ふぇありー、武器を持つ
「東藤さん! 『腕部』周辺の制御関係終わったよ!」
ただ今日曜日の夜8時。トイレ休憩やご飯を食べにログアウトしているけど、それを除いても余裕で24時間以上は作業している。
なのにも関わらず、僕の頭は冴え渡り作業がぐんぐんと進んでいく。
何だかここに来て楽しくなってきた。と、感じてる自分が怖い。閃光の妖精24時間稼働説。案外間違いじゃない気がしてきた。
「もう終わったんですか!? ふぇ、ふぇありーさん、貴方どんな集中力してるんですか……?」
僕と弓佳ちゃんが制御式の再設計を行い、それを東藤さんがチェックするという態勢で進めているこの作業も、僕の作業能率が飛躍的向上を見せているせいか異常な進捗状況を産み出していた。
横で弓佳ちゃんが驚愕と畏怖が入り交じったような視線を僕に向けている。
ふはは。どうだまいったか。
そういえば高校入試の時もそうだった。学校を休みがちだった僕は驚くほどに成績が悪かったんだ。それこそ中学校での成績ワースト3に入る自信があったほどに。
だけど、弓佳ちゃんや東藤さんと出会って、この人たちと同じ高校に行くために死ぬ気で勉強した。僕の通うこの高校は県内でトップの進学校だし、自分で言うのも何だけど、結構凄いと思う。
東藤さんは言わずもがなだし、弓佳ちゃんはあの雰囲気に似合わず意外に勉強出来るし。たぶん僕は追い込めば追い込むほど集中力が増すタイプなのだろう。
今ならそれこそ何だって出来る気がするもん。友達を増やすのとかは無理だけど。
「このペースなら締め切りには間に合いそう?」
と、聞くのは弓佳ちゃんだ。手を休めることなく東藤さんにそう尋ねる。
「うーん。そうですねー。間に合いはしますが、結局私のチェックが終わるのがギリギリになりそうなので、実機試験は出来なさそうですね」
と、東藤さんも手を止めずにそう答える。
このRW自体も巨大なシミュレーション装置のようなものだから、今仮想シミュレーターで実装している制御が実際上RW内で大きくかけ離れる、ということは起こりにくい。だから現実世界程、実際の試験が大事というわけではない。
が、やっぱり起きにくいというだけであって、実機に制御を乗せて機体を動かすと何かしらの問題が見えてくるものなんだよね。
まぁ今回は仕方がないけど。
「上手くいくかどうかは神のみぞ知るってやつだね」
と、弓佳ちゃんが東藤さんの言葉を引き継ぎ、そう締め括った。
「そうですね。祈っていて下さい」
そして再び二人は黙々と作業に戻った。やはりこの切り換えの早さが、弓佳ちゃんと東藤さんの成績の良さに繋がっているんだろうなぁと思いつつ、僕は口を開く。
「東藤さん、僕はどうしたらいいの?」
「あぁ。もうふぇありーさんは結構です。お疲れさまでした」
「え? もういいの?」
「えぇ。後は私と弓佳さんで何とか出来ます。ふぇありーさんは『スモールカップ』の準備でもしていてください」
「そ、そう」
「こちらの作業が終わり次第、『スモールカップ』への応募も済ませておきますので」
「……わかった。ありがとう。じゃあお願いするよ」
なんだ。今いい感じに上がってるのに。
まぁいいか。確かに東藤さんの言う通り、僕は大会の準備もしないといけないのは事実だ。
今回みたいな突拍子もない公式戦は始めてだから、なるべく早めに準備を始めたい。
フリーマッチで練習とかもしたいし。
と言うことで僕はお言葉に甘えて、一旦ログアウトすることにしたのだった。
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次の日。僕は昨日の反動で学校もRWも休んだ。
やはり。無理はいけない。
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火曜日夜7時RW。僕は一人で『倉庫』から昔使っていた武器を引っ張り出していた。
『埃を被る』という表現は厳密には間違っているけれど、僕の心情的には埃まみれの銃を、僕は ゆっくりと握りしめた。
PDW(Personal Difference Weapon)、『MP7 Full Custom』。それがこの武器の名前だ。全長約60センチ、重さ約1.5キロの自動小銃。黒く光るその銃身はまるで再び使われることを喜んでいるかのように輝いていた。
実在するMP7という銃に、僕なりのアレンジを施した準改造銃だ。まぁ改造銃と言っても、大した事はしていないけど。
僕が行った改造は軽量化と、連射速度を落とした事くらいで、むしろ使う人によっては改悪と捉えられても仕方がないのかもしれない。
僕はその銃を構え、感触を確かめる。
うん。久しぶり。まだ感覚は忘れてないみたい。
そして僕は銃をテーブルの上に置き、空弾倉に手を伸ばす。すると、それとほぼ同時に風見さんがその体を粒子に包まれながらログインしてきた。
「あ、風見さんこんばんは。どうしたの?」
「いや、ちょっと東藤のデータを……って。あんた何してるの?」
「何って、弾を込めてるよ」
「え。それが貴方の武器?」
「う、うん」
風見さんは僕の銃を手に取り、不思議そうにまじまじと眺めた。そして銃床を肩に当てて架空の標的に向かって銃を構える。
「ふーん。シンプルねぇ。ドットサイトもレーザーポインタもないのね」
「まぁそんなのなくても当たるし……。重たくなるし………。改造してくれる人なんていなかったし」
「……そう」
何となく苛立ったような視線で僕を見る風見さん。うぅ。自慢みたいに聞こえちゃったかなぁ。僕的にはそんなアタッチメント、ないほうが使いやすいんだよね。
「やっほー! ハロー悠久機!」
そして、謎の挨拶と共に弓佳ちゃんが『ブリーフィングルーム』へと入ってきた。僕と風見さんが触っている物に興味を示したのか、目を輝かせながら近づいてくる。
「な、なにそれ。武器?」
「そうだよ」
「うわー。見せて見せて。なに? あ! 弾を込めてるの!? あたしもやりたい!」
「それはいいけど、結構固いよ?」
僕は空弾倉を弓佳ちゃんに渡しつつ、そう警告した。
当然だが、『弾倉』というのは銃の本体で薬莢が排出されると同時に発生する隙間に対して、弾を押し込む働きをするものだ。その際バネの力を使って押し込んでいく機構になっているので、必然的に弾込め作業は終盤に差し掛かるほどその抵抗が増える。
弓佳ちゃんが今弾を込めている弾倉は30発装填なので、25発目以降の弾込めはコツと力が必要になったりするのだ。
「ぐぎぎぎぎ。かたいよーー!!」
初めはサクサク装填していた弓佳ちゃんだったが、案の定今は必死な形相で弾を押し込んでいる。
両手で弾倉に弾を押し付ける弓佳ちゃん。うん。まぁ女の子には辛いと思う。
「貸して。僕がやるよ」
そう言いつつ僕は弾の先端部をマガジンに押し当て、一気に押し込んだ。そうやって次々と弾を込めていく。
まぁ実は弾込め用の装置もあって、女の子はそれを使ったりするんだけど、僕はこの手で入れたい。なぜなら、その方がカッコいいから。
「よし。おっけー」
と、言いつつ僕はマガジンを銃に差し込んだ。そして本体の後面についているコッキングレバーを引くとマガジンから一発目の弾が装填された。
「お、おーー!! よくわからないけど凄いね!」
久しぶりだ。この感覚。
僕はふーっ。と大きく深呼吸をしたのち、10m先にあるイスに向かって銃を構えた。
うん。やっぱり懐かしい。
「ちょ、ちょっとふぇありー。射撃するなら外でやりなさいよ外で」
「わかってるよ! 弓佳ちゃん、行く?」
「うん!」
そうして僕は射撃練習で勘を取り戻しに外へと出ていった。
ふぇありーの使用武器が出てきました。が、描写が間違ってる気しかしません笑。もし不自然な所があれば、教えて下さると幸いです。




