第九節~そして俺は彼女に売られた~
日本に帰国してドタバタしていて更新できませんでした。すみません、お詫びに更新頻度を上げていきます。詳細は『活動報告』のほうで確認して下さい。
あらすじ
自殺したと思ったら転生したけど、転生した先はカルト教団の闇サバト会場で何やかやで逮捕されて拷問された。
そのあとで俺があったのは初恋の人だった。そして初恋の人に議論をふっかけられた。そしたら、なんか気に入られた。結果奴隷にされることが決まって、妙にエロい奴隷商人から男娼としてられることになった。
第九節~そして俺は彼女に売られた~
七番目、若葉の月、第二週、第翠曜日
先程から部屋が騒がしい。奥の区画にいた家畜たちが綺麗に洗われて部屋から出されていく。すこししてサレが来た。何人かの男たちを従えている。男たちは手に木製の大きめの桶をもっている。見ているとそれぞれの囚人の前に桶をおき、どこからか水を組んできて貯める。俺の前でも男のうちの一人が同様に桶を置き、水を貯める。水が貯まると、男は俺の衣服を剥ぎとって俺に水の中に入れという。目の前でサレがネバネバした視線で俺を見ている。
もう、反発する気力もなくなっていたので水に入る。水は背筋がゾワゾワするほどに冷たかった。どうしてここの水はどこもかしこもこんなに冷たいのだろうか。俺が入ると男が布で俺の体をゴシゴシ洗い始めた。よく考えれば六日ぶりの風呂だ。ああ、温かい日本の風呂が恋しい。
ひと通り洗い終えると、服を着せることもなく俺の手錠を棒に引っ掛けて俺や他の囚人たちも移動させられる。入ってきたとき同様の廊下を使って街に出る。俺は全裸だ。なれない感覚、恥ずかしさ、とはいえどうしようもない。
おとなしく他の囚人たち同様に連れられていく。そんな俺達に街を行く人達は一瞥もくれない。それどころか、どこかで軽快な音楽が奏でられ、人々の笑い声が雑踏の中でさんざめく。それを聞いていると、なんとなく惨めな心持ちになっていくのだ。ちょうど、クリスマスの街で時に感じるような疎外感、恥辱。隣の幸福とこちらの不幸、不幸な立場から幸福は憧れられるが、幸福な立場から不幸は見えないのだ。俺はそのことを身をもって知ってきた。
街の広場の端のテントの中に入れられる。どうやら、そこではオークションが行われているようだ。ちょうど今は仔馬がかけられている。名馬と名馬の間に生まれた血統種らしいその仔馬に会場は興奮して沢山の人が指を振り立てていた。
仔牛が終わると司会が声を張り上げる。
「これにて家畜の競売をおわります。」
聞くが早いか、かなりの人が荷物をまとめ始める。
「えー続きましてはアドホミネム商会による奴隷の競売に移ります。サレさん今日も宜しくお願いします。」
でて言う人達と入れ替わりに俺達虜囚は繋がれてステージにあげられる。
「こちらこそ、よろしくおねがいしますわ」
サレがベタつかない営業スマイルで会釈する。どうやらおれは後回しらしい。最初に俺以外の中年男性っぽい虜囚たちが競売にかけられて売られていった。それぞれ二十四アウルムと二十五アウルムと呼ばれて連れて行かれたが、俺にはそれがどれくらいの価値なのかいまいちピンとこない。
最後に残った俺をサレが立たせる。全裸で猿ぐつわをかまされている惨めな俺をステージの中央に引っ張っていき、商売口上を興奮した口調でまくし立てる。
「みなさま、いよいよ、アドホネミム商会今日の最後の商品になりましたわ。こちらの青年は軍からの依頼品でして、出所不明でございます。しかし、しかし問題ございません、此方に御座いますのは軍の保証書。万一この奴隷が不祥事を起こしたとしても、この保証書が管理責任を軽減してくれますわ。
さてさて、見ての通り、華奢な体つきは重労働には向かないかもしれません。しかしながら、この白い肌をご覧ください。顔つきも悪くはございませんわ。種なしに見えますか?いえいえ、もちろんきちんと種もはいっていますし、十分役割を果たせます。男娼として商売させるもよし、個人的に使うもよし、種なしの主人の代わりに使うもよしですわ。さぁさぁ、じっくりご覧ください、絹のような柔肌、繊細そうな顔立ち。どう使うもあなた次第、ご自由に仕込めますわ」
その言葉を聞いた瞬間会場の空気が変わるのを感じた。なんとなくヌメヌメした視線が俺の体を這いまわる。背筋に悪寒が走り、鳥肌が立つ。
「では、青年の入札に入ります。なお、この商品は二十五アウルムが底値に設定されておりますので、そこから始めます。でわでわ、積極的に入札お願いします。」
司会の男がそう言うやいなや、どこからともなく「二十六」という掛け声がかかる。間髪入れずに「二十七」「二十八」と続く、俺は半ば他人ごとのような心持ちで声と振り回される拳や指を見ていた。
「三十」と誰かが言う。一瞬の沈黙
「さぁ、さぁ三十アウルム出ました、他にいらっしゃいませんか?」
「三十五」と勢い良く叫ぶ声がした。ふと目をあげると、プブリカといったか、俺の幼なじみにそっくりの少女の隣に立っていた長身の女性が声を張り上げていた。どうやら他にせっている人がいるらしく即座に「三十七」と声がする。長身の女性は勢い込んだ面持ちで「40」と声を張り上げる。
その瞬間、開場がどよめいた。それほどの金額なのだろう。
「40出ました、今日の競売最高値です。これを覆す剛毅なお客様いらっしゃいますか?いらっしゃいますか?」
司会が声を張り上げ、数分まつ。
「いらっしゃらない。ではそこの方四十アウルムで落札です。書類手続きなどはテントの後ろで行います。
今日の月例競売はこれにて終了となります。今月最高値を出品したセレ御婦人に盛大な拍手を!参加してくださったお客様、出品者の方々には多大な感謝を!来月また会えることを切に願います!」
すぐに俺は引きずられるようにしてテントの裏手に連れて行かれる。そこでは俺を落札した長身の女性が何やら書類を書いていた。
「はい、たしかに四十アウルムございます。はい、はい、書類も確かに。では、こちらの方に商品がございます」
そう言って俺と引き合わせる。
前見たとき、初恋の人と同じ顔にあまりに気を取られすぎていて気付かなかったが、長身の女性も十分魅力的だ。精悍な顔立ちに見合った長身体躯、体は引き締まっている一方でふくよかな胸が女性らしさも同時に醸し出している。濡れ烏とでも形容したくなるような長い黒髪は高めの位置でまとめられ、腰の剣の男らしさと美しい不協和音を奏でている。俺の幼なじみ、プブリカがどちらかといえばまだ幼さを残していて未完全な部分があるのに対して、目の前のこの女性は凛としてそこにあるだけで美しいと感じるのだ。
見とれていると、首筋に冷たいもの当てられる感覚にハッとする。よくわからない内に丸い金属製の鎖を巻かれ、前のところで南京錠で止められる。まるで出来の悪いチョーカーだ。
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一日目:狐耳幼女と怪しげな儀式、逮捕、拷問
二日目:プブリカとの出会い
三日目:売られる
六日目;競売
回想開始
六日後
嵐の演説