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巨大人型ロボットに物理法則を適用したら一体どうなるのだろうか  作者: 勇者王ああああ
悠久機試作16号機『皇帝(ツァーリ)』
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『皇帝』快進撃!?

 実はこの牛歩作戦ーーと言ってもこれが最高速度なんだけどーーは、緻密に計画された『フリー』での『皇帝ツァーリ』運用作戦の一つだ。


 こんなことを言っては根も葉もないけれど、『皇帝ツァーリ』には前線で戦える程の力なんて皆目持っていない。ていうよりそもそも、前線にたどり着く前に攻撃されて轟沈するのが目に見えている。

 むしろなるべく後ろに下がって、敵の注意を引いているくらいが丁度いい。


 だから味方に頑張ってもらうのだ。名付けて、『皇帝ツァーリ』が後ろで敵の注意を反らすから、その間に味方さん頑張ってください作戦。

 

 他力本願この上ない作戦ではあるが、『皇帝ツァーリ』の性質を考えると仕方がないと割りきるしかない。


『味方陣営、戦闘領域に侵入開始しました。『皇帝』、予定通り出遅れています』

「予定通り出遅れるってやっぱり悲しいね」

『まぁ仕方ありません。第二フェイズへと移行してください』

「了解」


 あらかた味方が僕の回りからいなくなったと確認してから、僕は小さく深呼吸を行った。今から行う第二フェイズも『皇帝』にとっては正念場だ。

 もしかすると誰も見てない中でクライマックスを迎えるかも知れない。


「では第二フェイズに入ります。『皇帝ツァーリ』、変形します。風見さん。準備はいい?」

『準備なんて常に出来てないみたいなものじゃない』

「ははっ。まぁそうだね。じゃあいくよ」



 『皇帝ツァーリ』に備えられた新機能、『変型』。これは地上を歩行した際の進行速度の遅さを考慮して新たに整備したロマンと実用が中途半端に入り交じった機能だ。

 

『では、『皇帝』変型してください』

「了解! 『皇帝ツァーリ』変型します!」


 僕はコックピット上部にあるスイッチを入れた。するとそれと同時に僕の体を固定するベルトがきつく締まり、途端に身動きが取れなくなった。

 続いて電気的なモーターが激しく駆動する音が聞こえてくる。


『各関節部、連結完了コネクトコンプリート。閉脚完了。続いてキャタピラを展開します』


 『皇帝ツァーリ』はまるで正座をするかのように足を折り畳み、巨大な足に隠されていたキャタピラを展開する。

 その正座をする際に『皇帝ツァーリ』はかなりのスピードで姿勢を落としたので割りととんでもないGが僕にかかり、顎を強く打った。あいたたたた。

 けど、なんとか大丈夫だ。ここが仮装空間でよかった。

 これは改善点だな。変型もゆっくり変型しないと変型しただけで死んでしまうよ。


 変型の終了を知らせる合図として、きつく絞まっていたベルトが緩んだ。

 地盤が予想以上に圧縮されたことと、僕が顎を強く打ったこと以外は想定内だ。


 ちなみにこの変型は無論一方通行だ。人型と戦車型を行き来するなんて芸当は次回以降の『悠久機』へ丸投げしている。


『『皇帝ツァーリ』、人型から戦車モードへと移行完了。ふぇありーさん、具合は如何ですか?』

「まぁ最悪だけど、なんとか大丈夫だよ。風見さんは?」

『……あたまうった』


 消え入りそうな声がスピーカーから聞こえてくる。

 ちなみに風見さんは『皇帝』の肩部に作った専用の第二コックピットに乗り込んでもらっている。ただそこは正式のコックピットでないから、機体の運動をもろに受ける箇所ではある。


 無論、風見さんをそこに配置するのも作戦の一つだ。彼女には悪いけど、耐えてもらうしかない。


『……それでは、作戦を続行します。『皇帝ツァーリ』、進軍を開始してください』

「了解」


 イライラしながらふて腐れている風見さんを想像しながら、僕は操縦幹を前に倒した。







ーーーーーーー



 ちなみに『皇帝ツァーリ』の人型形態の最高速度は約15キロだ。もちろん単位は時速。それに対して、この戦車形態ではなんと最高速度は45キロまで達する。理論上は。

 まぁ、『地面状態』が最もいい場合に限るんだけどね。


 さて、だけどもちろん今回の路面状況は『悪路』だ。だから残念ながら『皇帝ツァーリ』の最高速度を拝むことは出来そうにない。

 

『ちょちょちょちょっとふぇありー! アンタ少しはスピード落としなさいよ!』

「いや、すごい遅いよこれ」


 後ろにとてつもなく大きいわだちを作りながら、『皇帝ツァーリ』はゆっくりとその足、いや、そのキャタピラを動かしていた。

 速度的には非常に遅いものの、動く様子は戦車の迫力を軽く凌駕している。例えるならば、表現的には『動く要塞』が一番しっくりくる気がする。

  

 小さな木々や岩は虫けらのように踏み潰し、荒れた地面はカチカチになるまで踏み固められる。移動時に発生する音は災害のそれと等しい。


『こっちの揺れが酷いのよ!』

「と言ってもねぇ……」


 振動の不快さはもちろん振動の大きさに起因するが、実は振動数も大きく関係している。彼女が揺れが不快と感じているのは、たぶん『皇帝』の振動数が丁度不快と感じる振動数と合致してしまっているのだろう。


 だからスピードを多少落としても関係ないのだ。うん。ていうかこれ以上スピードを落としたら逆に前に進めなくなるから、我慢してね風見さん。


『戦闘の音が激しくなっています。『皇帝』の位置は常に敵には筒抜けですので、手元の盾でしっかりコックピットだけは保護してください。最悪風見さんはどうなっても構いませんので』

『ちょっと! どういうことよそれ!』

「あはは……。今戦闘はどういう状況なの?」


 『皇帝』の目についている視覚センサーからも勿論視覚情報は入ってきている。が、如何せん距離がまだ開いているため、詳細な様子までは掴むことは出来ない。一際大きな瓦礫の近くで味方の布陣と敵の布陣が睨み合っているのはなんとなくわかるんだけど……。


『激しい撃ちあいが続いていますが……。こちらが少し押され気味ですね。まぁ始めに出遅れているので仕方がありませんが』

「そっか……。ならそろそろ敵が見えてもおかしくないね」


 頼むから、何となくあのデカイのを撃ってみよう。なんて思わないでくれよ。この距離でも撃たれたらこの機体は終わってしまうんだから。

 それにしても、あれだけ発進を遅らせたにも関わらず善戦しているなんて味方もやるじゃないか。


『……やはり想像通り、敵布陣に『働く大人たち』の姿は確認出来ていません』

「やっぱり」


 そしてもちろん、僕たちが前線からこの距離を保っているのには意味がある。

 今のように膠着状態にある戦況を覆すのに最も適した戦法は『多方面からの奇襲』だ。特に背後に回られ、挟み撃ちに合うような状況になると力の均衡は一気に敵側に傾く。

 僕たちはそれを狙って『裏取り』してくる部隊を迎撃する任務に勝手に就いている。という訳だ。


 そして、ある意味単身で敵地に突入するわけだから、そんな任務には熟練のチームが当たってくるのは定石だ。


 僕は周囲の警戒を怠らないようにしながら、『皇帝ツァーリ』の計器も確認する。計器はエンジンの回転数やら、主要間接部にかかる負荷等々やらを表しているが、今のところは特に問題はなさそうだ。強いて言うなら後付けの『風見ガトリング』による腕、及び肩回りの負荷が気になる程度で、それ以外はシミュレーション通りに収束している。


 そしてそのまま進むこと数分。少しずつ敵と味方の輪郭がはっきりしてきたのは良いものの、それに比例するように『皇帝』が狙撃されるという不安感が募っていく。

 近付くにつれて増大する戦闘の音も僕を不安にする材料の一つだ。


「東藤さん。む、向こうでこちらを撃ってみよう、なんて動きはないよね?」

『相当激しく戦闘を行っているみたいなので、こっちに構っている余裕はない、と信じたいですね』


 結局、風見さんの予想も希望的観測に過ぎないのだ。ひょっとすると次の瞬間、『皇帝』は木端微塵になっているかもしれない。


 敵の砲弾がいつ飛んできても……。

 

 と、そこで僕はふと視線の先に不自然な棒状のものを捉えた。

 あれ? なんだあれは? まるで遺跡に同化するように、不自然な人工物が一本飛び出ているような……?


 そして、もう少しよく見ようと『皇帝』を近付けた時、それが確かに動くのが見えた。

 

 それは見間違えようがなく戦車の砲身だった。


 待ち伏せ!? まずい!


「風見さん! 『皇帝ツァーリ』、急速転回! 捕まって!」

『え?』


 僕はとっさに足元のペダルを踏み、『皇帝ツァーリ』の左キャタピラを回転させた。

 すると『皇帝ツァーリ』は慣性力により上体をうねらせながらも左半身を大きく後退させる。その際に僕のいるコックピットが大きく揺らいだが、そんなことは重要じゃない。


 続いて起こる何かが爆発するような音と、質量が空気を切り裂く音。そして構えた盾に砲弾の破片がぶつかるような音が襲ってくる。

 主砲はかわせた……のか!? もし直撃していたらこんなのとは比べ物にならない衝撃が僕を襲っているだろうから、たぶん直撃は避けれたんだろう。


『ふ、ふぇありーさん! 何がありました!?』

「敵だ! 擬態してるから分かりにくいけど、そこにいるよ!」


 まさかの待ち伏せ。『皇帝ツァーリ』を潰す為にわざわざ隠れていたとでもいうのか。

 

 せっかく好位置に待ち構えたのに、味方を素通りさせて『皇帝』を叩きに来るなんて。

 『皇帝』の囮作戦としては大成功だろうけど、『皇帝ツァーリ』本体としては非常に不味い状況だ。早く体勢を立て直さないと次撃が来る。


『あ、あの音は……』

「なに? どうしたの風見さん!」

『あれは『風見レオパルド』よ! あいつらこれ見よがしに……!』


 『風見レオパルド』。『風見鶏騎士団』お抱えの爆速戦車だ。こちらに風見さんがいることを知ってワザワザそれをぶつけて来たのか、それともたまたまか。


 まぁ何にせよ。僕たちのやることは変わらない。


「『風見砲』、『風見ガトリング』発射体勢! あんな紙戦車、一撃で終わらせてみせる!」

 

 体勢を立て直しつつ、『皇帝ツァーリ』の右腕と『風見砲』を敵予測地点へと向けた。


 まずは索敵だ。敵は何処から撃ってきた? 

 どこだ? どこにいる?



 

 

 


















 絶賛エターナル中の僕の『NEETの冒険』という作品があるんですが、最近異常なアクセスがあったんですよね。それもこの作品の三、四倍くらい。

 別にいいんですけど、果てしなく謎です。なんでだろう? もしわかる方がいれば教えてください。

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