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巨大人型ロボットに物理法則を適用したら一体どうなるのだろうか  作者: 勇者王ああああ
悠久機試作16号機『皇帝(ツァーリ)』
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『皇帝(ツァーリ)』スタンバイO.K?

 再設計開始から数日が経過した。みるみる組上がってくる『皇帝ツァーリ』を見上げると、不思議と穏やかな気持ちになってくる。


 現在、風見さんの再設計図面は全てロールアウトし僕の製作、組み立てを待っている状況だ。


「風見さーん。452と495aの図面寸法間違ってるよー」


 が、もちろん再設計であるため部品間の寸法が合わない、何てのはよくある話だ。そして結局その都度微調整を行うので、風見さんの仕事は常に少しずつ発生する。


「はいはーい」


 そして疲れたような目でチラリと『皇帝ツァーリ』を見上げたあと、再び図面を書き上げる為に部屋へと帰っていく。


 今さらだけど、やっぱり設計って大変だなぁ。なんて頭の片隅で思いつつ僕は作業を進めていく。

 なるべく早く仕上げる事が、僕のためにも風見さんの為にもなるからね。


 それにしてもやはり、少し前と比べて製作スピードは圧倒的に今の方が早い。大きな壁を乗り越えた風見さんにとっては、寸法ミスなんてものは些細な失敗に過ぎないようで、あっという間に修正してしまう。


 何度も失敗を重ねたことが、この今のスピードに繋がっているのだろう。

 



ーーーーーーーー


 そして更に組み立てを進めること数日。



「ふぇありー。じゃあ最後のパーツを乗せるわよ」

「う、うん……!」


 そして、風見さんは『最終組立』、最後のボタンを押した。するとアームに釣られた『皇帝頭ツァーリヘッド』がゆっくりと移動して『皇帝』本体に装着される。

 ガコン、と金属同士が接触する音と共に、そのままアームが接着作業を行う。



 長かった。

 

 本当に大変だったけど、ついに『皇帝ツァーリ』が僕の目の前でその姿を完成させようとしている。


 そしてアームは『皇帝』の首もとでノソノソと動いた後、静かに音をたてずにそこから離れていく。

 『完成』というのは想像以上に静かなもので、物言わぬ『皇帝ツァーリ』はその体躯を漆黒の闇に輝かせながら僕たちを見下ろしていた。

 

 ……僕たちの目の前に組み上がった『皇帝』が堂々と、さらに強者の威厳を存分に放ちながら立っている。

 

 心が燃え上がるような感覚。これは久しく忘れていた『桜改』に搭乗した時と同等か、それ以上の高揚感。

 僕は胸のうちから何か熱いものが混み上がってくるのを感じながら、風見さんへと向き直った。


 彼女は僕と目が合うと顔いっぱいの笑顔を浮かべて嬉しそうに言った。


「で、出来たー!!! ついに出来たわよふぇありー!」

「やったー!」


 風見さんが手を高くかざし、僕の目を見つめてくる。こ、これは! ハイタッチか! 伝説の!

 僕は嬉しくなって、右手を高く掲げて風見さんとハイタッチをした。


「長かったわねーホントに。こんな大きいものが出来上がるなんて……」


 と、感慨深そうに『皇帝ツァーリ』を見上げる風見さん。その口調は嬉しいような寂しいような、そんな矛盾した雰囲気を含んでいた。


 『桜改』が以前格納されていた『格納庫』に、今は代わりに『皇帝ツァーリ』が幾多のアームに支えられてその巨体を固定されていた。


 全長は約18m。体重は約84トン。前作の『桜改』と比べると40トン近くの軽量化に成功している。『歩行』を今回の目的に設定しているとはいえ、この成果は戦車設計に明るい風見さんの力がとてつもなく大きい。

 骨格的に密度を計算すると、今の『皇帝ツァーリ』は大体人間と同じくらいの密度になる。だから多分簡単には水には沈まないだろう。巨大ロボットが水に沈まないなんて違和感が尋常ではないが、それでも他ロボットアニメではこのサイズで20トン以下の機体なんてザラに存在している。


 そう考えるとまだまだ改造の余地が『悠久機』にはあるのだ。


 『皇帝ツァーリ』の装甲の塗装は漆黒に塗られ、左肩には金箔で『皇帝』と楷書で書かれている。あれは重ねて言うけれど、東藤さんの趣味だ。

 『皇帝』は『桜改』に比べると遥かに下半身が大きい設計になっていて、どっしりとした雰囲気がある。

 と、いうのも『皇帝』は設地面積が圧倒的に大きいのだ。言い換えるのなら、足が大きく、転倒や歩行に強い。

 他にも変形機構の真髄が実は大きな下半身に隠されていたりする為、必然的に足回りが大きいのだ。


「いやー。やっぱり『風見砲』が良い味出しているわねー」

「う……うん。そうだね」


 『皇帝ツァーリ』は頭の左側には無駄に大きなアンテナが空へ向かって伸びており、その反対側には戦車砲、通称『風見砲』が備え付けられていた。


 あの実験結果で何故乗せたのかと聞かれるとぐうの音も出ないのだけど、あれは風見さんのこだわりらしい。

 ……まぁロマンだなんだと風見さんを僕たちは縛り付けたんだ。このくらいの我が儘は聞き入れて当然だろう。

 文句があるとしたらその超安直なネーミングセンスくらいだ。なんだよ『風見砲』って。そのままじゃん。

 ちなみに『風見砲』は発射出来る。風見さん曰く、頭部に自動装填装置を備え付ける計画もあったそうだけど、そもそも1発撃ったら壊れるためにその計画は断念したそうだ。

 それゆえの発想の転換。1発で壊れるのなら、上手く壊れるようにしたら良いじゃない! と風見さんの素敵ワールド炸裂。

 お陰で主砲を撃つとそのまま主砲がぶっ壊れるけれど、『皇帝』本体に大きな影響は与えない。


 1発限りのロマン兵器。うん。なんだか良い響き。そういう兵器に御約束の『1発きりだけど超強い』、みたいなテンプレは通用しないけれど、『響き』はいいね。


「唯一の心残りはやっぱり『風見砲』ねぇ。せめて5発は撃ちたかったわ」

「でも『桜改』は0発だからね。それは大きな違いだよ」


 そう。0と1では大きな違いだ。もし、万が一、『風見砲』が敵に当たるとすると、『皇帝』は戦果を得るのだ。それ以上に嬉しいことなんてない。


「よーし! 私の仕事はここで終わりね! 帰ってベッドで寝ますかねー」

 

 満足そうにぐーっ、と伸びをする風見さん。そしてお気に入りの黄色ヘルメットを外しながら、僕へと向かって小さな笑みを向ける。


「じゃ、ふぇありー! 私、『スモールカップ』まで休みでもいい? あ、審査通ったかどうかだけは教えてねー」

「え……う、うん……」

「あらー? 何寂しそうな顔してるの? 私にそばにいてほしいの?」


 と、風見さんは張り付くような笑顔を浮かべて僕を見上げてくる。


「え、いや、その……うん。そうだよ。寂しいからいてほしいよ」

「え? そ、そう……? あ、ありがとね……」


 僕がそう言うと、恥ずかしそうに顔を赤らめる風見さん。もちろん僕だって恥ずかしい。

 おい。どうするんだこの空気。何とも言えない甘ったるい雰囲気が僕たち二人を包み込んでいるような気がする。こう言うときにどんな言葉をかけたらいいのか全くわからない。


「ふーたーりーとーもー!!!」

「「えっ?」」


 と、何となく甘いを通り越して雰囲気が気まずいに成り変わろうとしていた瞬間、弓佳ちゃんが突然僕と風見さんの首根っこを掴んできた。


「何完成の余韻に浸ってるのさ! 『制御こっち』は今修羅場だよ修羅場!」


 

 

 



 

 


 










 









遅くなって申し訳ありません。怪我で入院してしまいました……。

これも日頃の行いが悪いせいでしょうね。

実は人生初の入院で、絶対安静かつ絶飲食で辛くて泣きそうですが、頑張って治します。

重ねて遅くなってすいません。なるべく早く完治させます!!

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