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山に棲む野兎のひとりごと 金

 朝日を浴びて、搾りたてのイチゴのジュースを飲む。

 彼女がいつも右手にぶら下げているバスケットの中のパンを恵んでもらった野兎は、人間になることが出来る。


 そんな言い伝えが、古くからあったようだ。


 白いワンピースを着たポニーテールの女の子は、今日もいつもの格好で、いつもの鼻歌を口ずさみながら野イチゴ畑にやってきた。


 ぼくは、その姿を草むらの中から眺めていた。


 こんなキュートなぼくの姿を見たら、あの子はきっと、微笑みながらぼくの背中を撫でてくれるに違いない。その手はきっと、温かいんだろうなぁ。ふふっ。


 ぴょんっと、自分の存在をアピールするかのように、草むらから飛び出した。

 野イチゴを摘んでいた少女は、すぐにぼくに気が付いた。

 あまりにもまっすぐな瞳でぼくを見てくるから、ぼくは少し目を逸らしてしまった。


「おいで、兎さん」


 柔らかい言葉が、ぼくの耳を撫でる。

 心地よく吹く風に押されて、ぼくは少女の元に走った。


 彼女はしゃがんだまま、ぼくを抱っこした。


 彼女の膝の上は柔らかく、温もりに満ちていた。

 なんだか眠ってしまいそうになる、この感覚は何て言えばいいのだろう。


 瞼が落ちていく。再び瞼を開けるころには、「お母さん」と呼んでしまいそうだ。

 分かった。この感覚は、安心感なんだ。


 一足早く、人間になったお母さん。

 遠い記憶から、お母さんのおなかで眠っていた時の記憶がひっぱり出てくる。


 彼女は、ぼくのお母さんなのかもしれない。

 見た目は少女だが、きっとぼくのお母さんは、若作りが得意なんだ。

 少女のような立ち居振る舞いをしているうちに、顔つきも少女のようになってきたのかもしれない。

 それか、どこかに薬草が生えていて、調合して若返りの薬を作ることに成功したのかも。


 少女の周りに吹きわたる、ミントの風に包まれながら、眠りについた。

 パンは目覚めてからのお預けだね。

 再び目を開けると、背中がぞくっとした。

 先ほどの手つきとは違う。

 なんだ、これ。


 顔を上げると、ホームベース型の中年女が、にやっと笑いながらぼくの背中を撫でていた。


 ヒイイイイ!!!!!!!


 僕は得意のジャンプ力を生かして、走って逃げた。


 はあ、はあ、はあ。


 一体、どうして?


 噂の少女から、謎の中年女に何でチェンジしてたんだ?


 あたりはすっかり暗くなっていた。

 風が強く吹いた。

 顔を上げると、ハングライダーが見えた。


 白いワンピースの女が、子どもたちと一緒にハングライダーに乗っていた。


 あれだ!


 ぼくは、走ってハングライダー追いかけた。


 

 

 

 

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