ふぇありーダンス
「ちょ、ふぇありー貴方どこに行くのよ!」
「いいから着いてきて!」
試合が始まると同時に、僕は真っ直ぐ敵陣に向かって走り始めていた。本来、最寄りのA旗を確保、もしくは二つ目のB旗を奪取しにいくことがセオリーだが、あえて僕は三つ目のC旗を目指して走っている。
『ふぇ、ふぇありーさん! 物凄い苦情が他チームから出ています!』
「無視しといて!」
C旗は両チームから等距離に位置しているので、基本的に激戦区になるのは確定的だ。だから一人や二人で行ったとしても、あっという間に狙い撃ちされる。だが逆に言えば、ここを押さえれば勝ちは見えてくるのだ。
『味方、A旗を確保! 敵、E旗を確保しました!』
味方に確保された旗は青色、敵に確保された旗は赤色に写る。中立は白色だ。
目の前に白色の旗が見えてきた事を考えると、あれはB旗だろう。だけど、僕の目的はそこじゃない。
「ちょ、ふぇありー!」
「だから黙って着いてきて!」
僕の行動に困惑する風見さんをたしなめながら、僕は戦場をさながら妖精のようにひた走る。
そして、B旗を越えてC旗に差し掛かった頃、僕はおもむろに腰につけている手榴弾を取り出した。
ここは僕が昔発見した、ある『ポイント』だ。ここからならいい位置に目印が見えるんだ。
「ふぇ、ふぇありー? あんた一体何して……? 敵なんてまだどこにも……」
「まぁ、勘だけどね!」
と言いつつ僕は手榴弾のピンを抜く。そしてそれを思いっきり敵陣に向かって思いきり放り投げた。
本来、手榴弾はピンを抜いてから5秒で爆発するように設計されているが、僕のは特別製だから7秒で爆発するように調整してある。
そしてその爆弾は狙い通りに遺跡の屋根に当たり、その勢いを若干殺しつつ敵陣へと落下していく。
「はぁ!? そんな適当に投げて当たるわけないでしょ!?」
「さぁ足を止めないで!」
僕が風見さんを急かしつつ再び走り始めた瞬間、大きな爆発音が辺りに響き渡った。
呆れた顔の風見さんを放置しつつ、僕は足を進めていく。
『ふぇ、ふぇありーさん! 二人倒しました! しかも『働く大人たち』です!』
「よしっ」
「はぁ!? なんで!?」
「次! 風見さん『発煙弾』貸して!」
と、そう言いつつ僕は困惑する風見さんから『発煙弾』を半ば強引に奪い取り、即座にピンを引き抜いて投擲する。狙いはC旗の少し奥。
そして僕の狙い通りに落下したスモークは、モクモクと緑色の煙を大量に噴出しながら、敵陣とC旗の間の視界を遮っていく。
『味方、B旗奪取中! 『悠久機プロジェクト』はC旗奪取を進行中です!』
よし。無事にC旗の奪取圏内に入ったから。あとは15秒ここに留まることが出来れば奪取成功だ。
「風見さん! 伏せて!」
しかし次の瞬間、僕たちの近くに銃弾の雨が降り注いだ。僕は間髪入れずに、構えていた『閃光弾』を敵予測地点に向かって鋭く投げる。
スモーク越しに伝わってくる目映い光を直視しないように注意しながら、僕は次々と手持ちの『閃光弾』を投げつける。
「何してるのよふぇありー!」
「足止めだよ! 一時的に行動不能にするなら非殺傷兵器の方が都合がいいんだ!」
風見さんが伏せたまま怒ったように言った。この人の過去から考えるに、これ程最前線に居座って射線に晒されると言った経験が皆無なんだろう。まぁ怖いだろうなぁ。
『ふぇありーさん! C旗奪取できました! 撤退してください! 物凄い数の敵がやって来てます!』
「聞いた? 風見さん逃げるよ!」
そして僕は敵陣に背を向け、脱兎の如く逃げ出した。C旗を奪取したらもう用事はない。防衛は味方に任せよう。
「ちょ! 待ちなさいよ!」
そして今さらB旗を奪取した味方とすれ違い様に畏怖の視線を向けられつつ、僕は最前線を後にした。
さて。次の狙いは敵最奥地のE旗だ。
ーーーーーーーーー
「何考えてるのよ!!!」
「ま、まーまー風子ちゃん……」
「あっははははは! 流石は『閃光の妖精』ですねぇ」
たった今ルール『ドミネーション』が終了し、続いて『デスマッチ』へ向けて準備時間の真っ最中だ。だけど何故か、それは風見さんの僕への罵倒タイムへと昇華されていた。
ちなみに僕はBチームで得点で言うなら断トツの一位で、二位とは約三倍の得点差を稼ぎだしていた。しかし、ある意味僕だけで三人分しか獲得していないので、チーム順位でいうならば真ん中より少し上程度に留まっていた。
「42キル2デス、8奪取0防衛ですか。……こんなアグレッシブで攻撃的な妖精なんて歴史上いるんですかね……」
と、東藤さんが半ば呆れたように僕の結果を見ながら呟く。
僕的にはいつも通りただ戦場を走っていただけなんだけどね。目に入る敵を撃ち倒し、囲まれそうになったら閃光弾を放り投げてから脱兎の如く逃げる。そして敵が最も嫌がる拠点を確保し、戦場を掻き乱す。
それだけしかしてないんだけどなぁ。
「ふぇありー! 最初のグレネードを投げたのは何でなの!」
「ち、近いよ風見さん……。えっと、あのステージは昔研究してたから、あそこから遺跡屋根にむかって投げると『D旗』手前に落ちる事は知ってるんだ。多少できる相手ならまずは二つ目の拠点であるD旗を確保しに行くはずだから、あえて狙ってみたんだ」
「は? なんでそんなポイント知ってるの?」
「え? だから一人でプレイしているときに、暇だったから手榴弾投擲ポイントをひたすら探してた事があるんだよ」
「は? 全部で百ステージ近くあるのよ? 全部調べたの?」
「う、うん……。友達もいなくて暇だったし、たくさん練習もしたし……」
「あ、呆れた……。そんな人って本当にいるのね……」
目を丸くした風見さんがどことなく悲しそうな顔をしながら僕を見つめる。やめて! そんな哀れむような目で僕を見ないで!
そして風見さんは呆れたようにため息をつくと、やれやれと首を振った。
「まぁ何にせよ、このままじゃ予選突破は難しいわ。『悠久機プロジェクト』は今4位。次の『デスマッチ』で相当頑張ったとしても、その先の『フリー』では点数を取れる気がしないしね。足手まといが三人もいるからね」
「……貴女の点数もふぇありーさんに引っ付いていたとは思えない程少ないですけどね」
「はぁ!? こいつが全ての敵をかっさらっていくんだから仕方ないじゃない! しかも弾薬もほとんどふぇありーにあげちゃったし!」
「ま、まーまー二人とも」
と、睨みあう二人を弓佳ちゃんが宥める。
しかし、風見さんの言うことも最もだ。やはりチーム戦において『数』は大きな大きな要素になる。僕が一人で活躍した所で、『悠久機プロジェクト』の勝ちには繋がらない。
『フリー』、すなわち『皇帝』での得点が現実的ではない以上、次の『デスマッチ』で今以上の成績を残さなければ、勝ち上がるのは難しいだろう。
「まぁだからといって私達はふぇありーさんに頼る他方法はありません。作戦はこのまま継続、『勝手に頑張る』です。ふぇありーさん。次もお願いしますね」
と、東藤さんが少し首を傾げながら言った。
核搭載二足歩行戦車、といえば『メタルギア』が有名ですが、JISという日本の工業規格を基本にすれば、『メタルギヤ』が正しい言い方なんですよね。『メタルギヤ ソリッド』。うーん。なんとなく微妙な気もします。
まぁ、だからどうしたって話ですが……笑




