↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
46/74

アイアンマンてつこ

 僕たちが話し合いと言う名の談笑に花を咲かせていると、ちらほらと登校する人が増えてきた。その人たちは僕らを尻目に過ぎ去っていくけれど、なんだか恥ずかしい。こんな朝っぱらから何してんだコイツら、とでも言いたげな視線に僕は羞恥の心を感じ得ない。


「あ、あれじゃないですか?」

「げ。うわ。来たわよ。じゃあね!」

「えっ!? ちょ、待ってよ風見さん!」


 東藤さんの視界の先から黒く高そうな車がこちらに向かってきているのが見えた。いかにも高級車ですよと言わんばかりのその車体は朝日を受けてキラキラと輝く。


 なんというか、ナンセンスだ。送り迎えに使用するにはその車の外観はやかましすぎる気がする。


「ふぇありー離しなさいよ! 私は関わりたくないのよ!」

「いいからぁ! 僕を一人にしないで!」


 逃げようとする風見さんの肘を僕はガッシリとホールドする。この四人の中で対人能力が一番高いのは風見さんなんだ。ここで逃がすわけにはいかない。

 弓佳ちゃんも高いけど、彼女の場合は別ベクトルだし。


 そしてそうこうしている内に、黒い車は僕たちの目の前に停車し、運転席から人が降りてきた。

 運転席から降りてきた人は、以前見たことがある……。


「げ。弓佳ちゃん。僕も逃げていいかな?」

「だめっ!」


 爽やか青年、風見風太(かざみふうた)さんだった。何を隠そうこの人は僕の横で逃げようとしている風見さんの実のお兄さんで、『風見鶏騎士団』の団長さんだ。

 風見さんと同じような茶色がかった髪を短くまとめ、整った顔立ちにふさわしい爽やかな髪型をしている好青年だ。

 僕は最高に苦手だけど。


 そして彼は僕に気がつくと、嫌そうに顔をしかめながら口を開いた。


「お前は閃光の妖精じゃないか! 貴様、こんなところで何をしている!」

「あ、お、おはようございます」

「人の話を聞け! 閃光の妖精!」


 お前がまず僕の話を聞けよ。なんて言葉はもちろん飲み込むしかない。


 この人とは二週間くらい前に一度会ったことがある。風見さんとの約束で『風見鶏騎士団』の助っ人に行った時なんだけど、その時からすでに苦手だ。


 彼らからしたら僕たちは副団長『風見風子』を引き抜いていった張本人だ。だから敵視こそすれど歓迎されることはなかった。



「お前何風子の肘を掴んでるんだ! 離せ! 嫌がってるだろ!」


 そんなありがたい言葉をお兄さんにかけてもらっているのに微塵もこちらに振り向こうとしない風見さん。たぶん離したらこの人は目を見張る程の速さで逃げていくだろう。


 最近になってわかったことだが、風見さんが『風見鶏騎士団』に戻らない理由の一端は確実に彼が担っている。


 『風見鶏騎士団』は僕たち『悠久機プロジェクト』と比べると遥かに平均年齢が高く、大半が男の社会人と大学生で構成されている。

 そんな中で風見さんは紅一点の唯一の十代としてもてはやされていたらしい。

 

 だけども風見さんはそういったパンダのような扱いを喜ぶ人じゃない。だから適当に理由をつけて『風見鶏騎士団』に戻らない。のだと思う、たぶんだけど。



「ていうかなぜお前がここにいる」

「な、なんでって……。ここは僕の高校ですので……えっと」


 切れ長の眉毛を持つ風太さんは訝しげに僕を見つめてくる。普通に考えたら大学生のあなたがここにいる方が不自然なことに気付いてもらいたい。


 もうそろそろ風見さんを捕まえておくのも可哀想な気がしてきたし僕も一緒に逃げようかと思っていると、風見兄が乗ってきた黒光りする車の後部座席のドアが開いた。

 そしてそこから眠たそうな目を擦りながら一人の女の子が降りてくるのが見えてくる。


 透き通るような金髪を持つその子はずり落ちそうな赤縁の眼鏡をかけなおしながらバタンと車のドアを閉めた。


「朝っぱらからうるさいですよぉー風見せんぱーい。一体何して……」


 僕たちと同じ高校の制服に身を包んでいるその子は、あくびを噛み殺しながらこちらを向いた。


「ふぇありーさん。あれがてっちゃんですよ」

「え!? あれが!?」


 東藤さんの呟きに思わず驚きの声を漏らしてしまう。だってどう見ても外人だ。

 色素の薄い金色の髪はどう見ても日本人の髪の色じゃないし、高い鼻に綺麗な二重まぶた、そして絹のような白い肌も僕らのそれとはかけ離れている。

 でもよく見ると瞳だけは真っ黒だ。他の色素が薄いからそう見えるだけかも知れないけど。


「あー! 貴方ってもしかして噂のフェアリーさんですかぁ!?」

「え? え?」


 するとその子は僕を見て驚いたように声をあげた。僕は背中に嫌な汗が走る。

 これは緊張からくる汗だ。僕は基本コミュ障だから、初対面の人と話すのは緊張するのだ。しかも外国人風の少女なんて無理無理無理無理。英語なんてできないできないできない。

 

「噂はかねがね聞いてますよぉー」


 そう言いながら金髪黒瞳のてっちゃんさんは僕の方へと歩いてきた。

 か、風見さん! ヘルプ! 


 不自然にこちらを向かない風見さんの肘を何度も引っ張るが、一行にこっちを向いてくれない。一体どれだけお兄さんが嫌いなんだ。


「はじめまして! おはようございますふぇありーさん!」

「あ、その、お、おはようございます」


 僕の目の前で止まり、ペコリと綺麗なお辞儀をする鉄菊鉄子さん。もちろん僕も合わせてお辞儀。

  

 横からは弓佳ちゃんが急かすような視線を僕に送ってくる。いやいやいやいや何を期待してるの弓佳ちゃん! やっぱり無理だってぇ!


 時が止まったような僕を見て、鉄菊さんはニコリと笑った後、持っている手持ちバックの中に手を入れた。


「いきなりごめんなさいですよぉ?」


 そして次の瞬間、鉄菊さんはカバンの中から黒い物体を取り出したと思うと、それを僕に突き付けた。


 その瞬間、僕の体から冷や汗が吹き出てきた。彼女が突き付けたそれは、RWでお馴染みの黒いハンドガンだったからだ。

 朝日を受けて黒光りする銃口が僕の顔を捉えている。現実世界で突き付けられたのは初めてだ。早く逃げなきゃ、という焦りが僕の心を支配する。


「な、なんのつもり?」

「いやー?」


 と、鉄菊さんは綺麗な笑顔を浮かべながら僕へと要領の得ない返事を返す。

 しかし僕のピンチに気付いてくれたのか、風見さんが逃走を諦めてやっとこちらを振り向いてくれた。

 そしてうんざりしたようにため息をつきながら一言。


「安全装置(セーフティー)がかかってるわよ新人(ルーキー)」

「あらあら? グロックって銃をご存知ないのかしらー?」


 風見さんのハッタリにも微塵の動揺も見せない鉄菊さん。彼女が突き付けている銃は「glock」という種類の銃で、安全装置がトリガーに引っ付いているため、イチイチそれを外す必要はない。

 ようするに引き金を引けば弾が飛びててくるのだ。安全装置なんてあまり気にする必要はない名銃だ。


「この銃はトリガーに安全装置がついているんですよ? そんなことも忘れてしまったんですかぁー?」


 と、嬉しそうにトリガーから指を外し、安全装置の部分を僕たちに見せつけてくる。

 が、もちろん僕はその隙を見逃すような初心者プレイヤーじゃない。ここはゲームじゃないけど。

 彼女の指が離れたその瞬間に相手の銃口を掴み、一気に捻り上げる。するといとも簡単に鉄菊さんはグリップを離してしまい、拳銃は僕の手元に移った。


 沈黙。

 そして半分泣きそうな顔をしながら鉄菊さんが僕を恨めしそうに見つめてくる。 

 


「……返してくださいよぉ」

「……やだよ」


 人に銃を突き付けておいて返せとは何事だ。いや。そんな顔で睨んでも返さないから。


 ……変な人だよ弓佳ちゃん。どうするのさ。











更新が止まって申し訳ありません‼

活動報告にも書きましたが、所用で今東南アジアにいます。想像以上にWi-Fiが弱く、執筆と投稿ができません……。

ごめんなさい。なんとかなると思っていたのですが、何ともなりませんでした。

近いうちに帰国するので、申し訳ありませんが、その時までお待ちください!

詳しくは活動報告へ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。