悠久機試作18号『土竜』
『スモールカップ』から約一ヶ月と少々。もう少しで夏休みが始まろうとしていた。
今日も可愛く賢い女の子二人から愛のある怒声が飛んでくる。
そんな我が『悠久機プロジェクト』は…。
「ふぇありー! 次の『皇帝改』はいつ完成するのよ!」
「い、今やってるよ……」
「ふぇありーさん。『土竜』の近接武器開発テストに付き合ってください」
「う、うん!」
「ふぇありーーーー。ひまーーーー」
「弓佳ちゃんは僕を手伝ってよ!?」
ブラック企業と化していた。僕にとってだけど。
『スモールカップ』以降、『風見鶏騎士団』を初めとした四つの有名チームから注文があり、僕はそれの製作に携わり(というよりほぼ一人で)、納期に追い詰められていた。
しかもたった今。今度は物好きな個人からの注文が入ったのだ。嬉しい悲鳴だけど、僕は『悠久機試作17号機『皇帝改』』の製産に全精力を注ぎ込むしかなかった。
量産型悠久機『皇帝改』は16号機『皇帝』を原型にして改良、簡略化した我が『悠久機プロジェクト』初の量産機だ。煩雑の塊といっても過言でない手動制御は排除し、『皇帝』に発生した不具合を修正した機体で、操作だけなら弓佳ちゃんでも可能なお手軽機体に仕上がっている。
ちなみに本来量産に成功している以上『試作機』というネーミングはおかしいんだけど、面倒なのでそのままナンバリングしている。
と、まぁそんな風に名前も含めてかなり個人向けに作った機体であるのに対し、『チーム』からの依頼が相次いでいるのは僕らの技術を盗みに来ているかららしい。
僕的には技術を盗られるのは嫌だから、『チーム』相手に売るのはやめようと弓佳ちゃんに進言したんだけれど、むしろあの子はこの状況を望んでいたようで僕の発言などまるで意に介さなかった。
そしてそんな風に仕事が山積みであるにも関わらず、風見さんや東藤さんからは容赦なく次世代悠久機『土竜』の研究開発の助手を僕に依頼してくる。
し、死んでしまう! この僕の横で暑さにぐでーっ、としているポンコツキャプテンを使ってくださいお願いします。
しかし、そんな言葉は呑み込むしかない。近接武器は振り回してデータ搾取出来ないし、『皇帝改』の製作は不器用すぎて邪魔にしかならない彼女はポンコツキャプテンにふさわしい働きをするのだから。
そう。だから、この僕に対する負担が尋常じゃないせいで僕は不満が溜まっている!!
ス、ス、ス、ストライキだ!
まぁそんなことはする気もないしそもそもそんなこと出来る勇気もないけど、この状況は何とかしたい。もう少しで期末テストもやってくるし、少し暇を頂きたい。
そんな思いを胸に秘めつつ、僕は大きく息を吸う。
「そ、そうだ! 弓佳ちゃん! 人手を! 人手を増やしてくださいお願いします!」
「えー? 人手ー? いるー?」
「いるよ! 僕だけじゃ限界だよ!」
うーん。と、腕を組み悩んだ様子を見せる彼女。これは僕の提案を受け入れてくれて、誰を引き入れるか悩んでくれているのだと思いたい。
「でも現状で何とかなりそうじゃない?」
「ならないよ!」
「私もふぇありーに賛成よ弓佳」
と、ここで助け船を入れてくれたのはまさかの風見さんだった。僕は彼女の溢れんばかりの優しさに感謝の目線を送ったけれど、風見さんはどこ吹く風。うん。やっぱり僕のためじゃないんだね。わかってた。
「これから先、個人への販売が増えてくると『メンテナンス』で儲けることも出来るわよ? でもそこまで手を回すとなると流石にふぇありーだけじゃ手が足りないわ」
「あー。なるほどねー。でも私たちの目的はお金儲けすることじゃないし……」
「ま、好きにすればいいわ。キャプテンは貴女だし、自分自身で決めなさい」
と、風見さんは締めくくり、何事もなかったかのように再びデスクに向かった。
確かに風見さんの言うことも弓佳ちゃんの言うことにも一理ある。僕たちの目的はより良い『悠久機』を作り、自分達で満足することにある。言わば自己満足の延長線でしかないのだ。
『悠久機』を売るのはその目的を達成するための手段であるわけで、それが目的にすり変わってしまっては元も子もない。
だから人を増やして事業を強化することに弓佳ちゃんは反対するのだろう。
しかしそれとこれとは話が別! 僕は僕自身の負担を軽減するためにはここは食い下がるしかないのだ!
あと少し『先輩』にも憧れる! 風見さんは僕の後輩のはずだけど、知らぬ間にヒエラルキーは逆転して僕が後輩みたいになってるし、真の意味での『後輩』が欲しい!
「た、頼むよ弓佳ちゃん! テストの勉強もしたいし、ちょっと忙し過ぎるし……」
「うーん。ふぇありーがそこまで言うならわかったよ!」
「ほんとっ!?」
「うん! 私に任せて! てことでふぇありー、明日の朝5時50分に私の家に集合ね!」
「また!? また僕が勧誘するの!?」
「あったりまえじゃーん。まぁ実は前から気になってた子がいるっちゃいるんだよねー」
なんだと!? またあの風見さんの時のように滅茶苦茶な勧誘をするつもりなのかこの子は……!
か、勘弁してよ……。と思ったけれど、自分から言い出した出前、弓佳ちゃんに押し付ける事なんて出来ないし……。
はぁ。と僕は小さなため息をついて、しぶしぶ弓佳ちゃんに頷いたのだった。
なるべくペースを戻したいと思っているのですが、なかなか上手くいきません。ごめんなさい!
ストックはできつつあるのですが、如何せんここにきて今後のプロットを作り直していたりしてます。やっぱり物語が長くなると難しくなりますね。同じことを続けていても飽きますし、かといって無理な展開をぶちこんでも矛盾が……。
まぁしばらくのんびり更新です。お付き合いくださると助かります! プロットが完成すると一気に書き上がります(たぶん)




