『土竜』の未来は
……は?
僕は繰返し何度も引き金を引いた。が、それに反して『土竜』からの反応は一才ない。
計器を確認しても、『風見砲』に故障の知らせは出ていない。なのにも関わらず、実際の主砲は黙りこくったままだ。
『さて、ふぇありー君。この状況は君ならどうする?』
風太さんの張り付くような笑顔が簡単に想像がつく。
は? なんで動かないの? いや、今はそんなことはどうでもいい。この状況、どうする?
風太さんの言葉から察するに、彼は僕の『風見砲』が故障していたのは知っていたのだろうか。一体どうやって、は、今はいい。『風見ガトリング』も切り離し、『風見ハイドラ』も撃ち尽くしてしまった以上、僕に攻撃の手段がない。
いや、あるにはある。機体の右腕に備え付けられた近接武装、『風見棍』だ。
残された武器はそれしかない。ならば迷う必要なんてない。突撃開始だ。
僕は今度は『風見棍』を使用するためにボタンを操作した。ひょっとするとこちらも動かないのではないかという疑惑もあったがそれはどうやら杞憂に終わったようで、『土竜』は武器を右手に装備した。
『ふむ。傾向から推察すると、次は機体の質量を使って突撃でもしてくるのかな?』
『土竜』の足を踏み出そうとすると、続いてそんな声が聞こえてきた。
僕の行動が読まれている。そう感じた僕は、つい『悠久機』に足を踏み出させることに躊躇してしまった。いや、迷うな。何にせよ僕にはそれしか残されていないんだ。
「……どんな手を使ったかは知りませんが、『土竜』をバカにしない方が身のためですよ」
『うーん。残念だけど、それもさせてはあげないかな』
そう彼が言った瞬間、突然コックピットから重力が消失した。否、『土竜』が重力に任せて身を投げ出し始めた。
「は?」
僕は状況がわからず、なすすべがないまま重力に引かれていく。そして機体が地面に倒れこむと共に、眩暈のするような衝撃と轟音が僕を襲ってきた。モニターや電気系統はその衝撃で一気に亀裂が走り、僕自身にも小さくはないダメージが来る。
コックピットの位置は地上から10メートル程の高さに位置しているんだ。だから機体が倒れたらそれこそ建物の二階から落下したのと同じくらいの衝撃がくる。
『……ガガガ、ピー。りーさん! ふぇありーさん!』
「あ……う。と、東藤さん?」
無残なものとなってしまったコックピットだが、辛うじて通信機は生きているようだ。ノイズが乗って何を言っているかわかりにくいが、確かに東藤さんの声がスピーカーから届いてきた。
「一体何があったの……?」
『全てワナだったんです! こんなの……こんなのって!』
「お、落ち着いて東藤さん! 状況を知らせて!」
今にも泣きそうな東藤さんの声。一体何が何だかわからない。ついさっきまで敵に『風見砲』を突き付けていたのに、それが撃てなかったと思うと、次はあっという間に転倒した。確かに左足の蓄積疲労は故障寸前だったが、こんな風に何の前触れもなく転倒するほどではなかったはずだ。
となると考えられるのは制御機構の異常だが、僕は足を結局踏み出していなかったからそれも考えにくい。
意味がわからない。一体『土竜』に何が起こっているんだ?
『あぁ。残念だよ『閃光の妖精』。まさか君がこの程度だったなんて』
そして、また通信機から風太さんの声が届いてくる。それは口ぶりこそは残念そうだが、口調は完全に嘲笑のそれが混じっていた。
『ふぇありーさん! 脱出できますか!? 敵は……敵は主砲をコックピットに向けています! 逃げてください!』
僕は脱出装置に手をかけたが、それを引くのはやめた。何故ならそれは僕たち『悠久機プロジェクト』の負けを意味するからだ。今回の戦いは正真正銘の『兵器対決』だ。僕個人の生死は勝敗に関わってこない。『土竜』が破壊されればその瞬間僕たちの負けだ。
それだけは絶対に避けなくてはならない。僕は風見さんを失うわけにはいかないし、なにより勝つって『約束』したんだから。
「な、何が起きてるんだよ! 動けよ『土竜』! このままじゃ負けちゃうだろ! 僕は風見さんと『約束』したんだ! 敵を吹き飛ばすって! だから、だから……!」
僕は亀裂が走ったモニターを叩き、何の反応も返してこない操作レバーやボタンを何度も何度も動かした。
しかし、結局それも時間の無駄で、反応らしい反応は一切返ってこなかった。
『ふふふふふ。さよならだ、『閃光の妖精』。恨むなら、僕を恨んでもらっても構わないよ』
「……! さては何か『土竜』に細工をしたんですか!? 卑怯ですよ!」
僕にできることは時間を稼ぐことだけだ。彼が油断ゆえに行動を起こさない間に、『土竜』の操作システムに再起動をかける。
そしてノイズを大きく含んだ壊れかけの通信機から、彼の嬉しそうな声が聞こえてくる。
『『卑怯、汚いは敗者が使う言葉』何だろう『閃光の妖精』!? 全く持って君にお似合いの言葉だよ! あははははは!』
「何故それを……!!」
それは他でもない『僕』が使った言葉だ。だけど……。
そして次の瞬間、僕の思考を遮るかのように、『土竜』の操作系当から反応があった。
モニターには映りはしないが、確かに『土竜』のシステムが一部復活したみたいだ。
よし! いける! 覚悟しろよ! 今から僕の機体であなたを……。
しかし、僕が機体を動かそうと操縦幹に手をかけた瞬間、無情にも敵の主砲が僕と共にコックピットを吹き飛ばしたのだった。
っしゃー!! ついにふぇありー爆散!!
今回は余り美しくない散り方ですが、彼はそこそこ絶望感に包まれているので私的には満足です。
本当はもっと絶望の淵に叩き落としたいんですが、単純に私の構成力不足ですね。頑張ります。




