結果発表
スタジアムは想像以上の盛り上がりに包まれていた。通常の決勝戦よりも人の入りが多いような気がする。
様々なチームがスタジアム内部に集結している。さっきまで敵チームだった人達も、ほとんどが会場に集まっているような異様な光景だった。
こんなの大規模大会でしか見たことないような状況だ。
そんな大観衆の中、僕は周りを見ることが出来ないでいた。
味方チームと観客からの視線が怖い。
公式大会で『皇帝』のようなふざけた兵器は歓迎されない。お前がふざけた兵器を使ったせいで負けたのだと言われたら、僕は言い返す舌を持たないからだ。
元々、こんな兵器を公式戦で使ってくる人達は普通他人の評価など気にしていない。
弓佳ちゃんがいい例だろう。彼女は他人にどう思われようか『皇帝』を誇りに思うだろうし、むしろそんなことを言う人を捩じ伏せてしまうカリスマ性を持っている。
僕だって『皇帝』のことは誇りに思っている。だけど、誹謗中傷の嵐に苛まれるのはまた違う話だ。
僕は彼女のように強くはないんだ。所詮僕は弓佳ちゃんという光に導かれ、その回りに集まっている羽虫に過ぎないんだから。
結局、やっぱり僕は後ろ指を指されるのが怖い。『悠久機プロジェクト』のためならどんな事も出来ると思ってはいたけれど、やはり過去のトラウマはそう簡単には払拭出来ないらしい。
『閃光の妖精』のせいで『悠久機プロジェクト』が負けた。なんて思われたら……。
「ふぇありー。なんで下向いてるの? ほら。始まったよ?」
僕が不安に苛まれていると、紅く光る仮面をつけた弓佳ちゃんが下から覗きこんできた。スタジアム中心では、やたらとテンションの高い司会者が空中に浮かび上がるスコアボードを眺めながら今試合の解説をしている。
『さーてさてさて、それでは! 皆さまお待ちかねの結果発表に移りたいと思います!!』
僕は沈む心を無理矢理持ち上げながら、顔を上げて前を見た。
スコアボードには既にスコアは記録されているが、チーム名は空白になっている。司会者の発表に合わせて、あそこにチーム名が記入されていくのだろう。
『上位選出チームは8チームの内、チーム総得点が高い順の4チームとなります。さて、映えある『スモールカップ』、第一回戦の通過チームは……!?』
ドラムを叩くような効果音が会場に響き渡る。せめて四位には入っていますように。四位には入っていますように。
そしてドラムの音が止まると同時に、司会者が手を高く掲げながら息を大きく吸った。
『第一位、『働く大人たち』! 第二位、『チームスペツナーズ』! 第三位、『アンチRW』。そして上位進出枠最後の第四位は……』
司会者から結果が発表される度に、会場に大きな拍手が起こる。そしてやはり一位は『働く大人たち』だった。あれだけ淡化を切られ、そして僕らは宣言通り達成されたのだ。
そして司会者はもったいぶって第四位の発表を渋っている。
たぶん会場の皆もなんで第四位発表を渋るんだよ、と思ってるかも知れないが、僕の心臓には究極に悪いから、早く発表してほしい。
時が止まったような。不安な気持ちが僕を取り囲む。高校受験の合否を見に行ったときよりも緊張している自信がある。心臓は口から飛び出てきそうな程高鳴っている。
大丈夫。大丈夫。僕たちは勝っている。『フリー』では全滅したけれど、結果的に敵車両を二台も破壊したんだから。
『第四位は……チーム、『H&K』!!』
しかし、司会者の口から発せられたのは無情にも僕たちの名前ではなかった。
その瞬間、僕の心の奥から気持ちの悪いトラウマが甦ってくる。僕は心臓を握りつぶされるような不愉快な何かから逃れられない。
僕のせいで負けた。僕のせいで負けたという自責の念が僕を捕らえて離さない。
スコアボードを見ると、僕たちのチームは五位に位置しているのが見えた。四位とその得点差はとても僅差なものとなっていて、下手をしたら本当に僕の自爆がなければ勝っていたかもしれなかった。
目の前が真っ暗になるような感覚が僕を襲う。
あそこで自爆しなければ。いやそもそも『皇帝』を動かしている時に油断なんてしなければこんなことにはならなかったかも知れない。他のルールでももっと上手く立ち回れたかも知れない。
そんな風に僕からは止めどない後悔の念が溢れ出していた。
『上位進出の4チームと、惜しくも敗退してしまったチームへ皆さま大きな拍手をお願いいたします!』
と、目の前の司会者が告げると会場からは大きな拍手が巻き起こった。
しかし僕の胸中に渦巻くのは二回戦にすら上がれなかったという後悔と、チームメイトに対する申し訳ないという気持ちだけだった。
『さて、ではこの結果発表に見えているそうなので一位の『働く大人たち』にお話を伺ってみましょう!』
と司会者は僕たちからは少し離れた所にいるヒョットコ集団に声をかけた。
そして、その中の一人はゆっくりと壇上に上がってくる。相変わらず哀愁すら感じさせるその姿を見ると、本当に彼らが総得点一位なのか疑いたくなる。
『いやー、一位おめでとうございます。流石の前評判なだけはありましたね。何か応援してくれた方々へ向けて一言頂けますか?』
『応援ありがとうございました。次も頑張ります』
司会者の質問に対し、『働く大人たち』の代表者はその言葉だけを発すると、ペコリと頭を下げた。
少し身構えていたけれど、どうやらそれは杞憂に終わったようだ。
彼らは僕たちに対して死体に鞭を打つような真似はしないみたいだ。試合開始前に大口を叩いていたのは彼等なりの燃焼剤なのかもしれない。
『さて、それでは続いて二位の……』
と、次々と司会者が勝利チームを呼び一言インタビューを行っていく。その度に会場からは小さくない拍手が舞い上がる。
この大観衆に緊張しているようで、勝利チームはそれぞれ当たり障りのない事を言った。
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戦車を運用する際は斥候が先に地形の調査を行うそうです。地面がぬかるんでいたりするとそれだけで戦車はお陀仏になってしまう可能性がありますからね。
『悠久機』もそれをするべきだと強く思います笑。




