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エリサのひとりごと 日

 目覚めの良い朝だった。


 生きてる。

 私、生きてた。


 虫が自分の体を這うような感触に、ぶるっと震える。


「目が覚めたかい?」


 声をかけてくれたのは、老人は老人でも、昨日見た連中とは違う顔だった。

 温かいスープでも出てきそうな物言いだ。言い方に温度を感じる。


 なんだか一気に気が緩み、ほろっと泣けてくる。


「君の体にメスは入ってない」


 何を言ってるんだろう、この爺さんは。やっぱりこの爺さんが昨日の爺さんだったのか?


「あいつらが君を助けたんだ。小さなヒーローたちが」


「嘘でしょう? あの子たちは今どこにいるの?」


「ここの工場を支配中」


 はあああああああああ!!!!????


 少し緊張しながらベッドから降りる。

 ベッドから離れてもなんともない。


 自由を取り返してくれたんだ、モルモットだった私を! あの子たちが!


「早く会いたいわ、小さなヒーローたちに」


 爺さんは彼らのもとまで案内役を買って出てくれた。


 工場に着くと、あちこちで笛の鳴る音が聞こえる。


 子どもたちが、あのスーツの男たちを指導しているのだ。


 私の姿を見ると、皆かけよってきてくれた。

 太郎の姿を見た途端、心の中に我慢していたものが零れ落ちていく。


 母と子の再開のように、抱きしめる。


「もう、大丈夫だよ」

 

 太郎が言った。


「ありがと」


「あなたたち、凄いじゃない、こんなこと出来るなんて」


 大の大人を奴隷のように働かせる異様な光景は、フィクションのようだ。


「こいつらにエリサがもとに戻る薬を作らせてるんだ。あ、おじいちゃんはもういいよ、ありがとう」


 この老人とはここでお別れらしい。


「人探しをしなきゃいけないんだって」


 私が老人の動線を追う視線に気づき、白雪姫が教えてくれた。


「喜一と学級委員くんは?」


「あいつらは仲良く一緒におねんねしてんじゃないの?」


 あらら、喧嘩でもしたのかしら?


「スネてる場合じゃないでしょう、今は」


「スネてるんじゃない、あいつらとは戦う方針が違うんだ」


 まぁ、格好つけちゃって。


「無事に帰れたら、俺たち付き合おう」


 真剣なまなざしで、太郎が白雪姫に言った。

 さあ、どうする?


「うん、いいよ」


「いいんかーい! お宅らまだ小学生でしょう? オバちゃんがそれを許しません」


 だいたいこんな浮かれた会話を聞かれて足元救われたらどうするのよ。

 場違いな空気を醸し出すのはやめにしましょう。


 周りを気にするそぶりを見せると、太郎はどう捉えたのか、絶対に元の姿に戻るから、大丈夫、と肩を叩いた。


 そっか、私もうすぐもとに戻れるんだ。


「あまりの美人に気を失わないでよ」


「それは大丈夫」


 小学生軽くいなされ、むっとする。


 スーツ姿のイケメンたちが、汗水たらして自分の為にもとに戻る薬を作ってくれている姿を見るのは、気分がいい。


 ちょっとした女王様気分だ。


「できました」


 スーツ姿の男がコップを持ってきた。


「ご苦労、下がりなさい」


 ここで、くいっと飲み干してしまえばよかったのだ。

 まさか、ここで横やりが入るとは思わなかった。


「全員、手をあげなさい」


 日本の警察が手際よく仕事をこなす姿を、苦虫を噛み潰す思いで見守ることになる。

 

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