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巨大人型ロボットに物理法則を適用したら一体どうなるのだろうか  作者: 勇者王ああああ
悠久機試作16号機『皇帝(ツァーリ)』
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その争いの先に

 風見さんが僕に嫌気が指して『悠久機プロジェクト』から離れた次の日。『皇帝ツァーリ』製作作業は一向に進まない中、僕達は今後の展開について話し合っていた。


「その……やっぱり、謝りに行かないといけないと思う」

「いえ、その必要はありません。私が何とかします」

「……でも」


 風見さんが離脱した後、東藤さんが『皇帝ツァーリ』製作の現状を解析すると大きな壁にぶつかっていることが判明した。

 

 足首回りの負荷がどう頑張っても許容範囲を越えるのだ。


 別の場所に負荷を移そうとしても、何をどう変えても今より悪い設計になってしまうらしく、ある意味この設計は完成を迎えてしまっていた。

 この状況は東藤さん曰く『詰み』だそうで、根本的に設計を見直すか、そもそものコンセプトを変えなければならないほどの状況だそうだ。


 だからこそ彼女はプライドを殺してまで悠久機を小さくしよう、と言ったのだろう。

 そんな厳しい状況なのに、楽観的な僕が横にいたら風見さんは大層腹が立ったに違いない。


 また僕は失敗してしまったのだ。


 こんな間違いは二度と犯さないって心に決めたはずなのに。なんで僕はまた失敗してしまうんだろう。

 少し考えればわかることなのに。


 さらに言うなら、僕はこの規格にこだわる理由も風見さんに明かさなかった。

 そんなの。彼女が怒るのも当然じゃないか。


 そして、そんな僕の様子を見た東藤さんは僕を慰めるかのように口を開く。


「大丈夫ですよふぇありーさん。私が何とかしますって! えっと……何せ学年一位ですから!」


 東藤さんは僕の目の前で拳を固め、決意を露にした。その僕を気遣う優しさには頭が下がるばかりだけど、これに甘えていてはいけないことはわかっているんだ。


 そして少し渋い顔をしていた弓佳ちゃんが真っ直ぐに僕を見つめ、少しの笑顔を見せた。


「……うーん。ふぇありー。やっぱり風子ちゃんに謝りに行った方がいいんじゃない? あの子も『悠久機プロジェクト』の一員だよ?」

「うん。僕もそのつもり」

「だからそんなのしなくても大丈夫ですって言ってるのに……。設計を途中で投げ出すような人なんですよ」

「東藤さん。もし僕が全力で謝りに行って、それでも許して貰えなかったら、その時は東藤さんにお願いするよ」


 どうやら東藤さんは風見さんが途中で投げ出したことが気に食わないようで、先程から僕が謝りに行くことを渋っている。

 

 だけど『皇帝ツァーリ』は僕と風見さんの苦労の結晶だ。

 もちろんまだ完成はしていないけれど、それでもやっぱり愛着は沸くし、最後まで設計をして僕は悠久機試作16号『皇帝ツァーリ』に乗りたいんだ。


「……ふぇありー。風子ちゃんに『悠久機』の大きさの理由、言うの?」

 

 そして僕が決意を固めていると、弓佳ちゃんがおずおずと僕に聞いてきた。

 

 できれば言いたくない。嫌われてしまうかも知れない。引かれてしまうかもしれない。そんな負の精神がまるで目に見えない病のように僕を蝕んでいく。


 だけど、ここで勇気を出さないと僕はいつまでたっても『閃光の妖精ふぇありー・フラッシュ』を抜け出す事は出来ないんだ。


 それでも。やっぱり怖い。これは理屈じゃないんだ。僕のトラウマをそのまま抉るようなものだから。

 

「……言いたくない」

「言わないの? でも言わないと風子ちゃんは納得しないんじゃないの?」

「……うんわかってる。でも、それでも……やっぱり………その」


 言わなきゃいけない事はわかっているはずなのに、僕は風見さんを信じきれないままでいた。この行為自体が風見さんを怒らせている原因だってことは薄々感じているのに、行動に移せない。

 そしてそんな僕を見た弓佳ちゃんは、呆れたように口を開く。


「風子ちゃんはふぇありーの『友達』なんでしょ? 貴方があの子を信じてあげない限り、風子ちゃんが帰ってくることはないよ」

「わかってるよ! それでも……それでも言いたくないんだよ……。これは理屈じゃないんだ……」


 僕が消え入りそうな声でそう言い切ると、弓佳ちゃんは悲しそうな笑顔を見せた。自分でも自分が嫌になる。何で僕はこんなにおびえているんだろう。情けない。かっこ悪い。

 

 こんなはずじゃなかったのに。僕にとっての『英雄』である『悠久機』を作ると決めた時にこんな自分は捨て去ると決めたはずなのに。



「そう、だね。わかった。……じゃああたしが風子ちゃんを呼び出してあげる!」

「いいの?」

「うん任せて! 私、そういうことは得意だから! ふぇありーは明日放課後、体育館裏に行ってね!」

「助かるよ。ありがとう」


 と、ニカリと綺麗な歯を出して少し悲しそうに笑う弓佳ちゃんは、僕にとってとっても頼もしく見えた。

 


ーーーーーーーー

 

 そして次の日。僕は授業の内容なんてほとんど頭に入らないような悶々とした一日を過ごしていた。先生の話はまるで呪文のように僕の耳を通りすぎ、クラスメイトの談笑は僕の心を逆なでする。


 風見さんに何て言おう。まずは謝るべき? どうしたらいいんだ? わからない。知らないよ。


 そもそもあの人は僕が理由を言わずに謝った所で許してくれるのだろうか? あの人はいつまでたっても理由を言わない僕に嫌気が指したっていうのに。


 先生が目の前の電子黒板に長々と数式を書いているが、ノートをとる気にもならない。

 僕は上の空でボンヤリと窓から見える綺麗な青空を見つめていた。


 はぁこんなときに相談出来る人がクラスにいれば良かったんだけど。まぁ無い物ねだりをしても仕方がないのはわかっているんだけど。


 BWでは、僕は如何なる不測事態にも冷静に対処できたんだ。なのになんで今はこんなに心がざわついて落ち着かないんだろう。


 そして結局考えのまとまらないまま、その日の授業が終了、そしてあっという間に放課後になってしまったのだった。






 


かっこいい、叫びがいのある兵器って良いですよね。

一番好きなのは『GNシザービットォォ!』です。『行けよぉ、ファング!』とかも好きです。


『いっけぇ! SAKURAソードォ!』


 あれ……意外とアリ?

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