ふぇありーの日常?
男の友達が欲しい。
これは最近になって生まれてきた僕のささやかな願いだ。少し前まではただただ素直に友達が欲しいと願ってきただけだったが、今は違う。同性の友達が欲しい。
中学の時は下らない事で苛められていたけれど、高校生になってからそんなことは綺麗になくなった。これは皆が大人に近づいたからなのか、進学校に来るような人はみんな真面目だからなのかはわからないけど、僕にとってはとても良いことだ。
だけど、高校は高校で別の問題に直面している。
「はいどうぞ。月島くん」
今もまたにこりと笑顔を浮かべたクラスの女子が僕に配布物を手渡してくれた。小さな声でありがとうといい、僕はそれを受け取る。そして何事もなかったかのように、彼女は去っていく。
他の生徒はぞんざいに名前で呼んで、取りに来させているのに、わざわざ僕の所までは持ってきてくれるのだ。
そう。こんな反応は何も今の人だけではない。
皆が僕に気を使うのだ。僕が口下手だからかわからないけど、皆が優しい。それはいいことでありがたい事なんだけど、何というか『他人』の域は出ていない。
みんなにとって僕は友達ではなく、異物で、お客様なのだ。
……まぁ異物は言い過ぎとしてもこのままじゃ同窓会にも呼ばれない事は確定だし、それ以上にみんなの記憶に残るかどうかも怪しい。
だから僕は友達が、取り立ててクラスの男友達が欲しいのだ。
まぁ『風見鶏騎士団』との勝負も近いし、『悠久機プロジェクト』にも人が増えて考える事も多いのに、そのことを相談できる人は今もいない。
「したがって、ここで三角関数を上手く使うことにより……」
そして僕の前で数学の先生が楽しそうに授業を行っている。僕的には数学の解き方より、人生においてどうやって友達を作るのかを伝授して欲しい。お金出しますので。
弓佳ちゃんの力もあり、僕は最近『友達』を手に入れた。弓佳ちゃんは学校で会っても寄ってきてくれるし、東藤さんも風見さんも挨拶くらいはしてくれる。しかも最近は『後輩』だってできた。これはとてつもない進歩だと僕は思う。
「ここの範囲のプリントを配るから……」
と、先生が盤書を終えるとなにやらプリントを配り始めた。データで配れよと思うことは思うんだけど、全ての先生がITに強いわけじゃないから仕方のないことなのかもしれない。
「あ、ありがと……」
そして回ってきたプリントを受け取りながら、僕は消え入りそうな声を出した。
僕の前に座るのはこのクラスの中心人物である松本くんだ。イケメン、イイヤツ、スポーツ万能、の三拍子揃った最強クラスの人類だ。もし彼に取り入ることができれば僕だってなし崩し的に友達が増えそうなんだけど中々上手くいかない。
ていうかそもそも同世代の人達とどんな話をしたらよいのかてんでわからない。弓佳ちゃんのように常に『悠久機』の話をしてもいいんだけど、それは『違う』ことはわかっているが、かといってテレビもあんまり見ないし、皆が好む話題というものがわからない。
そんなこんなで結局僕は友達と呼べる友達がいないまま一学期が終了してしまいそうなのだ。
そして、陰鬱な気分のまま、授業終了を知らせるチャイムが鳴り響く。
はぁ。今日もまた事務的な会話以外しなかった。こんな調子で男友達ってできるのか。
なんて事を思いながら、荷物を鞄に詰め始める。今日も試作18号機の設計会議だ。頑張って学校で静かだった分そこで話そうっと。コミュ力上達は会話が一番だ。
しかし今日はそんなことを考えている僕に向かってよそよそよしくも声をかけてくれる人がいた。
「なぁ、月島? ちょっといいか? か、風見の事で相談があるんだけど……」
ーーーーーーー
「か、か、か、風見さーーーん!!!」
「何よふぇありー。うっさいわね」
午後8時。いつものようにRWに行った僕だけど、今日は風見さんに用があるんだ!!
彼女は工場の『創造機械』の前に立ちながら、僕の方を怪訝そうな顔で見つめてくる。
「ねぇ! 僕のクラスの松本くんって知ってる?」
「松本くん……? あぁ、知ってるような知らないような……」
視線を泳がせながら考える風見さん。松本くんは学校でも人気者の有名人だから、たぶん風見さんなら知ってると思ったけど、そもそもあんまり興味がなさそうだ。
「松本くんが僕を遊びに誘ってくれたんだ!」
「は? あ、そう……。よかったわね?」
と、風見さんが困ったように首を傾げる。
……まぁそりゃそうか。風見さんからしたら、だから何? 以外何も感想は浮かばないか。
「で、松本くんが風見さんも一緒にどうかって言ってるんだけど……」
「はぁ? なんで私?」
「さぁ……?」
そして一瞬辺りを包む静寂。しかし風見さんは何かを理解したかのように一瞬目線を落とすと、吐き出すように言った。
「あー。私はパスね。松本くんってよく知らないし。ふぇありーが楽しんで来なさいな」
「ダメだよ!」
「なんでよ」
「気まずいもん! 僕が一人で言って会話になると思う? ならないよ! 葬式みたいな雰囲気になるよ!」
「いやそんな自信満々に言われても……」
「お願い風見さん! この通り!」
両手を合わせ、懇願する僕。風見さんの手下としてそれなりの日数を重ねてきた僕は風見さんはこういうお願いに弱いことは既に把握済みだ。
「えーー。めんどくさいわ。どこに行くのよ?」
「映画って言ってたかな?」
「……適当ね」
「お願いだよぉ。一緒にいこーよー」
はぁ。と、うんざりしたようにため息をつく風見さん。うっ。そんな反応されると何だか申し訳なくなってくる。
そして一瞬逡巡したと思うと、彼女は小さな笑みを浮かべて口を開いた。
「……はぁ、仕方ないわね。わかったわ。いつなの?」
「やった! えっと、日時は……」
ーーーーーーー
そして待ちに待った土曜日。繁華街。
僕は駅の前で今か今かと二人を待ち構えていた。駅前に設置された大きなテレビは今日が快晴であることを示している。もちろん最近暑くなってきたから水筒も忘れていない。
待ち合わせまであと30分はあるけれど、慎重に慎重を重ねて早めに来た。
今日の予定は三人で映画を観たあと、その辺のカフェでお茶したのち解散だ。
ヤバい。この感情はヤバいとしか表現できない。この僕が土曜日にRWにログインせずに外に遊びに行くなんて。ありがとう風見さんありがとう松本くん。僕は今日というこの日を一生忘れないよ。
そわそわと辺りを見渡しながら、彼らを待つこと数十分。遂に風見さんが駅から出てきた。
彼女は僕を見つけると小さな笑みを浮かべ、こちらへと向かってくる。
「こんにちはふぇありー。早いわねあんた」
今日の風見さんは彼女らしいタイトなジーンズに身を包み、清純さ溢れる白いシャツを来ている。シンプルだけどここまで人を惹き付けるのは元々の風見さん魅力によるものだろう。
そしていつもはポニーテールにしている髪型も今日は下ろしているからか、何だかいつもより可愛く感じる。
「おおお。風見さん。今日はいつもと違うね」
「そ、そう? いつも通りよ」
少し顔を赤らめながら、風見さんが目を逸らす。いつもの勝ち気な瞳が照れで揺れるのはなんだか新鮮に感じた。
「で? 松本くんだっけ? は、来たの?」
「まだだよー」
まだ待ち合わせまで15分程ある。僕は松本くんが来るのを今か今かと待ちわびながら、風見さんへと声をかける。
「風見さん。今日はありがとう。わざわざ僕のお願いを聞いてくれて」
「いや本当にそうよ。『土竜』の設計もいい感じに煮詰まってたってのに」
「ははは。ごめんね」
「あ、そういえばふぇありーに悠久機の事で聞きたいことがあったんだけど……」
「ん?」
ーーーーーーー
「いやーごめんごめん! 待たせた?」
「確かに腰部周辺に主砲を配置するのは安定性の面から考えても悪くないアイデアだと思う。でも狙いはつけにくそうだよね」
「えぇ。そこで主砲は頭部に残しつつ、腰部には無反動砲を装着して火力増強を図ろうと思うの」
「無反動砲? でもそれってバックファイヤによる威力減衰について考慮しなくていいの?」
「仮想敵を戦車とするなら少し物足りないかも知れないわね。でも発射位置の関係上、敵装甲を全く抜けない、ということはないと思うわ。問題は当てられるかどうか、よ。」
「おーい。。。こんにちはー」
しばらくすると松本くんが颯爽とイケメンスマイルを浮かべながら現れた。が、僕と風見さんは『悠久機』に搭載する新武装の事で議論をしていたせいで、彼の発見を遅れてしまった。
松本くんはその端整な顔立ちを不審な表情で固めている。
「あっ! ま、松本くん! こんにちは!」
「あら、こんにちは。それよりふぇありー、敵も『悠久機』とするなら機銃のほうが効果が高いかも……。いやでもそれにはあのクソ兄貴が関わってるのよね……」
「か、風見さん! その話はまた今度!」
松本くんが困惑した表情を浮かべているが、風見さんはまだ話は終わってないとばかりに話を続けようとする。そんな風見さんを片手で制して、僕は一歩二人の前に出た。
今気付いたんですが、祝! 50話!(ホントに今更)
そしてブクマも150を越えました! ありがとうございます。ありがとうございます。本当に皆さんのお陰です。ありがとうございます。幸せです。そして目指せ200!!
そしてポケモンgo面白いです。歩きスマホしてすいません!!




