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それはまるで菊の花のように

「おっはよーー! ふぇありー!」

「ふぁあーー、おはよう弓佳ちゃん」


 早朝5時半。僕はいつぞやと同じように弓佳ちゃんの家の前で大きなあくびを噛み殺しながら、軽く会釈をした。

 弓佳ちゃんは髪の一部を三編みにして編み込んでいる。おお。何だかいつもと違って新鮮だ。かわいい。 


「あ、弓佳ちゃん髪型変えたの? 似合ってるね」

「え、そ、そう? ありがとう」


 少し照れたように顔を伏せる弓佳ちゃん。

 そんな風に恥ずかしがられると言った僕も恥ずかしくなるよ。


「で、今日は誰を誘うの? 弓佳ちゃんの知り合い?」

「知り合いじゃないよ?」


 気を取り直して大切な情報を弓佳ちゃんに訪ねてみたものの、やはり返答は予想通りというか何というか。行き当たりばったりにも程があると思います。

 そして弓佳ちゃんはトテトテと歩を進め始めたので僕は慌てて彼女に着いていく。

 

「はぁ。まぁ、そこは予想通りだけど。流石に誰か教えてくれないと、僕にはどうしようもないよ」


 まぁ、教えてくれたところで何が変わるんだって話だけど。どうせ風見さんの時のようになるようにしかならないんだから。

 すると弓佳ちゃんは歩みを止めることなくどうでも良さそうに言った。


「『鉄菊てつぎく 鉄子てつこ』ちゃん。っていう人だよ」

「鉄菊さん?」

「うん! 生徒会に所属している子だよ。一年生!」


 鉄菊鉄子さん……かぁ。その人の事は知らないけど、名前に鉄ばっかり入るって珍しいなぁ。これぞほんとのアイアンマン。なんちゃって。


「名前に鉄が二つも入るからね! だから材料とかにもきっと詳しいはずだよ!」

「え? きっと?」

「え? そうだよ」

 

 何か問題でも? とでも言いたげな視線を僕に向けてくる弓佳ちゃん。

 ……まぁいい。もう今さら始まったことじゃない。どうせ指摘しても無駄だし、得意の思考停止系男子を演じよう。考えるだけ無駄なんだしね。いや、ひょっとすると弓佳ちゃんには前みたいに何か考えがあるのかもしれない。小さな希望だけど、僕はその一縷の希望に全てを賭けるよ。


「……わかったよ」

「……?」


 僕の小さなため息の意味は弓佳ちゃんには届かなかったみたいだ。




ーーーーーーーーー




 到着した我が学校。なんと時間は朝6時30分。朝練している部活生なんていないばかりか、そもそも校門すら開いていない。 

 県下一の公立進学校ってだけあってそれなりに設備は整っていて、校舎も綺麗だけど流石にこの時間じゃ付近は閑散としていた。そもそも都会でもない地方だし、人が少ないのは当然だ。

 僕にとっては都合のいいことだけど。


「さ! ふぇありー! 待つよ!」

「え? 待つの!?」

「もちろん! だっていつ来るかわかんないじゃん!」

「え、いや、そうだけど……」


 さも当然とでも言わんばかりに弓佳ちゃんがそう言った。

 ならわざわざ朝に起きなくても放課後とかでもよかったんじゃ……。なんていう言葉はもちろん僕は飲み込んだ。



ーーーーーーーーー


 弓佳ちゃんと他愛もない話をしながら待つこと一時間。ていうよりこれからの弓佳ちゃんが考える『悠久機』の展望について聞かされること一時間。

 はい。『悠久機』にもっとちゃんとした武器を載せたいんですね。わかりました。

 そしてついに先生が到着し、門を開けてくれた。無論こんなところで何をしているのかと聞かれたけど、弓佳ちゃんが部活の朝練がどうのこうのと適当に嘘をついた。


 いや。それよりほんとに眠たいんだけど。

 昨日もブラック企業『悠久機プロジェクト』で恐ろしい時間作業していたから、いつもより強い睡魔が僕を襲ってくる。

 しかしそんなことには微塵も気付かない弓佳ちゃんは相変わらず嬉しそうに話を続けている。今確信した。この子は人の上に立ってはいけないタイプの人間だ。うん。きっとそう。


 まぁ。それがわかっていても弓佳ちゃんに付き従う僕はバカ以外の何者でもないと思うんだけどね。


「あれ? あんたらこんなところで何してるのよ?」


 僕が弓佳ちゃんに対してThe・愛想笑いをしていたところで、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 声の聞こえてきた方を見るといつも見ている勝ち気な瞳の綺麗な子が歩いて来ていた。僕は笑顔を浮かべ、元気よく口を開く。


「おはよう風見さん! はやいね!」

「はいおはよう」


 風見さんは手持ち鞄を両手で持ちながら怪訝な瞳で僕と弓佳ちゃんを見つめてくる。そりゃそうだ。この人から見たら僕たち二人がここにいるなんて不安でしかないだろう。


「鉄菊鉄子さん。って人を待ってるんだ。弓佳ちゃんがマークしてたっていう例の人」

「鉄菊鉄子? って、てっちゃんのこと?」

「え。風見さん知ってるの?」

「え? えぇ。家も近いし。うちのクソ兄貴も仲いいし。ていうかあの子を誘うつもりなの弓佳?」


 驚いたように風見さんが弓佳ちゃんにそう尋ねると、弓佳ちゃんはさも当然の事のように力強く頷いた。


「もちろん!」

「あぁー。なるほどねぇ。あの子……ねぇ。あー、うーん」

「え? なにその反応? 風見さん、その人ってどんな人なの?」

「え? どんな人? まぁ……そうね。簡単に言うなら『なんだか賢そうに見えるけどよく見るとバカ』って感じかしら」

「なにそれ!? 弓佳ちゃんみたいな人ってこと!?」

「ちょっとふぇありーそれどういう意味!!」

「あ、いや、うそだよ」 


 確かに嘘だ。弓佳ちゃんはバカそうに見えて実は賢いと見せかけてやっぱりバカなのだから。僕の言ったことは間違ってる。ごめんなさい弓佳ちゃん。


 と、心の中で弓佳ちゃんに謝るとほぼ同時に、テクテクと別の女生徒がこちらに歩いてくるのが見えた。

 まるで水仙の花のように可憐なその人は眠そうにも見える無表情を僕たちに向けながら口を開く。


「こんなところで三人とも何をしているんですか……」

「あ、おはよう東藤さん!」

「あ、はい。おはようございますふぇありーさん」

 

 まさかの『悠久機プロジェクト』全員集合。僕はもう一人じゃないんだ!

 しかし風見さんといい東藤さんといい、なんで怪しげな顔をするんだろう。まぁ気持ちはわかるけど。


「てっちゃんを勧誘するそうよ」

「てっちゃん? 鉄菊さんのことですか?」

「えぇ」

「……なんでまた」


 この反応から察するに、東藤さんも知っているのか。有名人なのかな? 僕は全然知らないけど。


 でもこの人達がいたらなんとかなる気がしてきた。僕にとって彼女たち以上に頼りになる存在はいないのだから。



 







 





 ジャンル変更があるみたいですね。この作品は何になるんでしょう?

 取りあえず今はファンタジー枠ですが、情報を見る限りでは大ジャンルは『SF』枠に分類されることになりそうです。小ジャンルは『VRゲーム』か『科学』のどっちかですけど。どっちだろう。

 『VRゲーム』がテーマって訳でもないですし、となるとやっぱり『技術、論理』の方がテーマに近そうですかね。

 『ファンタジー』から『科学』へ変更する作品なんて他にあるんでしょうか笑。

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