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巨大人型ロボットに物理法則を適用したら一体どうなるのだろうか  作者: 勇者王ああああ
悠久機試作16号機『皇帝(ツァーリ)』
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『風見砲』

 敵を仕留めることが出来るのは『皇帝』に備え付けられた『風見砲』のみ。


 この状況はある意味、戦闘兵器にとっては最も相応しい、最も望んでいる状況と言えるかも知れない。

 最後に残された頼みの綱。我等『悠久機プロジェクト』の絶対にして唯一の兵器が今求められているのだ。


『……ですので、遠距離で、かつ高所から『風見砲』で敵戦車を狙い撃てばひょっとしたら……』


 と、不安げな様子で東藤さんはそう締め括った。


 遠距離から、か。


『外したらどうするの?』


 と、聞くのは弓佳ちゃん。その疑問は至極当然だろう。『皇帝』はその巨体のせいでコソコソ狙撃、みたいなことは不可能に近いし、そもそも『風見砲』で狙撃なんて出来る気がしない。


『……ふぇありーさんならできます』


 いやいやいや東藤さん無理だよ! おだてないでください!

 なんて言葉は言えるはずもなく、ただ僕は黙り混むしかなかった。

 

 実際問題やるしかないんだ。出来る、出来ないの問題じゃない。他に手はないんだから。


『……ダメだね。その作戦は承認できないよ!』

『だったらどうしたらいいんですか弓佳さん』


 少し苛立ったように東藤さんが弓佳ちゃんに問いかける。


『……突撃あるのみ。だよ』

『突撃なんてしても迎撃されてお仕舞いです! そもそもそれこそ『風見砲』を外したらどうするんですか! その瞬間蜂の巣ですよ!?』

『でも後ろでコソコソ狙い打つなんてイヤだよ! 『皇帝』は近距離でも戦える! 実際戦車を近場で撃退したじゃん!』


 そこで一旦言葉を切り、弓佳ちゃんは落ち着いた口調で僕たちに問いかける。


『ふぇありーと風子ちゃんはどう思う?』

「え? ぼ、僕?」

「……私は弓佳に賛成よ。自分で設計しといて言うのも何だけど、『風見砲』を遠距離で撃っても当たらないわ」

 

 僕とは違って、しっかりと自分の考えを述べる風見さん。


 僕は……どうだろう。確かに突撃した方が当たる確率は上がるだろう。だけどそれと同時に返り討ちに会う可能性は果てしなく増大する。


 それを考えた上で……。僕の選択は。


「えっと、その、僕は皆の決定に従うよ。どんな作戦であれ、最善を尽くすし、……絶対に成果をあげることを約束する」

『……わかりました』


 と、東藤さんはそこで一旦言葉を切り、小さく息を吸い微かな溜め息をつきながら言った。


『では、『皇帝突撃作戦』を決行します。ふぇありーさん、風見さんは配置についてください』

「……了解!」

「わかったわ」


 と、東藤さんは決意したように締め括った。そして僕と風見さんはその言葉に力強く頷き、自らの定位置に戻っていく。




ーーーーーーー



『『皇帝』発進!』

「了解。『皇帝』、前線へと進路をとります!」


 弓佳ちゃんの声に合わせて、僕は左の操縦幹を前に倒し、足元のペダルを操作した。

 目指すは敵の残存兵器である重戦車。せめてもう少し情報が欲しい所だけど、もうこの際仕方がない。


『敵は丘の上に陣取り、その装甲を前面に押し出しながら鎮座しているせいで味方の兵力は攻めきれないみたいです。このままではタイムアップでこちらの負けが確定します』

「そっか……。責任重大だね」


 敵方は兵力で勝っている以上、無理をして殲滅戦を行う必要はない。無論、中には得点を稼ぐために攻勢に転じたい敵もいるのだろうが、両軍が睨み合っているこの状況ではそれも難しいだろう。


 だから、僕たちの動きが重要になるのだ。


 僕たちが戦場を乱せば味方だけではなく敵も突撃しやすい状況に成り代わる。すると必然的に敵の統率は崩れ去り、僕たちの陣営にも勝利の光が見えてくる。


 『風見ガトリング』を切り離したお陰で気持ち程度速度が向上している。その分揺れが酷くなっているはずだけど、風見さんからはクレームは飛んでこない。我慢しているのかもう慣れてしまったのかはわからないけど、きっと前者だろう。




ーーーーーーーーーー



『『皇帝』、戦闘領域に侵入! 唐突に接敵する可能性もあります。注意してください』


 『皇帝』を走らせて暫くすると、味方陣営が構えている場所が見えてきた。


 両軍が睨み合っているこの場所は二つの丘に囲まれているような場所だ。しかしこちら側の丘の方が低く向こうの丘の方が高いため、常に敵からは高い位置から攻撃されてしまう。


 最初の場所の取り合いが勝敗を分けるのはここのせいだ。僕たちは開始が遅れているから、完璧に地の利を敵に譲っている。


 大きな遺跡を越えないように注意しながら索敵すると、『皇帝』の視線の先に大きな戦車がどっしりと構えているのが目に入ってきた。

 通常の戦車の1.5倍程の大きさを持ち、巨大な砲身から繰り出される砲撃は容易に『皇帝』の装甲を貫く事が想像できる。

 まるで巨大な岩に小石をぶつけるかのように、歩兵からの攻撃をその強固な装甲で弾き飛ばしている。


『ふぇありー! あれはモデル『ラーテ』よ! 動きは鈍重だけど、並大抵の攻撃じゃあの装甲を抜く事は出来ないわ!』


 と、風見さんの声が届く。

 こちらが向こうを捉えているということは向こうからも見えているということ。

 まだ遺跡を越えていないから狙っては来ない……とは思うけど、気を引き締めることに越したことはないだろう。


 そして手前の丘の頂上付近には大破した味方陣営の戦闘車両が転がっている。そこで数人の兵士が頑張っている姿も見えた。


『ふぇありーさん! 味方の援護の約束を取り付けました! 合図があったらそこから加速して最高速度を維持しつつ、敵陣に向かって突っ込んで下さい』

「了解! 任せて! 風見さん何かに掴まってね!」


 味方も何かにすがりたい気持ちが強いのだろう。すがった先が例え藁より貧弱なものかも知れなくても。


 そして僕は再び口元に笑顔を浮かべて操縦幹を握りしめる。既にガタが来はじめている機体だけど、もう一頑張りしてね、と願いを込めつつ僕は大きく深呼吸をしたのだった。



 










スターウォーズが見たいですねぇ。あれだけの質量が四本足で氷上を歩けるとは……。

それにしても結局巨大ロボットの恒久的弱点である『転倒』でやられてしまうとは。

 ルークを的確な攻撃と誉めるべきなのか、そこの対策をしていなかった帝国軍兵士を叱るべきなのか難しいところです。

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