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季節を感じない自分

作者: 虚構の世界


季節は夏だというのに、自分の中の記憶の残像は相変わらずの冬のままだ。

自分の人生そのものが冬なので、あまり夏という季節に斬新さを感じないような感性になってしまった。


 今なお、冬の街での若かったころの思いに浸って生きている。今日は昼からのんでいた。もう夕方だというのに、かなりのんでしまった。かなり酔いがまわっている・・・。けど、なんだか一瞬だけでもつらい現実からタイムスリップできるこの感覚が好きだ。


 アルコールに依存した自分がどんな文章を書くのか・・・。そんな興味がわいてきたので、

今、画面に向かう。


 今見ている写真は、冬の一コマのこと。


 寒さが身に染みるときほど、北国では部屋の中にぬくもりを感じる。そう、この時期、愛されている人は身をもって幸せを感じる。北国の冬は幸せの比例度が増している。



 今思い出している過去は、当時の行った店や二人で過ごした時間の事。

評判の良いレストランを探して二人で食事をすることが何よりも楽しかった。



 一生懸命にドレスアップしてくる彼女は、とてもかわいらしかった。自分はそんな彼女のためにもがんばらなくてはと心に思っていた。そして、自分も働きながら、その先の彼女との人生を考えるようになった。



 街は冬だというのに、自分の心は幸せだった。人生が希望に満ちていた。こんな素敵な女性と結婚したらと思うと、なんでもできるような気がしていた。


 彼女と会えるために、昼間の仕事をがんばれる自分がいた。

 彼女の写真をポケットに忍ばせて、仕事をしていた。

 彼女のためにがんばる・・・。

 彼女がいればどんなことでも耐えられる。

 彼女と会うために一瞬一瞬を過ごしている自分がいた。

 


 食事をした後、寒さの厳しい二月だというのに街の大通りを二人で手をつないで歩いた。

白くなる息が幻想的な雰囲気を一層きれいなものへと演出してくれた。


 好きだった・・・。本当にこの女性と心から一緒にいたいと思った。

 彼女も好きだと言ってくれた。


 それから・・・、一年後、二人の世界は灰色だった。


 私はギャンブルにのめりこんだ。仕事はしていたが、そのお金のすべてをギャンブルにつぎ込んだ。


 時間もお金もすべてをつぎ込んだ。


 当時、あまりに負けが連続して、彼女の写真をポケットに忍び込んでパチスロに行った。なぜか大勝ちした。その後も、彼女の写真を入れてスロットを打っていた。しかし、偶然はそんなに長くは続かない。


 その後、借金をするようになった。彼女からも・・・。

一年後の冬、彼女と旅行に出かけることになっていた。手元には5万円あった。旅行に出かけるのは夕方、彼女が仕事を終わってからだ。それからJRで出発することになっていた。彼女はこの旅行を楽しみにしていた。


 私は旅行のためにとっておいたなけなしのお金をもってパチンコ屋へ行った。夕方までに全部負けた。お金が無くなり、なんとかなるだろうと思ってそのまま知らないふりをしてJRに乗った。


 そこで財布を忘れたという絶望の嘘をついた自分がいた・・・。

 彼女の「信じられない」という表情と疑いの眼差し・・・・。

 結局、自分は3万円を借りて、その旅行をした。


 旅行から帰っても、まだギャンブルにのめりこんだ。


 当然のごとく彼女は去っていった・・・・・・・。


 彼女が去っていったのが、この4月の今頃だった。


 彼女は堅実でしっかりした女性だった。今頃、幸せな47歳になっていることだろう。素敵な旦那さんと子供たちに恵まれ、幸せな日々を送っているにちがいない。

 

 そして、自分は惨めな50歳を迎える。昼から、安酒をのんで酔っ払っている自分・・・。彼女の選んだ道は正しかった。


 今なお、時々、彼女の写真を忍ばせてパチンコに行っている自分がいる・・・。



 


 


 



ジャンル:小説

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