エリサのひとりごと 土
なんだか知らないけど、ベッドの上に寝かされてる。
ベッドから離れようとしたら、強力な電気が流れてくるから、私にできるのはせいぜい筋トレくらい。
ベッドにはナースコールのようなものがあって、押せば誰かしら飛んでくる。
夕食の時はスタイリッシュなイケメン、トイレの時はマッチョなイケメン、朝食を運んできたのはメガネがよく似あう知性派イケメン。そう、ここに来るのは皆何かのイケメンだった。ちなみに、添い寝をしてもらったのは、童顔イケメンだ。
一晩中同じベッドの上で過ごすと、聞けなかったことまで聞けてくる。
童顔イケメンに、私はこれからどうなるのかを聞いてみた。
開発中の新薬を、従来の薬を使った人間が使うとどうなるか、という実験に使われるらしい。
それまでは人間扱いしてくれるということか。
「元に戻る薬はあるの?」
「あるよ。それがどこまで戻すことができるのかも最後に実験するつもりさ」
あくまで実験する者たちと自分に一線を画しているような言い方だ。
「君みたいな緑からまた違う生き物に進化した時、退化の薬を使って人間まで戻ることができるかどうか。ただ、人間まで戻れたとしても、かなり肉体に負担がかかるだろう。覚悟しといた方がいいよ」
それを聞いて、朝の筋トレはいつもの三倍やった。
不安を筋トレで解消していく。
そう思うと、私は冷静に実験台にされることを前向きに受け止めているのかもしれない。
子どもたちは大丈夫かしら。
真っ先に浮かんでくるのは太郎の顔だ。
会いたい。
「子供たちは無事なの?」
「ああ、今んとこ」
子どもたちについて、童顔イケメンは数多くを語らなかった。
「あの子たちに何かしたら、殺すよ?」
「言う相手が間違ってるよ」
じゃあ、誰に言えばいいんだろう。
連れてきてよ。
「無理だよ」
口から零れ落ちたのか、彼はそう言った。
彼が昨日こっそり持ってきてくれたフルーツをそのままかじる。
彼のイメージにぴったりのマンゴー。
マンゴーに彼を重ねていたからか、部屋がノックされても、身構えることなかった。
白衣を来た老人が、今から手術をすると、耳をすませていないと聞きとれないような声で言った。
「その前に、シャンプーさせてください」
沢山汗をかくだろうから、シャワーは浴びておきたい。実験でどんな姿になったとしても、髪から仄かに石鹸の匂いを出したい。
自分はあくまで女性なんだ。
そう思わせてくれた彼に、感謝しないとね。
老人は要求を聞き入れてくれた。
久しぶりに歩いた。いつもすぐ近くのトイレしか入れないから、気のせいか少しだけ肉体的な疲労感を感じる。
「手術を受け入れる代わりに、あの子たちには手を出さないで」
手術台の上で、老人に言った。
老人は、コクリと頷いた。
「まず初めに、最新の薬を体に投与して、進化させます。その状態から、もとに戻す薬を投与します」
ああ、いよいよ始まるんだな。
醜くて仕方なかったからだ。
誰かに愛された時から、こんなに尊いからだになるとは。
生まれ変わったら、もう一度このからだに出会いたい。
麻酔を吸って、三秒もしないうちに記憶が飛んだ。




