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風見さんの場合


「月島っていつも家でなにしてんの?」

「えー? えっと、特に何もしてないかなー?」

「なんで嘘つくのよ……」


 今、映画館へ行くため繁華街を三人でトコトコ仲良く歩いているような状況だ。立ち位置は風見さんを真ん中に、僕と松本くんで挟むような感じ。

 松本くんが頑張って会話を続けようとしてくれているが、険しい。何が険しいって、僕の応答が月並みすぎて申し訳ない。これら寝る前に反復して復習するやつだ。


 そんな僕に対してどんなことを思っているのかはわからないけど、松本くんはニヤリと笑みを浮かべながら僕たちに問いかける。


「そういえば風見と月島はなんで仲良くなったんだ? あ、ひょっとして付き合ってるとか? そういえば月島が体育館裏に風見を呼び出したとかどうとか……」

「ち、ち、ち、ち、違うよ!? いや呼び出したのは呼び出したけど、それはそんなことではななななくて!!!」


 顔が真っ赤になるのを感じながら、僕は必死に否定する。しかし松本くんは困ったような顔をしている。僕の反応がホントかウソか図りかねているのだろう。

 以前風見さんに誤解を解いておけと言われて無視していた因果がまさかこんな形になって襲いかかってくるとは。ごめんなさい風見さん、あなたの言う通りでした。


「……このふぇありーが人を呼び出して告白なんてできると思う? 呼び出したのは事実だけど、別件よ別件」

「な、なんだ。学校はその噂で持ち切りだったからな」


 そしてホッとしたようにため息をつく松本くん。誤解が解けてホッとしたのは僕の方だよ! と、言いたいとこだけど、僕にできるのは、あははと笑顔を浮かべることだけ。

 そして風見さんが『だから早く誤解を解きなさいって言ったでしょ!』とでも言わんばかりに僕を睨んでくる。ひぃ! ご、ごめんごめん!

 

「へ、へー。じゃあ風見って今彼氏いんの?」

「……いないわ。残念ながら」

「へー。意外だな。風見みたいに可愛い子、他の男がほっとかないだろ」

「そんなことないわ。構ってくれるのはふぇありーくらいね」


 少し照れ臭そうにしながらも松本くんが風見さんを褒め称える。風見さんは風見さんでまるで反応に困るかのように肩をすくめている。


 おおう? なんだこの雰囲気? 


「えぇ!? ウソだろ!? 俺が同じクラスだったらほっとかないのに」

「ははは。ありがとう」


 ぐいぐいと松本くんが風見さんに詰め寄っていく。すごい。これがクラスでリーダーを勤める人間の強さか。僕は逆立ちしたってできそうにない。てかもし僕が風見さんにそんなことしようもんならグーで殴られてるよ! グーで!


「あ、映画館ってあれだよね?」


 もはや空気となりつつある僕は必死に会話に入ろうと、目に入ってきた情報をそのまま口に出す。


「あ、そうね。今日は何の映画を観るんだっけ?」


 視線を先の看板に向けながら風見さんが言う。何となく松本くんが顔をしかめたような気がしたけど、ぼ、ぼ、ぼく何かしたかな!?


「最近、無茶苦茶流行ってる映画を観るぜー。CMとかでもやってたし、二人とも知ってるだろ?」


 と、何事もなかったかのように松本くんが答える。あれ。僕の気のせいかな? わからぬ。人の心はホントにわからぬ。

 そして僕たちは松本くんが教えてくれたタイトルについてあれこれ予想を立てながら、映画館という未知の領域に足を踏み入れていったのだった。



ーーーーーーー



「まぁ、悪くはなかったけどもう少しこだわりが欲しかったわね! 決して悪くはなかったけど!!」

「いやいや凄かったよ!! 超面白かった!」

「お、おう? そんなにか?」


 上映後、僕達三人は映画館内の喫茶店で今観た映画の感想を言い合っていた。

 なんと僕達が見た映画は巷で話題の『人型ロボット』をテーマにした作品だったのだ。そのせいか僕と風見さんの興奮っぷりが凄い。松本くん。完璧なチョイスだよ。

 最新のCGによって生み出されたエフェクトはまるで僕達の想像をそのまま映像化したかのような迫力で、それは僕達に新しい風を吹き込んでくれたのだ。


「今日の映画で『振り回すタイプ』の武器について考える良いきっかけを貰ったわ。ふぇありーはどう思う?」

「射程もそれなりに確保できるし、構造も簡単だし悪くないと思う! でも僕としては『人型ロボット』として当たり前の必殺技のロケッ……」

「そうよねっ! ただ遠心力を考慮に入れて武器設計しないと、振り回しただけで武器が引きちぎれる可能性だってあるから、武器先端につけるおもりと、それをつなぐ鎖の重量比を……」

「ちょちょちょ、ちょっと待った! お前ら一体何の話をしてるんだ!?」


 僕と風見さんが映画から着想を得た『悠久機』の武器について盛り上がっていると、松本くんが困ったような声を出した。あ、彼のこと忘れてた。

 すると、風見さんは松本くんの方に向き直り、彼の手をとり、瞳をキラキラと輝かせながら口を開く。


「いえ、何でもないわ松本くん。悪くない、いえ、いい映画だったわ!」

「お、おおう? どういたしまして?」


 風見さんの行動に思わず顔を赤らめる松本くんだったが、なんと彼は風見さんの手をそのまま握り返した。流石は松本くんだ。もし僕があんな風に手を握られたら、赤面して下を向くしかできないだろう。


「で、ふぇありー! さっきの続きだけど……」


 しかしそんなことは微塵も気にする様子もない風見さんは、さっきの話の続きをしようと再び僕の方へと向き直った。

 松本くんは風見さんの手が離れたことに少し残念そうにしながら、小さな笑みを溢す。


「はいはい二人とも。盛り上がってる所悪いが、今からゲーセンにプリクラを取りに行かないか?」

「ぷぷぷプリクラ!?!? ってあの伝説の!?」

「伝説……?」

「あ、いや、僕にとっては伝説というかなんと言うか……」


 松本くんからなんとも魅力的な提案だったが、風見さんは一瞬迷ったように目を泳がせたあと口を開いた。


「……悪いけど、私はパスね。ちょっとやらなきゃいけないことができたわ」

「ダメだよ! 設計図なんていつでも書けるでしょ!」

「いやよ! 今やりたいのよ! 私は!」

「ダメったらダメ! ほら、松本くんにもお礼をしなきゃいけないでしょ!」


 家に帰って設計をしたがる風見さんを無理やり説き伏せる僕。

 風見さん。いつから君はそんなに『悠久機』の設計に対して積極的になったんだい? いいことだけどさ。




ーーーーーーー




「ふははははは! 落ちろカトンボ!」


 そしてやってきましたゲームセンター。たくさんの筐体やコインゲームが並んでいる中で、僕達の目的である『プリクラ』はその伝説である存在を強調するかのように奥の方に鎮座していた。

 各種ゲームを揃えているのがゲーセンだから、もちろん『RW接続機』も存在している。だけだ最近は家庭用に押されているのかその規模はどんどん縮小しているみたいだ。

 そして僕たちに届いてくる高い声に顔をしかめながら、風見さんが口を開いた。


「なーんだか聞き覚えのある声が聞こえてくるんだけど……」

「あっはっは。これがキャプテンの力! 愚民は平伏すがいいさ!」


 ロボットゲームが集まる一角から、なんだか聞き覚えのある声が聞こえてくる。まるでどこぞのキャプテンらしく、漂うポンコツの香り。


「あのゲームしてる連中、知り合いなのか?」

「いえ、まさか。とっととプリクラを取りに行きましょう松本くん。ここは空気が悪いわ」













わかりやすい新キャラ、松本くん。

 それはそうとこんな幸せそうなふぇありーはらしくないと思います。ぶち壊してやりたい衝動にかられていました(笑)

 ちなみにふぇありー達が見た映画は『パシフィッ○・リム』的な映画です。弓佳がプレイしているゲームは『ガンダ○EXVS』的なゲームです。

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