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彼女と俺のエレクション  作者: KAMI
第一章~国家~
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第七節~奴隷商人~

自殺したと思ったら転生したけど、転生した先はカルト教団の闇サバト会場で何やかやで逮捕されて拷問された。

 そのあとで俺があったのは初恋の人だった。そして初恋の人に議論をふっかけられた。そしたら、なんか気に入られた

2015/5/21 Ichikawa Chiba

 第七節~奴隷商人~


 五日後、


 七番目、若葉の月、第二週、第紫曜日


 ここまで俺に起こったことを延々と語って聞かせて、いい加減舌がだるくなってきた。水筒をプブリカに要求する。何やら臭いのきついお茶のようなものがはいっていた。ほとんど正直に思ったこと、見聞きしたことを語ってきた。唯一つ、プブリカが俺の恋した人と同じ容姿だということを除いて。そのことを言ったら、どういう風に反応するかわからないし、気を悪くするかもしれない、それが俺はたまらなく怖いのだ。


「ところで、あの時俺はどう答えればよかったんだ?」


 プブリカに初対面でいきなり投げつけられた無茶な問の答えを要求する。


「んー、筋が通っていれば割と何でも良かったんですがねぇ。言ったまんまですよ。『それが正義であるなら私はあなたを助けましょう』といいました。正義なんてのは案外あちらこちらに転がっているものですし、戴国の論理を振りかざさずに論理的に意見を述べていればだいたい正義でしたよ」

 思った以上に適当な答だった。深く考え込んだ俺がバカみたいだ。


「いいのかよそんなので。大統領選挙に立候補してる奴の言葉とは思えないぞ」


「いいんですよ。少なくとも多様な正義を許せる程度の余裕がある考え方なら、価値観が違っても受け入れられますから」


 そこで一息入れてポツリと言う


「まぁ、その後アキラのことが欲しくなって無理な説得を試みなかったかもしれませんがねぇ」


 それは一体どういう意味なのか。プブリカのことをまだよく知らない俺には読めなかったが、そんな思考回路はウィクタの大きな声によって遮られてしまった。


「やはり、無理な説得だと思っていたのか?まったく、これでコイツが本当に間諜だったら一体どうやって責任をとるんだ。私だってとりなしたわけだから祖国に対する裏切りとみなされるかもしれないんだぞ」


「まぁ、そんなことないですって」


 落ち着いてプブリカが言う。


「そんなことよりも、あの後の話をお願いします。だいたいは想像つくんですが、やはり知識として知っていることも人の目を通して語られると印象は全然変わりますからね」


 そして俺は臭い飲み物を口に含みつつ再び話始めた。俺の可愛いご主人様に気に入られるために。



 五日前に戻る。俺がプブリカと最初に合った日、

 七番目、若葉の月、第一週、第朱曜日


 プブリカ達が出て行った後、俺は看守と二人の兵士とともに部屋にいた。プブリカがいなくなったことを確認すると、看守は振り向きざまに俺を殴ってきた。それでも、なんとなく状況がわかったことで、彼の行動は理解できた。おそらく、俺の処遇が変わったことが気に食わなかったのだろう。すぐに部屋にいた兵士たちが止めに入る。

 結局俺はその部屋から連れだされた。再び何十分も歩いて昨日寝た部屋と同じと思われる所に押し込まれる。相変わらず顔は痛く、更に殴られてじんじんしている。腹が焦げるような空腹を感じ、喉はかすれたように乾いている。とにかく意識すればするほどそれらは辛く、耐え難く、ますます不快になっていく。


 思考を整理する。どうやらここは日本ではないらしい。そして俺はスパイとして逮捕され、拷問されていた。ところがなぜか高校の同級生にそっくりの人にあって議論したらなんだか、ゆるされたようだ?結局のところ俺はこの不条理な地下深くわけも分からず監禁されているしかないのだ。


 しばらくして、うとうとしている自分にはっとした。よく考えれば、昨晩は寒くてろくに寝られていない。相変わらず、汚れて黒ずんだ毛布をかぶって硬くて冷たい石の寝台に横になる。地べたに横になって土を背中につけるよりかは少しマシという程度だ。気温は少しましになったとしても、部屋を照らすのは揺らめく微かな青ざめた炎だけ。


 強く肩を揺すぶられる。何事かと思って目を覚ます。そしてやはりいつもの自分の部屋でないことに悲しく気がつく。まったく、あの部屋が恋しくなる日が来るなんて思ってもいなかった。大きな兵士が俺の肩を揺さぶっていた。石の寝台で寝たために背中が痛い。このままいくと全身くまなく痛くなるまでそんなに時間かからなくなりそうだ。


 俺の手錠を長い木の棒で引っ掛けられ、牢を出される。再びひたすら歩かされる。どうやら昨日とは違う通路らしい。昨日と違い若干の余裕からか周囲を見渡せる。昨日からいるこの空間は幅一メートル半ほどのゆるい階段を上ったり、下ったりしている。右手には扉や扉のない部屋が無数にあり、その部屋の大きさも千差万別のようだ。等間隔な床の上にはガラスケースに入れられたアルコールランプのようなものが置かれ、かすかに足元を照らしている。悲しく輝く青い炎はここの雰囲気にとても合っている。


 再び時間の感覚が麻痺する程度に無言で歩かされる。退屈で鬱々とした道のり、暗暗としてひたすら上に続く廊下。上りの階段の先端に扉が見えた。簡単な検問のようなところで、俺を連れてきた兵士がなにやら書類を提出してすぐに扉は開けられた。


 そこは職員室のような空間。大きな部屋にたくさんの机が置かれ、大人たちがしゃべり、物を書き、議論している。違うことといえば、やはり彼らも軍人なのか統一された服装をしていることだ。そのまま真っすぐ突っ切って行く。


 大きめの扉を抜ける。燦々と輝く太陽。思わず手で光を遮ろうとして手錠に繋がれていることに気がつく。そこは外だった。大きな三角の屋根の建物がところ狭しと立っている。なんとなく合掌造りの集落の絵葉書を思い出させる。迷うことなく、俺を引率する兵士は進み、やがてひとつのひときわ大きな建物に入る。内部はかなり細かく区切られているのか廊下があり、その両脇に扉がある。どうやら店や事務所が入っているようだ。4つ目の扉に入る。


 中にいたのはきつそうな金髪の狐耳の女性だった。妙に体の線の出る紫のピチっとしたドレスのような服を着ており、豊満な胸元が強調されている。昨日の看守と同様になぜかぴんと立った灰色の狐耳が頭のてっぺんに生えている。兵士が入ると立ち上がって手を差し出す。


「ようこそ、アドホミネム商会へ。今日は何人入り用でしょうか?」


「違う。違う。今日は買いに来たのではない。売りに来たのだ」


 手を握りながら俺を連れてきた兵士が答える。

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 一日目:狐耳幼女と怪しげな儀式、逮捕、拷問

 二日目:プブリカとの出会い

 三日目:売られる

 四日後

 回想開始

 六日後

 嵐の演説


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