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彼女と俺のエレクション  作者: KAMI
第一章~国家~
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プロローグ~終わり~+第一章:~国家~ 第一節~そして俺は彼女の奴隷になった~

 はじめましてKAMIともうします。これから少しの間宜しくお願いします。小説は3日事の更新、活動報告は毎週日曜日更新です。細かいことは最初の活動報告で書きます。


 2015/05/03 ロンドン、ストレトハムのカフェNEROから更新

 プロローグ~終わり~


 それは十二月のある昼下がりの事。


 空はどんよりと曇り、今にも今年最初の雪が降りそうだった。空気は冷えきって街は灰色、気持ちは重く俺にのしかかり、どうしようもなく俺を急かす。


 目の前には白い輪っかがぶら下がっている。今しがた俺が作ったものだ。俺の頭より少し高めの位置、ちょうど椅子に立てば頭と同じくらいの高さに成るだろう。


 買ってからそれほど立っていない電源コードはなぜか色あせて見えた、買ったときはその鮮やかな白さに魅せられて買ったというのに。


 そうはいっても所詮は主観的認識、きっと俺の心境が変わったからあの白く輝いていたコードも灰色に変わるのだろう。なんて気が重い…。


 はぁっと深い溜息をついて立ち上がる。どうにも息苦しくて仕方ないのだ。きっとそれも感情の、心の問題なのだろうけれども、自分の部屋で窓をあける自由くらいはあるのだから窓を開けよう。


 椅子から立ち上がって重い足取りで数歩先の窓に向かう。窓に反射してうつった俺の瞳はやはり灰色く濁っている。頭を振って見なかったことにしつつ窓をあける。相変わらず見慣れた灰色の街を見渡す。いつもと変りないやはり灰色なこの街は今日はますます味気ない色に思えた。それは曇天を反映してか、それを見る俺の心の問題なのか。まぁ、問うまでもないことだろう。


 窓をあけると外の冷気が一陣の風とともに入って来る、それは案の定とても寒い。でも、心なしか空気は新鮮さで俺の肺を満たしてくれた気がした。ああ、悪くない。そう先程よりも少しポジティブな溜息をついて、それでもなお足取り重く椅子に戻る。


 部屋の中央に置かれた椅子の前には白い(灰色い)コード(輪)がぶら下がっている。先ほど俺が作ったのだ。死ぬために。


 少しだけ明るい灰色の新鮮な空気が部屋を満たしてくれる。ああ、心地いい。最後の時ぐらいマシな空気を吸って逝けるわけだ。椅子の横にスリッパを丁寧に揃える。遺書は書かない。


 どうせ書いても書かなくても同じだ。書かなくても俺の考えることなど完全に把握されているか、あるいは書いたとしても理解されないかのどちらかなのだ。それならば、せめて書いてなお理解されないなんて無様さを晒すよりも理解されぬまま無言で逝くほうがまだマシなのだ。こういう時に語る言葉があるほど俺の人生は豊かではなかった、つまりそういうことを言いたいんだ。さぁ、これで敗北続きのチキンレースは幕を閉じ、俺の物語は終わるのだ。


 何を言うこともなく、俺は輪の中に頭を差し込んだ。首筋に触れる白い電気ケーブルは思っていたほど冷たくはなかった。まぁ、暖かくもなかったけれど、すくなくともちょうどいい時期だったのだと思う。きっともう少し早い時期に同じ事をしていたらこのケーブルは冷たく感じられたかもしれないし、あともう少し後、例えば1月後に同じ事をしたとすれば暖かく感じたかもしれない。冷たさも暖かさもいらない。その両方から逃れたいから俺は今こうするんだ。


 今見る景色が俺の物語の最後の景色となる。見慣れた部屋、見慣れた参考書、見慣れた机、窓の外にはいつもの灰色の街が広がる。そして俺は椅子を蹴った。即座に電源コードが首に絞まる。息が絞まる。懸命に顔が上を向き、口が酸素を求めてパクパクする。喉が空気を吸い込もうと音にならない音を立てようとする。涙で霞む視界。頭のてっぺんがかすかに熱くなり。動悸が激しくなる。喉の奥に詰まったように感じ微かに唇が濡れるのを感じる。血なのかよだれなのかは知らない。


 確かに辛い。それでも今まで積み重ねた無意味な生の積み重ねと比べればまだマシにさえ思える。そう、どこか他人ごとで俺は考えていた。もちろん痛みを感じながらもどこか冷えきった頭のなかでとりとめのないことを。


 聞くところによれば絞殺死体はずいぶんと汚らしいらしい。汚物が全身から排出され、血は下半身にたまり顔は血の気を失う一方下半身はむくんだようにみえるそうだ。ああ、たしかに俺にふさわしい。俺の死の現場をあいつが、親父が見るならば完璧だ。せっかくなら自然に排泄物が出るまでもない、この場で脱糞してやろう。とかそんなことを考えていると意識が薄まって来るのを感じた。一体何秒ぐらいの事だったのだろうか。むしろ脱糞できただろうか。


 それが、俺ことクロイ アキラの最期だった。


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 一章~国家~ 第一節~そして俺は彼女の奴隷になった~


 付記この物語は新暦7番目、若葉の月の第一週から第四週の間の物語であり中央海諸国同盟標準暦における曜日は次のような順番であり、必要に応じて参照すると時系列をつかみやすい。(参照しなくても大丈夫なように書いていますが、念の為に)


 第蒼曜日:第紺曜日:第翠曜日:第紫曜日:第橙曜日:第朱曜日:第白曜日


 七番目、若葉の月、第三週、第紺曜日


 少女の力強い言葉が群衆に雨と降る。それはさながら嵐だった。


「国家とは人間の意志、によって築かれた、人工の共同体。故に我らは我らの意志で進む。そのためのデモクラティア(民主制)なのです。だからこそ、私はいかに非力といえど全ての国民を尊重するのです。教育と国民軍、福祉と革新はかような各人の歩みのためなのです。


 支える足の少なき国家はいずれ朽ち果ててしまう。だが、全ての市民が全ての同胞のために権利をわかちあう国家は歴史に不朽のその名を刻みこむでしょう。」


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 六日前に遡る


 七番目、若葉の月、第二週、第紫曜日


「どうですか、貴方は今日から私の奴隷ですね。アキラ。期待していますよ。」そう少女、プブリカ=ポプリ、は言ってはにかんだように笑った。


 俺はこの笑顔に弱いのだと改めて気付かされ、こうして笑われると、奴隷だろうがなんだろうが、のぞむところだとすら思えてくる。


「さて、私達は次の街へ進まねばなりません。2~3日は馬車の旅です。貴方の言う、ニホンという国のこと、これまでのこといろいろ聞かせてください。」


 馬車は木で作られたもので4人乗りのようだ。それを引いているのは馬ではなく、トナカイのように天を指し示す角を持つ生物だ。パッと見た感じは馬車というより、サンタクロースのそりのようにも見える。


 俺とプブリカと名乗った少女、そして彼女の友人で俺を落札した豊満な女性、確かウィクタといったか。3人は馬車に乗る、俺の向かいに女性二人が座る感じだ。俺達が乗り込むと馬車はガタゴトと上下に揺れながら動き始める。前後には馬に乗った男たちや荷物を載せた馬車がもう一台ついてくるようだ。


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 タイムライン

 主人公自殺転生

 六日後;

 回想開始

 六日後

 嵐の演説


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