑かすって。普通に付き合ってるんだけどな……
てか、嫁発言ワロタ。
「ともかく、殺す!」
そう言い、ポケットからナイフを取り出し、俺に向かって走って来た。
やれやれ、面倒くさいな。
次回 VSストーカー!?