5話 テス勉彼女と頑張ります 2
「ここは、こうして、次は代入するの」
「お、おお」
「そうそう、次はここで展開」
「お、おお」
俺達は今、来週の中間テストに向けての勉強をしている。
まあほとんど俺のための勉強だけど。
優理大先生の教え方ははっきり言ってクソ分かりやすい。
だが俺は、完全に集中できていない。
何故なら
距離が近いデス
俺の真横で教えてくれているんだけどさ、すっごい近いのよ。
いい匂いするしさ、たまに肩や手が触れ合っちゃうしさ、時に優理が髪の毛を耳にかけちゃうしさ、緊張しない方が無理な話だ。
「優雅君、ここまで理解できた?」
「あ、ああ」
「じゃあちょっと休憩しよっか」
「分かった」
「はあ~疲れた~」
そう言い彼女は両手を上に伸ばす
「ごめんな。俺の為に勉強付き合ってもらって」
来週テストなのに……
「いいのいいの。それに優雅君に赤点取られちゃうとあんまり一緒に過ごせないでしょ? 」
そう、桜峰高校はテストで赤点を取ると、赤点教科の補習がある。一年の中間テストは8科目だから、全部赤点だと土日も来る羽目になる。
優理が俺の為に頑張ってくれているんだ。俺も集中して勉強しよう。
「そろそろ再開する?」
「ああ。頼む」
「任せて!」
俺は一日中勉強を教えてもらった。
昼ご飯まで作ってもらった。
ほんとに有難い。
外は夕日が沈みかけており、綺麗なスカーレットスカイとなっている。
「明日も……来てほしいな」
「え?」
荷物を片付けている時、不意に放たれた言葉。
カーテンの隙間から漏れる光が、彼女を照らし、俺を照らす。
夕日の影響かそうでないかは分からないが、彼女の顔は赤みを帯びており、可愛らしい。
「勉強を教えるってことはさ、君と……優雅君と一緒の時間を過ごしていけるってことでしょ? それがデートじゃなくて勉強だとしても、私は君を一番近くで見ていたいな」
「優理……」
「優雅君のこと、今日という1日で少しは理解できたと思う。」
「それは嬉しいな」
「だから、明日は君の違うところを見せて?」
彼女の微笑みに、俺は見惚れてしまう。
全てを優しく包みこんでしまうようなその微笑みに。
「断る理由なんてないよ」
「え?」
「俺なんかの為にわざわざテスト前の最後の土日使ってくれてるんだ。断る理由はない」
「じゃあ!」
「ああ。明日も頼む。むしろ来させてください」
「勿論! ずっといていいくらいだよ!」
そう言って俺に抱き付いてくる
そして俺の方を見上げる
「あとさ、俺なんかとか言わないの! 私の自慢の彼氏なんだから」
「はは、ごめん」
こういうことでも気にかけてくれる。
俺はそんな優理が好きだ。
最初はまともに付き合うとか無理だと思っていたが、今はそんな思いは無い。
元々二次元が好きな俺だが、彼女と過ごしてからは三次元も悪くないなと思い始めた。
アニメ、漫画、ゲーム、ラノベ。この4つをこよなく愛している俺だが、最近はあまり手をつけていない。
彼女の体はとても柔らかく、ちょっと力を込めればすぐに壊れそうだ。
髪が長いのと、身長差のために、俺の両手には彼女の髪の感触もする。
凄くさらさらで気持ちいい。
「じゃあ、また明日ね!」
「ああ。道は覚えたから自分で来るよ」
「朝から来てほしい!」
「了解。それじゃ」
ドアを押す
辺りは暗く、光は無い。
この家が俺の家とそんなに遠くないのは有難い。道に迷うことがない。
それに、こんな大きい家すぐに見つけられる。
「さて、帰っても勉強だな」
今日はなんだか楽しかった。
勉強目的だというのに。
そして、彼女はどうだったかは知らないが、恐らく俺はあの時顔が赤くなっていた。
そのことは、俺だけの秘密。
タイトルの割にほとんど勉強以外を書いてますね笑